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音速を超える、一本のコピー

33歳芸大生(職歴なし)が、文化放送のラジオCMコンテスト&宣伝会議賞を通して、電通へと駆け抜ける。コピーライター。現在は宣伝会議コピーライター養成講座上級コースに在籍。宣伝会議賞は、学生企画にも挑戦中。

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すぐに意味がとれた人は、天才である。
このポスターは、H.I.S.の「食女 in SEOUL 2泊3日の旅」の広告で、ポスターをはじめて電車内で見たとき、この広告に釘付けにされたことを覚えている。
それだけ、パッと見て目を引き、見る者を考えさせる力がある。長さのあるコピーにも、また、引力があるのだ。降りるまでずっと考えても意味が分からなかったことは、この際どうでもいい。
分かりにくいならば、これは大学入試で培った英文解釈力を試すチャンスだ。


「彼女の胃袋はこの町の料理と、激しい恋に落ちていた。」

彼女の胃袋(主)は

この町の料理(補1)と、激しい恋(補2)に

落ちていた(動)。


はじめはこの解釈で臨んだ。
でも、「胃袋が料理に落ちる」という部分が、なんど見ても意味が通じない。
どうやら、この解釈は間違っているらしい。


彼女の胃袋(主)は

この町の料理と、

激しい恋(補)に落ちていた(動)。


「胃袋が恋に落ちた」
たぶん意味としてはコレなのだろう。しかし、胃袋(主)=恋(補)という図式も分かりにくい。
そうなってしまった要因としては、要素が多すぎること。「女性」「胃袋」「料理」「恋」と、これだけ方向性の違う要素を、ひとつの文章に詰め込めようとしたら、そりゃ崩壊しても仕方がない。
そして、それに拍車をかけているのが、「の」や「激しい」といった形容詞や、「この」という指示語。もっとシンプルにすべきだ。
あと、いちばん大切な「韓国」という要素をコピーに入れないと、パッと見て分からない。ポスターの雰囲気から韓国のことを言っていると確信させるのは、さすがに無理がある。
改善させるのは難しいが、あえてやってみる。

「わたしの恋にも、サムゲタンが欲しい。」

サムゲタンは、風邪にピッタリの韓国料理。それを知らないなら覚えてもらえるし、知っていれば韓国を具体的にイメージしてくれるだろうということで、こうしてみた。
「彼女」はポスターに女性が出ているから不要だし、「この町の料理」は、漠然としすぎている。
H.I.Sの「食女 in SEOUL 2泊3日の旅」のホームページを調べても、画像はヒットするが、「彼女の胃袋はこの町の料理と、激しい恋に落ちていた。」というコピーは、ボディに残るのみで、メインコピーからは外されているということは、つくった本人も、マズイと思ったのだろうか。あるいは苦情が来たとか?
とにかく、現状の韓国は、残念ながらイメージはあまり良いとはいえない。それを変えるのはコピーの役目でもある。もちろん、嘘をついてはいけないのだが。