幸子と秀一郎、婚約はしたがいろんな事が起こり結婚式は
伸びに延びた。確かに結婚どころではなかっただろう
だが強い信念が二人にあれば着実に進んでいた。
結婚に対する二人の不安要素がまだ解決されておらず
二人は今ひとつ結婚を挙げるのを躊躇っていたのである。
どちらかの両親と同居する事になるが、では残った両親
老後をどう面倒見ればいいというのか?
見合いのはじまりは”介護のため”であったから。
であるのだが業を煮やした両親達は式を当事者には
了承を得ず決めてしまったので今更あとには引けない
秀一郎と幸子の二人である。
手回しのいいことに招待状を既に送付は完了していた
それだけには終わらずハネムーンの渡航および宿泊先
さえ予約を入れていたのだから驚きである。
さてここは東京六本木にある今風の洒落た喫茶店。
テレビで放送されたせいか若い女性が賑わう店内
まるでローマを思わせるような石を使った壁とテーブル
阿部寛も思わず唸ったと言われている店内に流れる滝。
異国情緒鮮やかな店内なのだ。
そんな店内の片隅にはおしゃれとは無縁な一人のおっさん
そして向かいの席にはファッションには無知だと思われる
ラフな格好した女性が来ていた。
秀一郎と幸子の二人である。
二人ともこのような店は好みではなくどちらかといえば
吉野家のほうがリラックスできるし財布にも優しい。
出来れば来たくなかったのであるが・・・・・・
店のオーナーから招待され来ないわけにはいかなかった
それというのも店内のインテリアデザインを設計したのは
幸子当人であった。
普段ならば居心地が悪い店ということで他人の視線を
気にするところだが今はそれどころではない。
勝手に決められた結婚式をどうするか相談しなければ
ならない。
「シュウさん、結婚式どうしようか?嫌だったらキャンセル
してもいいのよ」
「1週間後だぞ今更キャンセルできないだろう~」
「それはそうなんだけど・・・」
天然な男勝りの幸子にも人並みに結婚式に対する夢
二人で相談しながら時には言い争い、時には笑って
ひとつの目標に向かって二人で手をとり進む
店の中で引き出物をどれにしようか物色し悩み
新居に置く家具を選ぶために家具店に足を運び
ブライダルサロンにて来客数や料理、進行をどうするか
スタッフの方々と好きな相手と共に打ち合わせをする。
招待状のデザインを決めたり特徴ある文章を試行錯誤
で決めていく。
それらのすべてが両親によって泡と消えてしまった。
幸子の不満に思う気持ちは当然なのだ。
おもむろに表情に不愉快を出している幸子
秀一郎も勝手に決められ面白くはない、けれど
今の収入では秀一郎自身には拒否する資格はなかった。
むしろ結婚するきっかけを与えてくれた両親を有難く
思っていた程である。
「さっちゃんは怒るかもしれないけど俺は素直に
受け入れようと思ってるんだよ」
「ええ?なんで。これじゃ結婚式に出る人形だよ
結婚式の主催者なのに自分たちで何ひとつ決めて
いない、そんなの私たちの結婚式じゃないよ」
「でもさぁ俺たちどっちの両親と同居しようか
そしてどこに住むか、仕事をどうしようか、別居になった
両親の面倒はどうしたらいいか悩んでいただろ?」
「だから今まで婚約はしたけど何かと理由つけて
結婚に向かって何の進展もしてなかったんじゃないか」
「それはそうなんだけど・・・・・」
幸子自身にも結婚へ何も前進してない事に苛立ちは
あった、秀一郎とはこのまま結婚できないのではないか
という不安も抱えていた。
「もし、両親が決めてくれた結婚式をキャンセルしたら
その後 一体どうなると思う!?」
「そ、それは・・・・」
幸子にも明快な答えを言えなかった。
「確かにお膳立てしたのは両親達だよ、だけど式の
主役はあくまで俺たちなわけだろう」
「両親達の顔を立ててあげれるし式を楽しめばいいん
じゃないかな、夫婦になれるきっかけを与えてくれた
と思ってさ」
と秀一郎から言われても簡単に納得できはしない幸子。
秀一郎が知らない母 芳江の本性、社長でもある母が
結婚式を仕切るだけでは終わらないと幸子は考えていた。
”今言いなりになったら・・・・きっと”
つづく
この物語はフィクションであり実在する人物とは
一切関係ありません