妹は退院してから母親の家で暮らした。母親と義父との生活は居心地の良いものではなかったが兄の言う通り、学校にも通いおとなしく生活していた。


兄は服役中の父親に手紙を書いて出所してから妹の親権の移動や今後一緒に暮らしたいとの事を伝えておいた。



数ヶ月後、父親は出所した。


家裁で親権の移動も決まり落ち着き妹は父親の家に行った。


恐れていた性的虐待は起きなかった。ただ父親は働かなかった。たまに仕事をしても全て酒とギャンブルに使ってしまう。当然酒癖も悪かった。高校生になった兄は体も成長していたためほぼ暴力はふるわれなかった。父親は妹に手をあげるようになった。罵声を浴びさせ胸ぐらを掴んでグーで殴る。


兄は学校とバイトであまり家にいない。その間、父親との最悪な時間を過ごす。

楽しみにしていた生活とは正反対だった妹は悪い仲間とつるんで、家にいないようにしていた。


ある日、夜遊んで帰ってきた妹に父親は異常に絡んだ。意味もなく怒鳴りつけた。胸ぐらを掴まれて振り回されてる時に、ちょうど兄がバイトから帰ってきた。
妹は泣きながら叫んだ「お兄ちゃん助けてよ」

兄は部屋から木刀を持ってきた。父親を引きずって妹から離した。そして木刀を振り上げて言った。「いい加減にしろよ、次はないからな」ひどく 酔っぱらっている父親は「息子に殺される」と大声をあげて外に走っていった。


妹が震えてまだ泣いていると兄は「もういないから平気だからご飯食べよう」と言って自分と妹のコンビニ弁当を机においた。

妹は泣きながら「ありがとう」と言って食べた。

兄は静かに黙って食べた。

この日2人は何も話さすこともなく、互いに静かに寝た。





続く!
ある日の面会で兄は妹に話しをした。
「今お前の親権者はお母さんだからお父さんに移そう。お母さんが親権者のままだと、また施設に入れたりするかもしれない。だからすぐ移した方がいい。退院したら我慢しておとなしく生活してるんだ。俺もちょくちょく会いに行くから。お父さんが出てきたら話しをしよう。それで一緒に暮らそう」

まだ高校生だが兄は色々な事を勉強していた。学校での勉強以外にも法律の事など。全ては妹のため、自分のために。


でも妹は迷った。兄とは一緒にいたい。でも父親の家…。また虐待されるのではと不安で仕方なかった。兄は性的虐待の事は気づいていないし知らない。むしろ兄には知られたくなかったのである。とりあえず妹は答えた。

「お兄ちゃんと一緒に住みたいよ。お母さん家は嫌だ。でも私ね、お父さんが怖いんだ…」

妹はうつむいてしまった。兄はすぐに言った。

「俺がいるから大丈夫だから」

「うん」

この日兄が帰った後、妹は1人病室で嬉しくてたくさん考えて想像していた。
兄とのこれからの暮らしを。暗闇だった心に光が差した日だった。




続く!
兄は妹が施設に入れられた事を知ると妹をどうにか施設から出さなくてはと必死で考えるものの、まだ少年の兄にはどうする事もできずにただただ時間ばかりが過ぎていった。兄は悔しい気持ちでいっぱいだった。






妹は施設で生活中、泣く事はなかったが自傷行為を繰り返すようになった。遺書を残して。【毎晩〇〇先生にやられるのはもう耐えられない。死にたい。死にます】万が一何かあった時には大変な責任になると施設側は判断して、妹を強制的に精神科の閉鎖の病院に入院させた。


妹は医者や看護婦に施設での出来事を何度も話した。だが信じてはくれなかった。施設側が前もって話していたからである。「この子は異常な妄想を言い出す」などと。

施設の職員がそんな事をするはずがないと病院側も信じていた。母親は男と新しい生活をしていて面会に行く事もなかった。




妹は諦めた。もう誰も自分を助けてくれないと思うようになっていった。



兄は高校生になり、真面目に勉強をしながらバイトをしていた。テスト期間以外はバイトは週6で出ていた。バイトで収入を得る事ができるようになったから生活は昔程困らなかった。この頃、父親は事件を起こして服役中だったため兄は生活を乱される事はなかった。

ある日母親と連絡をとった兄は、妹が病院に入った事を初めて知った。

すぐに会いたいと母親に伝え、面会できるようにしてもらった。




数年ぶりの対面。

お互い外見は成長して変わっていたけど、兄妹の絆はそのままだった。


兄は学校が終わってからバイトの時間まで毎日妹に会いに行った。

妹も毎日、閉鎖された病院で時計だけを見て兄をひたすら待った。


面会の時間に兄妹は本当に仲良く話した。



兄は疲れ果てていたが、妹の前では元気に振る舞った。



続く!