「わたしから行くよ」

なんて無責任な発言しといて 数日後


ちかごろのショウさんは変だった。

もともとそんなにしゃべる人じゃないけど、

無言な時間が多かった。


ごはん食べに行っても 沈黙で気まずい空気がながれる。

話をふってもノリが悪い。


んー・・・。

なんか 楽しくないなぁ。


もう。会うのやめちゃおっかな。



そんなこと思うようになってきた

その日の帰り、



いつのものように

手を握ってなかなか離してくれないショウさん。



その手をググっと引き寄せられて

ショウさんに密着させられた。


これもけっこういつものことなんだけど、


その日は

「もういい。ショウさんは。

甘えさせすぎた。しばらく会わないでおこう。」

って思ってたので

この日は甘えさせたりせずに早く帰ろうって思った。


ちょっと抵抗して

「じゃぁね」って手を離そうとしたけど・・・



ショウさんの手はいつもより 力が強い。

あれ? ほんとに離してくれない・・・。

おいー。


ショウ「あのさ。

    ずっと言わなきゃって思ってて。。。」


私「ん?なにを?」


ショウ「マーカちゃん。俺と付き合って  ってこと・・」


きたー。告られてんじゃん、わたし。


「・・・・・・。」


さっき、もうショウさんはいいやって思ったばっかりなのにーー。

どうしよう。


「でも、時間をつかってくれて考えてくれればいいからさ。

しばらくたったらまた言うから。」


「うーん・・・」



「ずっと言おうと思ってて。最近そのことばっかり考えてて。」



胸がキューンときた。

あの沈黙の間、様子がおかしかったここ数日間、

いつ言おう とか なんて言おう とか

そんなことを、このひとは考えていたのね。



「しばらく、時間をおいて考えてくれる?」


「ううん。時間はいらない。

わたしからも言いたい。」


「わたしと、付き合ってください。」



ショウさんは何も言わずに抱きしめてきた。いつもより強い力でギューって。


そんで

ずっと言おうと思ってたんだ、ここんとこずっとそのことばっかり考えてて・・

ってこと、

最初にマーカちゃんと対バンしたときから 好きだったかもしれない

って、わたしの第一印象を話しはじめて、

わたしが最初、冷たい反応しかしなかったこと、

でも誘えば来てくれて

メールの返信もくれるようになって

電話もいっぱいして

それでもマーカちゃんは俺のところに来てくれるか不安だった

って・・・ 私を抱きしめながら ずっとひとりで語ってた。

わたしは力いっぱい抱きしめられながら

ちょっと苦しいとか思いつつも相槌をうった。



その後、キスされそうになったけど、拒否った。(笑)



だって、わたしは恋愛初心者。

ファーストキスは数年前だったけど、あれは事故的なもんだったし・・・。



ショウさんは

「マーカができるようになるまで待ってる」

って言ってくれた。



わたし、ショウさんと付き合うことになったんだ。

嬉しかった。

これで素直に好きっていう気持ちがこみ上げてくる気がした。

彼女じゃない存在で

しばらく仲良くしてよーっと

思ってからも


ショウさんの発言とか行動でドキドキでしてしまうことが多かった。



「俺からなるべく連絡とらないようにしようって思ってても

心は正直だ。心はマーカちゃんに会いたいって言ってる。」


とか。

今見ると笑っちゃうようなメールだけど。



わたしもいじわるだからさ、

こっちからメールしたりしないんだ。

しばらく連絡を途絶えてみると、

2日が限度みたいだね。

2日後にこんなメールが来たり・・・


「待ってるのって苦にならないけど、

いくら待ってても来ない時もあるし、

どこか別のところに行ってしまった・・・

なんてこともあり得るよなー」


とか。



「俺っていう人間を深く知られると

マーカちゃんに嫌われそうな気がして怖い。」



そんなネガティブなメールが来たかと思えば



「****(わたしのバンド名)のドラマー、マーカさん

今度俺とプライベートで会ってくれませんか?

OKだと80%くらいの勢いでイケルと思ってしまいますけど。」



いつもプライベートで会ってるんだけどな~ って返信すると



「それじゃぁ、80%イケルと思っちゃうよ。それでもいいの?」


って。

何がイケルんだよ・・・(笑)



手をにぎられたり・・・

ハグがやたら長かったり・・・

キスされるんじゃないかってぐらい顔が近かったこともあって、

わたしはそんなショウさんの行動にいちいちドキドキしてしまう。

いやー、わたしは

彼女じゃない、友達なんだけど、甘えさせてあげる そんな存在なんだから

って思ってても。




そんな日々がしばらく続いて

あるとき電話してると

急にショウさんが


「ねぇ、もうわかるよね。」


って言いだして


「すごく分かりやすくしてるじゃん。」

「そろそろ、いこうと思ってるんだけど。いい?」


最初は なんのことー?って分かんないふりしてたけど、

分かってた。やっぱ私のこと好きなんでしょ。今以上の関係になりたいんでしょ。


でもマーカちゃんはいつも誰にたいしても

こんな感じなの?

そうやっていろいろ考えるといってはいけないかもしれない

って思う。俺、根性ないからさ。」


・・・。

うー。いつもエラそうなことばっかり言ってるくせにーー意気地なしー



「わたしは誰にでもこんなんじゃないよ。

ショウさんだから、毎日でも会えるし、電話もできるの。

ふつう、こんなことしないんだよ。

そっか。 わかった。 80%じゃぁ行けないってことね?

