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MCNP-media cross network premium/RENSA

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出会いの連鎖-RENSA-を求めて。

メディアの旅人はあなたです。

「ブルーボーイ事件」(2024/日活=KDDI)

 

 監督:飯塚花笑

 脚本:三浦毎生 加藤結子 飯塚花笑

 

 中川未悠 前原滉 中村中 イズミ・セクシー 渋川清彦

 安藤聖 岩谷健司 梅沢昌代 山中崇 安井順平 錦戸亮

 

 おすすめ度…★★★★☆ 満足度…★★★★☆

 

 
 
 
 
実際にあった「ブルーボーイ事件」をベースに1960年代の日本における性差別の実態を描いていく社会派作品。
 
地元前橋がロケ地にもなっていることがあって、珍しく全国公開のタイミングで地元のミニシアターで公開された。
 
初週には監督による舞台挨拶回もあったけれど、結局タイミングを逸して上映最終週の週末に駆け込んだ。
ちなみにちょうどポイントが貯まっていたので無料鑑賞だった。
 
一部のメディアでも取り上げられた話題作だということもあってか、日曜昼前の上映回では久々に座席が半分近く埋まっていたのではないだろうか。
 
ヒロインを演じた中川未悠は新人で実際にトランスジェンダーでもあるとのこと。
 
LGBTのことは概念としては理解しているつもりだけれど、自分の周りにそういう対象の人はいなかったし、はるな愛などメディアで人気者になっていることで知るレベル。
 
むしろ実際に身近にそういう人たちがいたら、おそらく興味の対象として意識してしまって、その本質について考えることもないかもしれない。
 
それほど当たり前の男女という性別のみの社会で生活しているので理解しようという思考も生じないだろう。
 
1965年、東京五輪に沸く東京で警察はセックスワーカーの取り締まりに力を入れていたが、ブルーボーイと呼ばれる性別適合手術を受けた者たちは男性として扱われ、摘発の対象外となっていた。
 
警察としてはなんとか取り締まりたいこともあって、性別適合手術を積極的に行っていた赤城医師が優生保護法違反の罪で逮捕される。
 
争点は手術そのものが治療のためであるかどうかにあり、その証人としてかつて手術を受けて女性になったゲイのアー子が証言台に立つ。
 
しかしセックスワーカーとしての一面を追求する検察側の執拗な証人尋問に次第に追い詰められていくアー子は、さらなる偏見の中で暴力沙汰に巻き込まれ命を落とす。
 
一方弁護側の狩野弁護士もまた性別適合手術そのものが治療であるという争点から、当初は性転換は精神的な欠陥であると指摘するなど誤った方向性で迷走する。
 
女性として喫茶店で働きながら一緒に暮らすサラリーマンの恋人との生活を大事にしたいサチは、証人として裁判に臨むことを断るが、かつて共に働いたゲイ仲間やアー子との再会を経て、ついに証言台に立つことを決心するのだが…。
 
サチを演じた中川未悠の新人ながら存在感のある佇まいと周囲を固める演技派のキャストが相まって、法廷劇としても締まったドラマが構築できた。
 
特に時田検察役の安井順平の一貫した姿勢はあの時代の性差別の実情をよく表していたと思うし、狩野弁護士を演じた錦戸亮も戸惑いながらも現実と向き合う姿が印象に残った。
 
ちょうどこのタイミングでニュースとして「同性婚訴訟」について認めないことを合憲とする判決が11月28日に東京高裁で出た。
一般的には認めないのは違憲とする判決が優勢ではあるものの、現代においても引き続き法律的な問題が残る。
 
また優生保護法をめぐってはハンセン病の関連で国家賠償訴訟のニュースを目にした程度だったけれど、性差別の中でもその法律の是非が問われていたのは知らなかった。
 
オープニングで往年の日活のタイトルクレジット、作品の時代背景と合わせた演出がよい。
 
ラストはサチが求めるただ幸せに暮らしたいだけというメッセージが具現化される映像で終わる。
 
劇中のサチに心から「しあわせになってほしい」と思った。
 
前橋シネマハウス シアター0
 

「佐藤さんと佐藤さん」(2025/ポニーキャニオン)

 

 監督:天野千尋

 脚本:熊谷まどか 天野千尋

 

 岸井ゆきの 宮沢氷魚 藤原さくら 三浦りょう太 山本浩司

 前原滉 八木亜希子 中嶋渉 佐々木希 田島令子 ベンガル

 

 おすすめ度…★★☆☆☆ 満足度…★★★☆☆

 

 
予告編で岸井ゆきのが出ているのを知って興味を持った作品。
ただしどうしても観たいというわけでもなくタイミングが合えばと思っていた程度。
 
ある夫婦の22歳の出会いから37歳までの15年間をそれぞれの感情のすれ違いを追いながら描いていく。
 
大学で出会った佐藤サチと佐藤タモツは意気投合し同棲を経て結婚する。
しかし司法試験合格を目指してチャレンジし続けるも合格には至らぬタモツに対して、彼を応援するつもりで一緒に勉強を始めたサチが先に司法試験に合格してしまう。
やがて二人の間に子供ができて同棲から結婚という新しい人生のステージが始まる。
 
子育てしながら弁護士の仕事を続けるサチと司法試験の勉強の一方で塾講師の仕事を続けるタモツ。
多忙を極め仕事優先になっていくサチの言動に苛立ちを覚えるタモツだが、ついに二人の感情が衝突したことでタモツが合格したら別れるという決断に至る。
 
