短編小説 戦場の景色 後編 | 妄想小説日記 わしの作文

妄想小説日記 わしの作文

わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

わたしは戦死者の幽霊に連れられ蒸気機関車に乗った。
青白い顔、そして白く濁った瞳をした特攻隊員と
やせ細り頬がやつれた顔の女子学生の二人と。

客席の床は古びた木で歩くと音がし座席は昔のモケット布
歩くたびに”ギシィ”座ると”ミシィ”と鳴り
その音を聞くだけでわたしの心臓は押さえ込まれる。
座席に座らせられると周囲に白いもやが現れそれは人型に
そしてそれは次々と女子学生なった。
これは間違いない、冥界への特急だとわたしは思った。

おびえるわたしなど興味ないかのように無表情な霊達は
迫ってくる。霊圧が出てのか押しつぶされそうな圧力を感じる
ここを抜け出したい。逃げたい!
だがここは幽霊たちのテリトリーである。
冥界特急から逃げる術はない。

恐怖で吐き気や胸焼けを覚えていたわたしに
兵士の霊は初めて口を開いた。
「先生、そんなに怯えなくても大丈夫ですよ」
「わたしは神風攻撃隊横須賀基地所属、三宅中尉と
申します。ここまで強引につれて来て申し訳ありません」

「へ?先生。。」
先生と呼ばれ再び軍人をみると血色のいい普通の人の
顔に変わっていた。
わたしは確かに小規模であるが小説を書いていた。が先生
と呼ばれるほど偉くはない。だが嫌な気もしない

「先生、実は今回先生をお連れしたのは戦友に頼まれて
 未だ弔ってもらえないものたちを小説で書いて頂こうと」
「硫黄島にはまだ多数の戦死者がいるのをご存知かと
 思いますがこの汽車でお連れしますので何卒お力に」
どうやら兵士達は執筆させる為に私を拉致したようだ。

硫黄島は沖縄のもっと先にある島で日本は戦争中敵に
占拠されるわけにはいかなかった。それゆえ大激戦地と
なり多数の犠牲者を出した島である。
しかし、鹿児島まで汽車でいけるだろう、だがそこから先は
海が広がっている。無理だ・・・・・・

「ひとつ伺いますが九州の先は空を飛ぶので?」
「あああ海ですか、空は飛びませんよ。あははは」
「海の中を走るのです。汽車ですからね」
・・・・・・・汽車は海中を泳げないと思うが。
とこの先心配になった。

「先生~お酒飲みません?」
そう言って私のそばに来たのはバニーガールの衣装を
まとった女子学生達数人。
その姿をみただけでわたしの不安は消えていった。
どこうやって調達してきたかは知らないがバニーの耳
バニーのスーツと丸いしっぽ、そして黒のハイヒール。
だがわたしとしては例え相手が幽霊だろうと嬉しかった。
若くてかわいい女性たちが肌を露出して隣にいる。

「き、きみたちそんな格好してご両親が悲しむよ」
今の時代と違い封建社会に近い戦時中の女性なので
そう言ってみたのだ。

「先生~両親はとっくに死んでしまったわぁ」
「一度こんな服着てみたかったのよねぇ~」
「わたし達って魅力ないのかしら」
とわたしに迫ってくる女性達。
この女性達は結婚もしてないし恋愛もしていない。
たぶん処女であろう そう思うと使命感に溢れる。
”わたしが男を教えてあげねば”と

「先生、まだ先は長いのでゆっくりお楽しみください」
いつのまにかウェイターのスーツに着替えた兵士。
そんなことよりも目の前の女体の群れ。
夢にまで見たハーレムに感動しわたしは時を忘れた。
しかし、熱中するとあっという間に時間は過ぎるもので
海底を走ることも忘れてわたしは宴に酔ってしまう。

何時間過ぎたのだろう。わたしは兵士の言葉で正気に戻った
「先生、硫黄島につきました」
汽車の窓から見る景色は壮絶で驚愕した。

ゼロ戦はプロペラを曲げ燃え操縦席では兵士が血を流し
死んでいた。海岸には多数の戦死者が倒れその血で
海は真っ赤に染まる。島のあちこちで爆破した後
爆死し腕がない人、内臓をだして死んでいる人。
日本軍、米軍と兵士がところかまわず死んでいた。

わたしは兵士と女学生に同行し汽車を降りて歩いてみると
島のあちこちには石や軍用銃、木の破片が地面に。
”あれはもしや・・・・・”
「先生!あれが戦死した者達の墓標なのです」
「書くものもないので表示なき墓。誰が埋められているか
 兵士にもわからない程多くの人が埋められているんです」

わたしが想像していた以上に戦死者が多い。
なんの目印もない目標物もない戦場で埋葬された人の場所を
小説で書くことなど不可能であると思いわたしは
持参してきたスケッチブックをだし倒れた人を鉛筆で書く。

「先生、絵も描かれるとは知りませんでした。」
兵士と女学生は背後で関心するように見つめていた。
「ええまぁ。デッサンだけですけどね」
大破した戦闘機、散らばる銃。爆破の煙そして戦死する軍人
輪郭を描いて影を入れる。
わたしが無心で書いていると背後が騒がしくなっていた。
ここで戦死した日本軍兵士が集まってきたのだ。

「OH,Verry nice」
そして米軍兵士もやってきた。
「Hey  Jones, Come hire」
戦友を呼んでみる兵士と呼ばれて近寄る兵士
米軍の兵士も次は自分を書いてくれと言う。
この島で未だ見つかっていないのは日本軍兵士だけに
あらず米軍兵士もまだまだ多数いたのだ。
書いてくれとわたしに頼んだ兵士もまだ発見されておらず
寂しい毎日を送っていたのだろうと思うと
書きながらもわたしは涙が止まらない。

次から次へと人物画を書いてスケッチブックはあっという間に
一杯になってしまった。書いた人物画には出身地と年齢
氏名、階級を書いて。

この島から未だに離れることができない多くの兵士のため
わたしは現在の日本、アメリカをみんなの前で話すと
堕落した今の国に怒るものや平和を喜ぶ者。悲しむ者
しかしみなの心は”何のために戦死したのか”
それは全員が思った事であった。

「みなさん、食事にしませんかぁ」
男ばかりの戦場だった硫黄島で久しぶりに見る女性
バニーガールの姿をした女子学生達がやってきた。
酒をつぐ女性に照れ、喜ぶ、微笑む兵士達。
日本とアメリカ国境を越え今兵士達は和解した。

戦争で戦い殺しあった人々、死んでからも憎しみあうのは
愚かなことである。
わたしがここであった人々のことを小説で書いても発見
されない人がいるかもしれない、だが人々は笑ってくれた
その笑顔をいつまで忘れないだろう。
そしてわたしは硫黄島を後にした。

この物語はフィクションであり事実となんら関係ありません