短編小説 盆帰りとまんじゅう | 妄想小説日記 わしの作文

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わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

お盆になると死者が帰ってくるという
そのために迎え火や送り火を炊くのである。
ただ昔からの習慣は今の日本では失われつつある
お盆に里帰りをしない、墓参りをしない。
それが現代人だといえば仕方ないのかもしれない
だがそれでは寂し過ぎるのではないだろうか。

お盆シーズンにはテレビ放送もお盆に関連する
ものを多く放映しているがテレビを見て自分を反省
する人々はどれほどいるだろうか?
ここに登場する真理子も実家に帰省したものの
墓参りどころか仏壇に線香をあげることもしない
どうしようもない毒女28歳。

テレビでお盆に送り火をするかという街角アンケート
を夕方のニュース番組でやっていた。
コメンターはやらない若者を非難している。
まさに真理子と同様の若者がだめだしされていたの
だが現代の若者の兆候だろうかテレビと自分の生きてる
現実が別次元と考えているのか、テレビを見て
反省するようなことはない。

実家に帰省して居間でゴロゴロ、部屋でベッドに転がり
テレビを見るそれがお盆での真理子の毎日。
転がりながらテレビを見てるといつのまにか寝てしまう
部屋の電気もテレビもつけっぱなしで熟睡する真理子
母親から何度注意されても習慣は変わらない。

だが今はお盆、ご先祖様が眠る実家にいるのだ。
死者の魂、信じる、信じないは個人の勝手であるが
死んだご先祖様も同様の気持ちとは限らない。
誰だって無視されたら面白いものではないのである。

電気をつけっぱなしの部屋、深夜0時を過ぎたくらいか
真理子は何者かの強い視線を感じ目が覚めた。
マンションなどの一室とは違い照明がついていても
天井には暗い部分がある、それが旧家。

太い柱はむき出しになり電線は現代のコードと違い
布で覆われた昔の配線。天井といっても現代風の
フラットな板ではない。
屋根の内側にそのまま板を打ち付けたような構造なのだ
その暗い天井部分にぼんやりした発光体がみえた。
眠い目をこすりながらよく目を凝らして見ると
人の顔のように見えた。厳しい目つきで怒った表情の
老父母らしき顔ふたつ。

真理子にはその顔に覚えがあった、仏壇に飾られた
写真の顔そのものだったからだ。

「ひぃーーー、ナンマイダナンマイダ!」
青白く光った老父母の幽霊に恐れおののく真理子。

先日見たドラマでは過酷な状況で耐えるヒロイン
そんなヒロインを助けるために他界した祖父は助けに
現れ、ヒロインは笑顔を取り戻すことができた。
だが、現実はそんなに甘くなかった。

「やっぱりドラマとは違う、孫なのに・・・・」

しかし、真理子が再び恐怖をこらえ祖父母を見ると
祖父は突然泣き出していた、それも大泣きしていた

「わしの、、、、まんじゅうぅう」

「え?まんじゅう?」
真理子にはそれが一体なんのことかわからなかった。
怖い顔をしていたからてっきり怒られるのかと思えば
突然に泣き出した祖父に驚いた真理子。

不思議そうな顔をしている孫に言葉を伝えようと祖母は
迫ってきた、当人に脅かすつもりはなくただ話をする為
けれど生身の人間である真理子には恐怖しかない。
祖父母は顔を近づけると顔は一変し表情は穏やかで
笑顔となった。

「マリちゃん、仏壇のまんじゅう食べたでしょ?」
「あのまんじゅうは、おじぃさんにとって特別だったんだよ」
「20年待ち続けてやっと食べれると思っていたのに」
「食べようと手を伸ばしたら先にマリちゃんが取って
しまったってそりゃぁもう泣いて泣いて」

真理子は知らなかった。
送り火した後には先祖様が家へ帰ってくることを
仏壇に供える供物はご先祖が帰ってきて食べてもらう
ために置いてあるということを。

「わかったっておじぃちゃん、明日買ってきてあげるから」
真理子にそう言われ祖父の涙は止まった。
それから祖父ははじめて口を開いた、それが

「虎屋万年堂の葬式まんじゅうじゃなきゃ嫌だ
 あそこの黒餡は無添加、無着色で天然食品しか
 使っておらん。あの甘さ控え目で尚且つコクがある
 こしあんは絶品じゃからのう」

「はいはい、、わかりました・」

こうして真理子はまたひとつお利口さんになったのである。

この物語はフィクションです