短編小説 介護の為のお見合い | 妄想小説日記 わしの作文

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わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

人生40年いき続けていくと心配になってくるのが両親の事。
独り身で年取った両親の介護を一人でこなす事ができるのか
そして親もまた一人残った息子、娘の未来が心配でならない
そんな方々のために新しくはじまったお見合いの形。

最近お見合いというと当人同士が会うだけのものであるが
昔は両親と当人、そして仲介人が同席する形であった。
新しく企画されたお見合いも両親が同席する、しかし昔とは
その意味合いが変わり当人だけではなく介護される側の
両親も同席する。
そのため両親としても子供の幸せを考えてるだけの第3者的
な立場で相手を見るだけではなく親自身にとっても介護をして
くれる人間となるので慎重に選ぶ必要があるのだ。
これが”介護のための見合い”である。

不況が続くこの日本、いかに国が減っていく国民を危惧し
政策を打ちたてようと結婚する人間の数に変化はない
そもそも出会いを求めている独身者の数は多いのだから
収入が減ったので生活に余裕がなく彼女どころではない
だがそれは建前で本音は誰しも相手が欲しい。
ひとりさびしく過ごすクリスマス、長い連休でも相手が
いないのでつまらない休み。誰が望んでいるだろう

生まれて48年、彼女いない暦40年で今年も寂しく
年を越そうとしていた男、桐生秀一郎。
名前は格好いいが髪の毛は薄く、肥満とは男の腹の為に
あるように男は太っていた。そしてこのご時勢、希望の仕事に
就くことも叶わず時給が安い仕事に就いていた。
男に早く結婚して楽にしてくれと言っていた母親も男の現況を
知ってか孫はすでに諦めたようで結婚のことは言わなくなった。

男は自分の醜い姿を憂いそして低収入であることから自身も
結婚どころか恋愛さえも諦め未来を考えることはやめた。
だが男自身は気づいていなかったが男は女性にもてないタイプ
ではなく意外と女性には受けがよかったのである。
しかし、当人にもてる自覚がない以上女性と出会う事はない

親も当人も諦めていたが親戚筋は違いどうにか嫁を世話してあげたい
と調べるうちに浮かんできたのが”介護のための見合い”である。
「お義母さん、実はいいお話を持ってきたんですがどうでしょう」
と修一郎の弟である光男の嫁詩織が母裕子の元に訪れた。
「いい話って何かね、詩織さん」
「お義兄さんにお見合いの話を持ってきたんですよ」
「気持ちは有難いと思うのだけど当人にその気がないしねぇ」
以前見合いして相手の両親から低収入を馬鹿にされ落ち込んだ
修一郎を間近で見ていた母は再び息子の悲しむ姿を見るのは
耐えられなかった事もあり母自身も気乗りはしなかった。

「以前されたお見合いの話は主人から聞いてます。ですがお義母さん
 今のままではおとうさん、おかぁさんもそしておにぃさんも未来はない
 ですよ。」
「今度新しい形の見合いができたんです、それが介護のための見合い」
「まずは当人の両親同士で対面しそして話があってから当人が会う
 形式の見合いですから以前のようにおにぃさんが傷つくことはないと」
次男の嫁詩織はそう言うが母親として簡単に受け入れることは出来ない
「一応、おとうさんと相談してみるよ」
「主人もわたしと同じ気持ちです、いい返事を待ってますね」
そして詩織は帰っていった。

自分の知らないところでそんな話が持ち上がってるなど修一郎は微塵も
考えていない、低収入である男の休日はどこに出かける訳でもないし
かといって部屋で寝転んでばかりいるわけとも違う。50近い男には
自覚もあり今日も休日でありながら家の草むしりや部屋の掃除と忙しい
今の時期は枯れ葉が庭を覆うので集めては燃やしそして集める。
折角きれいに掃除しても風が強く吹くだけで枯れ葉は落ちてくる
それでも掃除しなければ落ち葉は積もってしまうからやめる事はできない

父親の手伝いをする母を見て羨ましく思うときもあった。
”ああ~~おれにも手伝ってくれる嫁いたらなぁ~・・・・”
そんな事を考えてる間にも風は吹き集めた枯れ葉は飛んでいく。
こうして男の休日は一日を終えるのだった。
知らないところで着々とお見合いの準備が進められているとも知らないで

翌日いつものように車で出勤していく男を見送ると母親は電話する。
「もしもし、詩織さん修一郎は今出て行ったよ」
「わかりました、これから伺います」
数十分経過した頃、弟の嫁しおりはやってきた。
誰にもみられないようにすばやくしおりを家の中へ入れるとカーテンを引き
玄関の鍵を閉める。まるで留守であるかのように戸締りをする

「しおりちゃん、いくらなんでもやり過ぎではないのかなぁ?」
と父親は言ってみるが
「いいえお父様、絶対知られてはいけないんですよ。光男さんも
 正直に話して承諾する素直な兄貴ではないからと言ってましたし」
考え込む父とは対照的な母は詩織に同調するかのように頷く。
「詩織さんの言う通りだよ、おとうさん。まぁ見合い相手見つかるか
 まだわからないけど、お父さんだって孫の顔みたいでしょ?」
「この際駄目で元々だから弟夫婦に任せてみましょうよ」
父親は承諾し見合いをさせる会議ははじまった。

「いいですかおとうさん、おかぁさん。これは極秘ミッションですから
 絶対に外に漏らしてはいけません、当人にばれてしまった時点で
 この作戦は失敗してしまうのです。いいですね」
「了解しました」

「では作戦の詳細をお伝えします」
「1、お見合いという言葉及び連想する言葉を一切禁止します」
「2、お見合いと知らせない以上当日スーツを着用する必要はなし」
「3、お見合い場所までは両親とおにぃさんは別行動とする」
と言ったところで父親から質問があがる。
「詩織指令、お見合いといえばスーツ着用が基本だと思うが
 スーツじゃなくて大丈夫なんでしょうか?」
「問題ありません、相手方の娘さんも知らせないので私服です」
「では続けます。4、呼び出す理由ですが”たまには一緒に外で
 食事しよう”と誘い出す」
「以上が今作戦の概要です。」
詩織は言い終わると作成してきた冊子を両親に渡した。
お見合いを成功させるためにあらゆるトラブルを想定した対策本である
本には相手方の両親との密会も知られないようにと書いてあった。
そして会議は終了。

つづく