日本くだもの農協
SEから始まっていることで、機内にいることがすぐに分かる。これがセリフからだと、「お客様の中に~」という大切なフレーズを聞き逃してしまう。また、ナレーションに入る前にもう一回機内らしいSEを入れることで、この方は、徹底的に客室乗務員になりきっている。
そして言うべき内容が、「りんごで医者いらず」に集約されており、シンプルかつ分かりやすい。グランプリは、当然の結果だった。素晴らしい。
場面・状況をSEを入れるだけで的確に表現できるので、これはパクらせてもらおうと思う。
中島信也賞
ライオン
SEで風呂場だと分かる。そして女性の鼻歌で女性がひとりいることが分かる。丁寧である。
この後が重要。この方は、もう一度SEを入れたのだ。これで何か状況が変わったことが容易に理解できる。
自分は一瞬、女性が風呂から上がるために開けたのかと思ったが、「キャー!のぞきー!」という文言を入れていることで、そうではないことが分かる。この丁寧なアプローチが受賞につながったのだ。
「お風呂のカビは、裸よりもはずかしい」というキャッチコピーは、分かりやすく、見事。商品が無い世界の悲惨さがよく伝わる。
商品が特殊なため、ナレーションの商品説明が長くなっているが、これは必須。これが分かりにくければ受賞を逃していたことだろう。
テンションだけでは、ダメだ。前年度受賞のシー・アイ・シーであれ、「ゴキブリが減少→ゴキゲン!」という強靭な論理に下支えされての受賞なのだから。
谷山雅計賞
日野自動車
家に年賀状が届くという設定なのでSEはいらない。この判断もgood.
「どうせまた、愛車の写真だろ?」このセリフは異常だ。よって、視聴者は釘付けにされる。「田中さん=年賀状に自分の車を載せる人」これは設定勝ちだと思う。
そして「愛車が大きすぎて田中さん、いっつも豆粒みたい」というセリフでトドメを刺した。この方は、イメージしやすい作品を書くことについてはプロ級であるといえる。
ただ弱点もあって、この作品は、日野自動車だけのものが表現されていない。これがプラスされていたら、グランプリもありえただろう。
児島令子賞
シー・アイ・シー
居酒屋SEでスタート。やはり居酒屋であると分からせるには、SEが必須。
ただ、このあと暗闇になり、誰かの誕生日かと皆が勘違いするという流れになるのだが、誕生日なら居酒屋で祝うことはないだろう。おそらく本人はファミレスなどを想像して、でもファミレス独自の音がイマイチぴんと来ず、とりあえず「居酒屋ガヤ」と書いたのではないか。
では、どうやってファミレスにいることを分からせたらいいのだろう。「頼んだドリア、なかなか来ないなぁ」とか入れてみたらどうだろう。分かりやすくはなったが、時間は失われてしまった。20秒に収めるのは、本当に難しい。
それでも、ゴキブリがいることを面白い設定で隠すという発想は見事。「また」というセリフが入っているため、いつも誤魔化しているかわいい店長というキャラ付けもされる。
近藤浩章賞 リスナー大賞
BOAT RACE
特殊な設定なので、Mからスタート。女性どうしの会話に「空気抵抗」やら「ヘルメット」やら出てくるのが、単なる小競り合いに終始しない工夫がなされている。
小競り合い=二次元からボートレース=三次元に移るという流れは、スムースであり見事。
そしてSE。これがボートレースの命綱なので、SEは外せない。「水の上でも、女の勝負はすさまじい」というコピーがその後に続くのだが、しっかり水音のSEを流してから「水の上」と言っている。さっき流れたのは、こういう状況を表していたんですよと、丁寧な説明つきで分かりやい。
すべての作品の中で、いちばん勢いがあったのは、この作品ではないか。20秒で収まる作品になれば、あるいは。
細かくは指摘しないが、今回の各審査員賞や優秀賞には、20秒をオーバーする作品が多い。
橋本マナミ賞
東京モノレール
まず、「野心」を忘れたという設定が素晴らしい。駅員に聞くことで、東京モノレールらしさが、しっかり出る。それだけで受賞は決まりだろう。
ただ、最後のコピーがもうちょっと何とかならなかったのだろうか。これ、コピーがすさまじい内容であったら、ぶっちぎりのグランプリだったと思う。