佐藤という苗字は日本で一番多いらしい。
日本のどこにでもいる佐藤さんと佐藤さんのカップル。
その二人に子供が生まれ家庭をもつ。
しかし互いの生活のすれ違いから価値観の変化から生まれて…。
 
特に大きな事件が起こるわけでもないけれど、ちょっとずつ生じたすれ違いが二人の人生を変えていく。
 
きっと日本中のどこでも起こり得ることなんだろうし、実際に家庭を持ったことのない自分にはなかなか理解できないニュアンスはありそう。
 
ストーリーは弁護士のサチが離婚訴訟の担当となる37歳の現在から始まり、タモツとの22歳での出会いから、出産や司法試験合格など人生の転機となる時間をフラッシュバック風に切り取っていく展開は直近の「君の顔では泣けない」と被る。
 
22歳の学生時代のサチとタモツの出会いのきっかけとなる自転車置き場での将棋倒しトラブルが、大人になってからも繰り返されるのも面白い。
 
岸井ゆきのはけして派手なヒロインタイプではないけれど、与えられた役どころをしっかり演じられるという部分もあってずっと気になっている女優さん。
 
話題になった「ケイコ目を済ませて」(2022)は未見だったけれど、最近CS番組で録画できたので改めてチェックするつもり。
 
残念だったのは自分の体調がいまいちだったのか前半で少し睡魔に襲われたこと。
もう少しストーリーにメリハリがあったら違ったかも。
 
けして楽しい映画ではないけれど、観る人によっては自分の人生とだぶらせながら振り返るのもいいだろう。
 

 MOVIX伊勢崎 シアター4

 

「秒速5センチメートル」(2007/コミックス・ウェーブ)

 

 監督:新海誠

 原作:新海誠

 脚本:新海誠

 

 声の出演

 水橋研二 近藤好美 花村怜美 尾上綾華

 

 

小学生の明里…

 

「ねえ秒速5センチなんだって 

 桜の花の落ちるスピード 秒速5センチメートル」

 

高校生の花苗…

 

「時速5キロなんだって 南島の打ち上げ場まで」

 

そして大人になって理紗から届いたメール

 

「あなたのことは今でも好きです。

 でも私たちはきっと1000回もメールをやりとりして、

 たぶん心は1センチくらいしか近づけませんでした。」

 

いつも距離感を明示するのは女性の方、やっぱり男はいつまでも子供なんだ。

 

先に観た映画「君の顔では泣けない」でも痛切に感じたこの変らない真理。

 

そんな男の未練がましさやもどかしさやいつまでも前に進めない感じ、世の男性諸氏は少なからず身に覚えがあるのではないだろうか?

 

実写映画「秒速5センチメートル」を観る前にチェックしておこうと思ったオリジナルのアニメ作品。

ちょうどフジテレビの深夜枠(関東ローカル)でオンエアされたのを録画したもののタイミングを逃したままだった。

 

結果として先に実写版を観てからのアニメ版を観ることになったけれど、個人的にはこれで正解だったかもしれない。

 

アニメ版は3つの短編を並べるという構成になっていて、第1話「桜花抄」で小中学生時代、第2話「コスモナウト」で高校時代、第3話「秒速5センチメートル」で社会人となった今とそれぞれを別々のエピソードとして描いている。

 

実写版はアニメ版では具体的には描かれていない大人になってからの二人のエピソードを中心に構成され、間に種子島の高校時代のエピソードを挟んで、最終的に中学時代の約束の日を大人になった今と重ねることでドラマチックなストーリーに昇華していた。

 

自分は新海誠マニアでも何でもない。

「君の名は。」は今でもよく分からないし、「天気の子」は未見のままだけど、直近の「すずめの戸締り」でようやく嵌ったという人。

 

新海誠作品の魅力はアニメーションに実写並みの背景描写を取り入れることで、実写では描き切れない心象風景を映し出すことだというのは何となくわかっている。

 

それでもアニメ作品に求めることは実写並みのリアリティがすべてではないと思うし、アニメだからこそ描き出せる世界観はディズニーやジブリの例を出すまでもなく様々な表現スタイルがあっていい。

 

それでも新海誠ワールドというのは確かにあって、この作品が2007年の発表だということを考えるとやはり卓越したクリエイターであることは間違いない。

 

実写版との比較をあえてすると先に述べたように時間軸が分かりやすくなっている。

 

桜の花が舞う通学路での貴樹と明里の「秒速5センチメートル」の会話から始まり、小中高校と時代が進み、離れ離れになった貴樹と明里のそれぞれの時間があり、明里は先に明るい未来へと踏み出し、貴樹はまた別れを経験する。

 

60分程度の中編作品なのに情報量の多さはなかなかだと思う。

特に第3話としてクレジットされる「秒速5センチメートル」は、山崎まさよしの往年の代表曲″One more time, One more chance”を全面的にフューチャーしたMVのような構成ながら、その短い映像の中でそれぞれの人生の場面が見事に切り取られている。

 

実写映画「秒速5センチメートル」ではどちらかというと大人になった二人の今がメインになっているので、主人公の思い出とともにあの頃が甦るといった味わいがある。

 

どちらが好きかといえば先に観てしまった実写版ということになるけれど、日本のアニメ作品がかつてのエンタメ系一辺倒だった時代を経て、確実に次の表現段階に入ったと言えると思うし、ディズニー・ピクサーのようにデジタルアニメが全盛の時代にあって、まだまだ日本アニメならではのぬくもりを感じられる抒情的な作品に期待したい。

 

 2025.10.25 フジテレビ O.A.