「8番出口」(2025/東宝)
監督:川村元気
原作:KOTAKE CREATE
脚本:平瀬謙太朗 川村元気
二宮和也 河内大和 浅沼成 花瀬琴音 小松菜奈
おすすめ度…★★☆☆☆ 満足度…★★☆☆☆

大ヒットしたゲームを映像化した作品というだけで興味はいまいち。
主演の二宮和也についてもあまりいいイメージはないし、このままスルーもありかなと思っていた。
それでもタイムテーブルが合ったタイミングでの鑑賞となったのは、一にも二にも女優小松菜奈をスクリーンで観たかったから、それ一択だったかもしれない。
で、小松菜奈は…あーそういうことね。
地下鉄通路の8番出口を目指す無限ループという以外は、あえて事前情報は最小限にしておいたので、ストーリーが二宮和也から河内大和へと展開する中で、次は謎の女で出てくるかと期待したのが浅はかだった。
二宮和也演じる一人の男が地下鉄に乗っている。
男はイヤホンでラヴェルのボレロを大音量で聴いているが、車内で赤ん坊を抱えた若い女性がサラリーマンに絡まれているのを目撃する。
片方のイヤホンを外すと車内に響く赤ん坊の泣き声にうるさいと激高するサラリーマンの怒鳴り声。
再びイヤホンを戻して見て見ぬふりをする男。
やがて電車が駅に停まって人の流れに押されるように反対側のドアからホームに降りる。
そのまま駅の長い階段を上り始める男。
そこにかかってくる電話。
それは別れた彼女からで、いま病院にいて妊娠が分かったと告げる。
その瞬間から男のいつもの日常が狂い始める。
長い階段は途中で別の路線のホームを経由して改札階へと進む。人波にもまれるようにして歩くが途中でぶつかられてイヤホンとスマホがフロアに飛ぶ。
その間も電話の向こうの彼女は話し続けている。
この途中でホームを経由する長い階段にはなんとなく見覚えがある気がして、どこの駅だったか?と映像を観ながら一瞬意識が現実に引き戻される。
ちなみに地下鉄車両のデザインから有楽町線と副都心線ではないかと想像したが、あとで調べたら千川・要町・東新宿が該当するらしい。
この中で自分が利用したことがあるのは東新宿だけなのでその記憶が上書きされたか?
今振り返るとこうしてスクリーンに展開するフィクションの世界を観ながら、すでに自分の頭の中で現実のイメージが交錯して虚実入り混じっていた段階で、この作品に取り込まれていたのかもしれないとふと思った。
男は喘息持ちで急ぎ足で構内を移動する中で息苦しさから何度かバッグから吸入器を取り出して息を整える。
その間もスマホの通話は続くが、地下の電波の関係で受信状態も悪くなり途切れ途切れになる彼女の声。
子どもができたという彼女の言葉にどう返事をするべきか迷いつつ、いつの間にか構内の見知らぬ通路に紛れ込んでしまう。
ここから8番出口を探す迷宮での無限ループが始まる。
この男の彼女への答えの逡巡がこのあとの展開のすべてなのだろう。
レビューとかを見ているとゲームの映像化という意味ではよくできているらしい。
なるほどあの歩く男のおじさんもゲームのキャラクターの再現性は高そうだ。
だからといって、ゲームを知らなければわからないでは映画化する意味はない。
映画化する以上は初見でその世界観に誘うだけのものは最低限なくてはならない。
そういう意味ではこの導入部はよくできていると思った。
ただし後半の展開に関連するという男がボレロを聴きながら見ていたスマホの画面情報まではチェックできなかった。
その後半、奇怪なネズミのような映像が突然スクリーンを支配して一気に単調な映像から観る側のループ意識を混乱させていく。
さらに8番出口を目指す男の前に突然大量の泥水が流れ込みあっという間にのみ込まれていく。
この悪夢のような展開に唖然とするがふと少年の悪夢を映像化したことで知られる「ファンタズム」という映画を思い出した。
先のスマホの情報も含めて既視感とか現実の視覚情報が映像となって具現化される悪夢の中の没入感。
その「ファンタズム」はいわゆるカルトムービーの系譜にも含まれるかもしれない。
そしておそらく「8番出口」も作りようによっては十分に日本のカルトムービーになるだけの下地はあったと思う。
いやむしろその方がこの作品にとっては幸福だったのかもしれない。
しかしそれを不可能にしたのは大人気グループ嵐のメンバーにしてこれまでも様々な話題作に主演してきた二宮和也を主演に据えたこと。
監督である川村元気に関しては知る人ぞ知るという日本映画界の奇才の一人だとしても、あえてメジャー作品に舵を切らず、このゲーム作品の実写化ということだけに拘っていたら、また違うアプローチでこの作品と接する映画ファンもいたのではないか。
実際、自分も二宮和也主演というだけで二の足を踏んだし、彼のこれまでの実績や実力は認知しつつも、俳優としてはいまひとつ好きになれない存在ではあった…そういう意味ではやはり苦手な元SMAPの草彅剛にも通じるものがある。
いずれにしてもこの作品のレビュー等に多く見られる『ニノだから観た』とか『ニノの演技がうまい』とか、そういったアプローチの感想が多く見受けられた。
それは川村元気が求めていたものではないだろうし、結果としてメジャー作品にしたことで逆にチープなホラー作品と一緒くたにされてしまった…そもそもホラーじゃないし。
まあ後から振り返るといろんな気づきがあったり、各シーンで様々な考察ができる作品ではあったけれど、エンターテインメント作品として完成していたかといわれれば微妙。
一方で無限ループを映像化したあの地下通路の迷路のような構造は見事だったし、どこでカット割りしたのかも含めていろんなことを考えてしまった。
おそらく二宮和也のバストショットあたりで切り換えたのだろうけれど、実際にはスタジオにセットを組んだということをあとから知ったものの、それでもどうやって撮影したのか最後まで興味が尽きなかったのは事実。
日本を代表する映画女優として大きな期待をしている小松菜奈は短い出演シーンだった。
近年の結婚出産を経てここしばらくはスクリーンで観る機会が減ってしまった。
直近の「わたくしどもは。」も地元では観る機会がなかったのが残念。
改めて次回作の情報に期待したい。
いずれにしても作品本来のゲーム性と映画化にあたっての人間ドラマ部分の融合という意味では、少し展開が強引な作品になってしまったのは否めないし、シンプルにゲーム性に特化した映画だったらまた違ったものになったのかもしてない。
ローソン・ユナイテッドシネマ前橋 スクリーン3