会社の後輩である秘書課の雪江から釣りに連れて行ってと頼まれた歌舞伎は釣りを諦めてもらうために考えついたのが
釣り針に糸を結ぶ事。磯釣り用の小さな釣り針に1.2号という
細いハリスを結ぶのは慣れている人でも面倒な作業。
まして釣り針に糸を結んだことがない女性では不可能に近い
そんなことなど知らない雪江は笑って承諾していたが・・・・・
出来るわけがないと歌舞伎茶太郎は勝利を確信する。
一人で勝ち誇ったように笑う茶太郎に雪江は
「先輩、針の結び方教えてくれるんですよね」と言うので
「も、も、もちろんだよ。今度海で」
結び方を一回は見せる必要があることなどすっかり忘れて
いたので動揺する茶太郎。
それから数日後の土曜日、茶太郎は道具を持って海岸まで
来ていた。周囲を見回してもそれらしい女性は見当たらない
初心者である雪江だから女性が普通にきるカジュアルルック
で来ると想像していたのだ。
”待ってるだけでいいのか・・・・”
海岸線は広く砂浜には目印さえない待ち人を見つける事が
できるのか?もしかしたら向こうもこっちを探してる途中かも
と不安になってくる茶太郎。
こういう場合動いてしまうとすれ違いになる可能性がある
約束した以上仕掛けつくりを教えなければいけない
だがもしこなかったとしてもそれは自分にとって好都合。
釣り場で教えなくて済むからである。
ふと視線をずらすと手を大きく振っている女性を見つけた
その女性は本格的な釣りウェアを身につけていたので
雪江な訳はないきっと自分ではないほかの人に手を振って
いるのだと思っていたが・・・・・・
「せぇーーーーーんぱぁ~い」
あれは違う人と思っていたのは雪江であった。
釣りえさメーカーのキャップをかぶりルアー用ベスト、釣り用の
ソフトクーラーを肩にかけて走りよってきた。
てっきり若い女の子らしく足を出したパンツスタイルかスカート
だと思っていたら釣り用の長いズボンをはく雪江に驚いていた。
だがそれよりも釣り初心者だと思い込んでた茶太郎は
ルアーベストを着ていた雪江のことを見くびり思い間違いに気づく
「なんだルアー釣りやってたんだ・・・・だったら針くらい結べるよね」
せっかく仕掛けつくりを教えようとカリキュラムまで考えてきた
というのにと思いながらも帰る仕度をする茶太郎だった。
「せ、、せんぱい。針結び教えてくださいよぉ!わたし
ルアーやってたけど針結んだことないんですよ。」
と帰ってしまいそうな茶太郎を呼び止める。
「それに先輩の使っているタックル見てみたいし」
「磯竿見せてもらっていいですか?」
上物釣り師にとってタックルは自慢でもある。仕方ないと
思っていた茶太郎の口元は緩んでいた。
ロッドケースのファスナーを下げ竿を固定する紐をほどくと
細身の竿を手に取り雪江に見せる。
「おお~~がまかつじゃないですか!これが競技グレかぁ」
まるで宝石でも見るように羨望のまなざしで見つめる雪江。
竿自体は黒色なのだが太陽の日差しに反射して輝く竿
ステンレス製の外付けガイドとリールホルダー。
「お、がまかつ知ってるの?通だねぇ」
「これでも釣り用品はメーカーカタログ見てチェックしてます」
「全メーカーのカタログ持ってるんですよぉ」
2大メーカーは知っていてもがまかつはあまり知られていない。
さらに今は生産してない競技グレを知っていた雪江に感心していた
自分のタックルをほめられ喜ぶ茶太郎は単純である。
なぜここで変だと気づかないのか・・・・・・
磯釣りをしたことのない若い女性、最近のタックルを知っているのは
わかるが5年以上前に生産停止になった竿をなぜ知っていたのか
答えは簡単である。
雪江は茶太郎の気持ちを引くために過去の釣り雑誌を読んで
勉強した。それをあくまで自然に出して茶太郎は信じた次第である
若い女、おそるべし!
「じゃちょっとおれが手本を見せるからみていて」
リールのべいるを起こして道糸をフリーにし竿を伸ばしてく。
海では浮き止め、円錐浮き、浮き玉、クッションゴム、サルカンなどを
結束しなければいけないが今日は釣り針にハリスを結ぶ作業が目的
なのでサルカンまでは事前に作っておいた。
竿を伸ばし終えると末端には浮きやサルカンがあるというわけである。
いったん下まで浮きを落としてからサルカンに用意してきた50メートル
巻きのハリスを結び糸ケースを持ちながら竿を立てリールを巻いていく
すると浮きがトップガイドに引っかかり針にテンションがかかる。
竿を両足で挟んで固定しポケットから針ケースを取り出して選ぶ茶太郎。
釣り針ケースにはカットグレ5、6、7号と入っており数字が大きくなる
ほどに針は大きくなる。
”結ぶのが難しいカットグレ6号で1号フロロカーボンを結ぼう”
つれていくのは嫌だったから結ぶのが厄介な6号を選択。
指で針を押すと人差し指の先にくっつくくらいの大きさといえば理解
できるだろうか?針先に指を押すと刺さる、あくまで針の横を押すのだ
ハリスに針の軸を沿わせそこから一度輪を作り針軸に糸を巻いていく
ハリスにテンションをかけてあるので力をこめながらゆっくりと巻いていく
今日は糸が細いので10回くらい針軸に糸を巻きつけ最後に軸をよけて
巻き糸ははじめに作った輪を通す。
つばをつけて糸を引っ張れば出来上がり。
「どう少しはわかった!」
「え、、ごめんなさぁ~い。つい先輩の姿にみとれて・・・」
茶太郎の無駄な動きがなく一生懸命な姿をみてみとれていた雪江。
「なに。。頼むよ本当!一回じゃわからないとは思っていたけど・・・・」
ベストのラインカッターで針根元の糸を切り持参したゴミ箱に余分な糸を
捨て、針に巻きついた糸もほどきこれも捨てる。
「ところで先輩どうして糸をなめたんですか?」
「そんなところは見てたんだ!?」
「最近の糸は熱に弱いからね摩擦を少なくするために」
雪江は舌で針を舐める行為がとてもエロチックに感じていた
頬を赤くしながらも口から出す舌を見つめずにはいられなかったのだ。
「今度はやってもらうからしっかり見ていてよ」
「はい・・・」
つづく。