短編小説 介護のための見合い 第28編 | 妄想小説日記 わしの作文

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わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

秀一郎は幸子の部屋を訪ね、そこで彼が見た
幸子の顔は・・・・・。
青ざめて瞳は生気を感じられないように白く濁り
そしてやせ細っていた頬。
一目で秀一郎はそれが霊に取り憑かれていると理解した。
幸子の左肩のほうにはうつむき加減でまとまりのない
髪の毛を広げる黒い影の存在も確認できる。

放っておけば必ず取り憑かれた人間は死に至る、悪霊
というよりは死霊である。
立場上無闇に悪霊を消し去る事は出来ない秀一郎では
あったが最愛の相手、幸子をこのまま放っておけはしなかった。
悪霊を見ると反射的に左手をかざし念を込める。
悪霊が消えると同時に幸子は気絶してしまった。

幸子に取り憑いていた悪霊は消し去ったものの部屋には
まだ多数の悪霊がざわついており部屋の空気は重く澱み
息をするだけでも胸が圧迫されるような感覚に陥る。
秀一郎は気絶した幸子を抱き上げると急いで部屋から
出るために玄関目指して走る。
玄関ドアを閉めてマンションの廊下に出ると幸子を下ろし
ドアに背中をもたれかけて幸子を座らせると自分も腰を
下ろした。

”ハァハァハァ”
唯でさえ念を込めると身体のエネルギーを消耗するというのに
幸子を抱え走ってしまった秀一郎。
腹がメタボで肥満体の40男の額からは汗が湧き水のごとく
いや、大雨の山間部で上流から突然現れた鉄砲水と表現
したほうが正しいかもしれない。
それくらい一気に額から汗が流れ出たのである。
と同時に心臓の鼓動は小刻みに振幅し呼吸も激しい。

マンション廊下に座り込み汗をふき取っていたがメガネに
ついた汗はふき取ると幕をレンズにつけて視界は悪くなる
汗には塩分を含んでいるので水で洗い流す必要があるのだ。
部屋に戻れば水は確保できる、だが悪霊がいる部屋に再び
入ることは危険を伴っていた。
そのような状況でメガネのレンズを掃除する方法は?

”カぁーーー、、ぺっ”
秀一郎はメガネに自分の唾を吐きつけたのである。
汚いなどと言ってる余裕などないのだ、唾を使う事それが
緊急時のクリーニング方法なのである。

”カぁーーーぺ、ぺッぺ”
水分量が足りず連続技、唾の連続吐きという奥義をだした。
ドロリとした粘着質の唾はメガネのレンズから落ちると尾をひく
学生時代に授業で居眠りして教科書を涎で汚した事はあるだろうか
光り盛り上がった唾の池、それが秀一郎の足元に。

しばらくすると気絶していた幸子は意識を取り戻し目覚めた。
「う~~ん、さっきから何やってるの?うるさいなぁ!!」
「カッパがどうしたっていうのよ」
幸子の河童ということばに秀一郎は訳わからず返答のしようがない

幸子は秀一郎の「カァーーぺ、カァ~~ッぺ、、ペツッペ」が河童に
聞こえていたらしい。
幸子は周囲を見渡すと足元にはなにやら光った水滴状のものをみつけた。

「え?何これ・・・」
「何ってそれはおれの唾だけど」
「え===、きったねぇなぁ~~~もう」
「なんで唾吐き散らしたのよ」
「いや、メガネが汗で曇ったんで・・・」
「だったらキッチンで洗えばいいじゃない!?」
「・・・・・・・・」

幸子が叫んだのも無理はない、秀一郎の唾は足元だけにあらず
幸子のスカートも唾のシミがあちこちできていたのだ。

そんな状態のとき、女性はどう行動するか?
手やハンカチで唾をふき取ろうとなどしない、まして自宅の前にいる
「ちょっと服を着替えてくるよ」
女性の一般常識は幸子にも適用された。
部屋に戻ろうとする幸子を引き止めるだけの言葉を秀一郎は
知らなかった。
悪霊がいるから危険などと言っても誰が信じるだろう
仮にそれを話したとしても今なぜ部屋の外にいるのか
幸子がどういう状態でどうして元に戻れたのか?
そこまで秀一郎は説明しなくてはいけなくなる。
秀一郎の仕事は秘密にしておかなければならない
話したくても話してはいけないデビルマンの不動明
と同じであったから。

引き止める手段がない以上幸子と共に再度部屋に
入らなければならなかった。
そして心を決めて秀一郎は幸子と共に部屋へ
すべての悪霊を消し去る覚悟で!

つづく

この物語はフィクションであり実在する人物とは
一切関係ありません