じゃぁちょっと待ってて。

わたしから行くよ。」


「うん、わかった。待ってる。」



あー、しまった。わたしから行くよなんて言っちゃった。

ついつい男気を出してしまう私・・・。


まぁいいか。


わたしは、いじわるなので

「わたしから行くよ」なんて言ったけど

このまま けっきょく何もしないで今までどおり会ったり電話したりの

日々を続けました。

無責任発言・・・。


ショウさんは

いまだ続くこの元カノからの連絡に

疲れきってるみたいだった。



そうか。。。

ショウさんはもう 彼女とかそーいう存在に

懲りてる。疲れてる。

もーそんな重い存在はいらなくって、

わたしみたいに 彼女でもない存在が欲しいんだ。

たまに抱きつけたり、肩にもたれかかれたり、

彼女でもないのに、そんな甘えがOKな存在が欲しいんだなー。



ちょっと 複雑・・・。



わたしはショウさんのこと

好きなのかなぁ。



このままの この彼女じゃない存在を提供する関係でいいの?



自問自答。




まぁ、いっか。

そのほうが いいかもしれん、わたしも。




正直、男との出会いはいっぱいあったし

ショウさんが本気で好きなわけでもないし、

ただかっこいいって思ってるだけの人だし、

わたしのまわりには他にもかっこいい存在の人が

何人かいるわけだし、

彼女になりたくないわけでもないけど

こーいう、たまに会っては肩を貸してあげる関係ってのもいいかも

なんて思った。




あいかわらず

毎日ショウさんからは連絡があって、

わたしは時間の許す限り、ショウさんに会って、

会えない日は

「声が聞きたい」

って電話があって



それでも わたしは

彼女じゃない存在を抵抗もなく続けていったの。


このひとが、そういう存在を求めているのなら、

私がその存在になってあげよう って思ったの。

その帰り、


ショウさんは ふだん滅多にしないのに

「こんな話、聞きたくないかもしれないけど・・」


って元カノジョの話をしだしたんだよね。


自分はもう その気はないけど

日本まで追いかけてきてしまって・・・

毎日、電話もかかってきて、

なんで私たちは終ってしまったの? とか

なんで元どおりになれないの? とか

そんな電話が毎晩かかってきて

ヒドイことも言われて

精神的に もう疲れた・・・


って。


その元カノと別れた原因はショウさんにあって

それで彼女が傷ついてしまったから

ショウさんは責任を感じてるらしい。


元カノジョのその人も

いまだ心の傷は消えなくて、精神的に病んでしまってるらしい。

それで毎晩ショウさんに電話してきて

「どうして、あなたは私から去ってしまうのよ」

みたいなことを何時間も話すんだとか。


でもそれで

元カノジョのその人の気が少しでも鎮まるなら、

ってことで ひたすら電話をうけつづける。



わたしとの

その帰り道にも

元カノからの電話はあった。


ショウさんは

「また 後でかけなおすから」

って言ってた。


彼女は怒ってるみたいだった。

ショウさんは、その電話があってから

ちょっと落ち込んだような暗い表情になった。

「ところで平日マーカちゃんに会いたくなったときは

どうしたらいい?」


ショウさんからこんなメールがきた。




そんな流れで、

平日はよく 仕事終った後に お茶でもしようって

誘われるようになった。



帰り際、

ショウさんは

駅で別れるときに

ギューってハグをしてくれるんだ。


こんなの・・・

付き合ってもいないのに。

ただの友達なのに こんなにハグばっかりされるのは

おかしいよね。


やっぱショウさんはさ、

わたしのこと・・

好き?



いやいや。



まだわかんない。

世の中、こーいう男っているもんだからな。




それから

約束してた 蛍を見に行くっていく週末がやってきた。



わたしが車をだす。

だってショウさん、車持ってないんだもん!

バンドマンなのに!

機材運ぶの大変だろーに!


ショウさんの車は ショウさんが渡米する前に

(ショウさんはずっとアメリカにいたんだ。)

売っちゃったっぽい。



もしかしたら・・・

私、高級車に乗ってるし。足代わりに使われるのかな。

私に思わせぶりな態度をしてくるのは

私をつなぎとめとくため??



なんて考えながらも

わたしはショウさんを迎えに行き、

山道を走り、

ショウさんと2人の小旅行にワクワクする。


蛍で有名なその町は

ホタルまつりでにぎわってる。

人もいっぱいで、

隣にいるショウさんに思わず腕が触れちゃって

ドキドキする。

2人でこうやって歩いてると

カップルに見えるんだろうなきっと

でも付き合ってないんだよね~

なんて考えちゃったりなんかしながら

夜までその知らない町を2人でぶらぶらする。



蛍で有名なその蛍生息地は

やっぱりスゴかった。

今年は蛍の発生が遅れてるらしかったけど、

それでも予想以上のホタルの光。

うわ~ すごーーーい と

ぼーと見とれちゃうのね、ホタルって。


どれぐらい見てたんだろう。

最初は人もうじゃうじゃいたんだけど、

夜も更けていくと 人は少しずつ減り・・・



なんとなく予感はしてたけど、

ショウさんが後ろから抱きしめてきた。

わたしの髪に顔をうずめたりしながら

しばらくして


「いや?」

って聞いてきた。


「ううん。いやじゃないよ。

でもね、緊張するよ。」


しばらく無言で

後ろからずっと抱きしめられたままだった。



わたしはもう。

頭がクラクラするほど 

ずっとドキドキしてた。