「悟り。おれには無理だな」
心霊スポットを探ってるうちのある霊能者のHPを見つけ
そこを見てるとFAQで悟りとは?というページを見つける男。
人間で悟りの境地に達したものなど皆無であると霊能者は
解説していたのだ。ただ無我の境地になるだけではいけない
少なからず能力はあり霊もみたことがある男、三浦田吾作
という名前であった。霊能者として仕事していたわけではなく
普段の仕事はトラックの回送を主としていた。
ちょっとしたことで八王子にある心霊スポットが気になり
ネットで検索していたら今見てる霊能者のHPに出たわけだ。
八王子城のレポートも書いてあり熱中していた。
「お~~い 酒なくなった。買ってきてくれよ」
田吾作の父親ではない、叔父でもない。
友人というわけでもなく単なる居候である。
「あんた、神様のくせになんでうちから出て行かないんだ。」
田吾作は困っていた。パートの安月給で生活もやっと
それなのに居候のために毎月酒を買わねばならない。
「いやぁ~神社仏閣じゃ酒飲ませてくれんのだ」
「その点、ここにいれば酒を飲ませてくれるのでな」
神と名乗る居候はそういうが田吾作は”絶対貧乏神”だと
思っていた。
居候がきてから金回りはよくならない、酒の出費は増えた。
幸運が舞い込んできた訳でもない。
「よぉ、じいさま!悟りってなんだか教えてくれよ。神だろ」
「ほう悟りか。只では教えぬ報酬をよこせばな」
毎日ただ酒飲ませてやってるというのにさらに・・・・・
「酒買ってきてやってるじゃないか」
「田吾作よ、教えを請うには報酬がいるのだ。授業料だな」
「わしゃ別に教えなくてもいいのだぞ」
と含み笑いをする自称神様。なんとも憎らしいと思った男。
じぃさまの要求通り北陸の酒2本を買ってきて差し出すと
神とは思えぬうれしそうな顔を見せたじぃさまである。
元々部屋においてあった酒は悪霊除けのために置いていた
それを突然現れた神と名乗るじぃさんは勝手に飲んでしまった
だから除霊用の酒はなくなってしまったのだ。
田吾作は酒を補充すると再びじぃさんは飲んでしまう
そして今日まで繰り返していた。
それなのに、このじぃさんは日ごろの恩を感謝せずに
教えるからと酒を要求してきた。
田吾作が怒るのも無理はないことだ。
「でじぃさんよ、悟りとはなんぞや」
「あのなぁ、神さんでいいからそう呼びなさいよ」
「まぁ酒もらったから教えてやるが」
悟り、頭を空っぽにし無心になっただけでは悟りは達しない
5欲を捨て去り自己本来の力を引き出すと説明する。
「例えばだ、いを使わない!ことだ」
そんなことを言われても田吾作に理解できるはずがない。
「さむい、こわい、辛い、高い、低い、遅い、早い、うまい
まずい、きれい、ひどい、きたない、重い、軽い、暗い
明るい などを日常生活で使わないで暮らす」
日常生活で暮らす以上これらの言葉を使うのが人間と
いうもので上人のように部屋に動かなければ
使わずに済むかもしれないが仕事する以上無理である。
「無理だな・・・・おれには」
「田吾作よ人に悟りは無理なのだ。そう落ち込むな」
別に悟りなんか得ようと思っていなかったのでそれで
落ち込んだ訳ではなくじぃさんがあっという間に酒を
一本あけてしまったからであった。
そう北陸の銘酒だったので少しは飲みたかったのだ。
「神さん、じゃ悟りって夢想転生みたいなものだな」
「おおそうじゃな。」
なぜか神様の癖にアニメ”北斗の拳”を知っていた。
「だいたい悟りを会得してなんの意味があるんだ」
田吾作の言うことももっともな話である。悟りを会得したから
といって仕事に関係ある筈もなく給料も同じ。
「愚か者、悟りを会得すればお主も神様になれるのだ」
「じぃさんみたいに貧乏神にか?」
その言葉が神様に火をつけてしまった。
「愚かものぉ~~、我は大日如来である。宇宙に一人の存在
銀河を司る神である」
とじぃさんは怒鳴ってみせるが酒飲むだけの如来なんて
田吾作は信じられる訳がない。
「うそつけ。。。」
「わかったよ、じぃさん。苦労してきたんだな」
そういうと神様に酒をついで見せる。自分も手酌で酒を
”如来様になりたかった貧乏神なんだな”と思い
可愛そうなじぃさんだと自分で何回も頷いてみせるのだった。
田吾作は大きな間違いをしていた。
実はこの神様、正真正銘の大日如来であり太陽の神と言われている。
それがどういうわけか田吾作の部屋に居候している。
全国に大日如来を奉るために如来像があるにも関わらずに
当然、各寺に奉られている像に魂は入っていない。
だって魂というか本体は田吾作の家にいるので。
「じぃさまよ、ところであんたは悟りの境地に達してないだろ」
「何を言う。我は神だ、当然悟りの境地に達しておる」
「さっき”い”は使わないと述べただろ、それなのに
酒のみたいって いを使ったではないか」
・・・・・・・・・・・
神いや大日如来に返す言葉はでなかった。
この物語はフィクションであり事実とは一切関係ありません