優秀賞
青二塾
「元素の名前を読む声だけでも魅力的」という内容がユニーク。
勢いがないのが残念。ただ、声に着目している点が青二塾らしさが出ていていい。しかもそれだけで終始せず、本来は俳優養成の場所であることも伝えている。
優秀賞
琴伝流大正琴普及会
強盗に入られて、琴が盗まれたという点がユニーク。ただ、大正琴でなくとも成り立つので、そこが弱い。
審査員の谷山さんからは、「琴のCMなので、無理矢理にでも琴の響きを聞かせるべき」と注文が飛んだ。
優秀賞
パソコンファーム
遺品整理から悲しい事故が起きるという着想は良い。
「開いてみた」から「覗かない方がよかったパソコンも」に至るまでの間にあった内容が、サラッと流れてしまっており、残念。
これは相当、化ける作品である。
優秀賞
大成ユーレック
SEが要るかは、その後に「マンションの屋上」と書いてあるため、不明。
マンション屋上で叫ぶ人がいるというのはユニークだが、残念なのは、ユーレックらしさがないという点で審査員賞以上の受賞を逃した理由だろう。
「土地オーナーの方へ」以降、ユーレックらしさが一応、付け足してあるが、本当に付け足してあるだけで「PC工法」が何かは分からない。これに触れて分かりやすい内容だったら、受賞もありえたと思う。
優秀賞
東京ガス
「七品料理をつくる人が、本当は女の敵になる」この発想が秀逸。ただ、この事実とピピッとガスコンロには、直接のつながりはない。それを審査員に見抜かれて受賞を逃してしまった。
優秀賞
小学館
場面設定は素晴らしいが、肝心の川柳がつまらないので、それで全体がスベってしまっている。
意外性があって拍手喝采という内容だったら、結果は変わったかもしれない。
優秀賞
カネカ
「還元型コエンザイムQ10を飲むと、疲れがなくなる」というのを、「疲れが挨拶に出るのは日本だけ」と言い換えて表現している。
各国の挨拶という要素を入れることによって演出は見事だが、「還元型コエンザイムQ10が、どう疲れを取るか」が書かれていない。それを強引に結びつけようとしたため、全体で内容の断裂があるのだ。
この「各国の挨拶」を直接還元型コエンザイムQ10と上手く結びつけられていたら、きっとすごいことになる。
この方は、非常に苦心されたのだと思う。
優秀賞
太陽グループ行田自動車教習所
この作品、最終的に女性は何をしたかったのだろう?そして免許を持っていたのだろうか?プチハピネス賞の人と連絡を取ろうとした理由は?と、?尽くしになってしまった。
「免許を取るなら」という最後のコピーで、女性との関係が切られている。内容の断裂がある。賞が当たった→免許となる必然性がないと、魅力的なフレーズ群に目移りしてしまう。自分は、話に置いていかれてしまった。
ただ、面白い雰囲気をつくろうとする意思は感じられた。もっと要素を減らしてシンプルにしたら、化ける気がする。
優秀賞
日本製粉
全く関係ないものを、かなり自然な形で結びつけている。
不幸だったのは、児島さんに目をつけられ、ダメ出しされたこと。
「似ている→違う」を「似ていない→同じ」という関係になってしまったことと、「覚えてね。日本製粉」とした方が良いということ。
確かに。簡潔なのは理想だが、論理展開に無理を感じるのは厳しい。
優秀賞
エイチ・アイ・エス
中島審査員長の一言が、非常に響いてしまった作品。「ルーブル美術館」も、「サグラダファミリア」も、直接出てくるわけではなく、付け足し程度。
いちばん痛いのは、「貸し切り」をうまく活用できていない点。しかし、「貸し切りするとこうなる」は、見せ方が難しい。
自分は、「女性が喘ぎ声をあげて、ガウディが耳元でささやいている」という作品を送ったが、ダメだった。
出したなら、グランプリを確信すること。そして外れたらドン底まで落ち込み、しっかりと次回の受賞に生かす。
むしろ、今回受賞を逃したことは、次にジャンプするための跳躍力を身につけられることになり、良かった。
27日にはMBCの発表もあるし、C-1グランプリもある。C-1グランプリ、予定が未定になってしまったけれど、発表は年明けなのかね?