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音速を超える、一本のコピー

33歳芸大生(職歴なし)が、文化放送のラジオCMコンテスト&宣伝会議賞を通して、電通へと駆け抜ける。コピーライター。現在は宣伝会議コピーライター養成講座上級コースに在籍。宣伝会議賞は、学生企画にも挑戦中。

[小学館]
朝、雀の声が聞こえる。
夫:爽やかな朝が来るのは、頭皮からだとは、知りませんでした。
妻:アンタ、前より禿げたんとちゃう?
N:綾小路きみまろ著『きみまろ「夫婦川柳」傑作選』

・敗因
個人的に好きな作品だが、もっと夫婦川柳を直接感じさせる作品が最終審査に残ったのだと思う。

[カネカ]
バー、カランと氷の音。
女性:(呼吸を整え、決心するように)うん、大丈夫。マスター、そろそろ還元してくださる?
マスター:いえ、すでに還元済みでございます。先ほどの紳士から。
女性:まあ!お名前はなんておっしゃって?
N:還元型コエンザイムQ10。カネカから。

・敗因
「予め還元されている」この特徴でゴリ押しした作品。だいぶ無理があったかもしれない。最終審査に残るには、もっとインパクトがなければダメなのだろう。

[太陽グループ行田自動車教習所]
男:ねぇ、どこに行く?
女:うーん。そうだ、夕陽が見たい!
男:夕陽かぁ、いいね。じゃ、今から行こう!
キキーッと激しいブレーキ音
教官:コラッ、危ないやないか。ちゃんと前みて運転せんかい!
N(男):太陽は、助手席にいた。太陽グループ行田自動車教習所。

・敗因
妄想運転は危険である。太陽グループの「太陽」に着目するのではなく、以前第4回でノミネートされていた「行田二人前」のように「行田」へ着目するべきだった。ただ、流れは好きな作品。

[日野自動車]
少女:あれー、こっちの道じゃないのかな?うーん。
ブッブー!と、トラックのホーン。
おじさん:どうしたい?ああ、ここに行きたいのかい。これはな、あそこの橋を渡って・・・
少女:あの日、わたしは初めて、トラックに乗った。ありがとう、あの日のひと。日野自動車。

・敗因
最後のコピーにすべてを賭けてつくったが、「日野」の響きからCMを作ろうとするのは安易すぎた。そして、道を教えられたことを「トラックに乗った」と表現したが、それを本当にトラックに乗ったと解されると、途端に非常につまらない作品となる。実際、評価が低かった理由は、同一視点の発想が多かったからだろう。

[日本くだもの農協]
N:ニュートンは、空に恋したのだろうか。大気はあかねの向こうへ、ゆっくりと染みてゆく。甘い、匂いがした。熟していたのは、一個のりんごでした。日本くだもの農協。

・敗因
「ひとは恋をすると空を見る。しかし、空もまた暮れようと、青空からあかね空へと、姿を変えていく。りんごのように。恋をすると、いい匂いがする。それは大人になりつつある証拠であって、そこには同じ、熟しはじめた一個のりんごがある」と、ノートにはあるが、まったく伝わらず、爆死。りんごを食べ物として直接登場させるのではなく、聞き終わって何故だかりんごを食べたくなる、という効果を狙った作品。やはり、20秒の中に叙情詩を詰め込むのは、非常に困難である。

他にも自信がある作品はあったが、正確に再現可能なのはこれしかない。次からはしっかり記録しておこうと思う。そして案外、見直すと貧弱な作品が多い。コピーと比べれば、ラジオCMなどは特に、素人なのだろう。でも、良い経験になった。落ち込んでこそ、這い上がる意味がある。