「青春18×2 君へと続く道」 | MCNP-media cross network premium/RENSA

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「青春18×2 君へと続く道」

 ‟18×2 BEYOND YOUTHFUL DAYS”

  (2024/日本=台湾/ハピネット・ファントム・スタジオ)

 

 監督:藤井道人

 脚本:藤井道人 林田浩川

 

 シュー・グァンハン 清原果耶 ジョセフ・チャン

 道枝駿佑 黒木華 松重豊 黒木瞳

 

 おすすめ度…★★★★☆ 満足度…★★★★☆

 

 
台湾のカラオケボックスで流れる♪恋愛レボリューション21。
台湾の映画館で上映される岩井俊二監督「Love Letter」。
台湾の列車の中で聴くミスチル。
 
18年前に台湾で出会った4つ年上の女性アミとの思い出に浸りながら、日本の鉄道を旅するゲームクリエイターのジミー。
 
最初に映し出されたのは成田経由で上野駅か?
だとすれば上野東京ラインから東海道線経由で藤沢から江ノ電で鎌倉高校前か?
さらに鎌倉駅からJRを乗り継いで夜の松本にたどり着く。
 
翌日は飯山線で雪景色の中に降り立ち、さらに新潟の長岡駅へ。
ルートとしては長岡から小出に出て、只見線でアミが生まれ育った只見駅に向かうことになる。
 
映画のメインタイトルは「青春18×2」だから、青春18きっぷの意味合いも含んでいるのかな。
 
後半は台湾でジミーとアミが過ごした時間をアミの視点で伏線回収していく。
 
最初からストーリー展開は予想できるし、「余命10年」のような重さもないので、優しいラブストーリーとしてさらっと観られるだろう。
 
そう、今回の藤井道人監督の演出はものすごく優しい、優しすぎるほど優しい。
 
台湾の珠玉の夜景であったり、台湾と日本双方のランタン祭りの模様だったり、トンネルを抜けた先の雪国だったり、雪景色の中を走るローカル線の遠景だったり、そういったすべての映像が優しくて心地いい。
 
ジミーが旅の途中で出会う人々…やたらフレンドリーな道枝駿佑の一人旅の青年、ランタン祭りの会場に連れていく黒木華のネカフェの店員も、只見でアミの家まで送り届ける松重豊のおじさんも、そしてジミーを迎え入れるアミの母親黒木瞳も、みんな優しくて、それだけで幸せな気分になる。
 
そして18年前に台湾でジミーと出会うバックパッカーのアミは清原果耶。
 
珍しくちょっとお姉さんの佇まいの彼女がとても自然体で、改めてこの子はスクリーン向きの女優だなと再確認した。
 
アミの旅はいわゆる自分探しではなくて、いま生きる自分を認めるためのもの。
 
人はよくある傷心旅行だとか、人生をやり直す旅だとか、あるいは逃避行の旅だとか、いちいち理由をつけて旅をしたがる。
 
旅そのものが自分の人生の一部に過ぎないこと。
生きることは旅すること。
 
藤井道人は祖父が台湾の方だそうだ。
つまり自分のルーツを形を変えて映像に刻んでいるのだろうか。
 
ちょっと疲れた時に肩の力を抜いて、自分自身の青春時代もほんの少し重ね合わせながら観るのがいいかもしれない。
 
ちなみに劇中で冒頭のシーンが流れる「Love Letter」は1995年の作品で台湾での公開は翌年のこと。
カラオケで歌われる「恋愛レボリューション21」をモーニング娘。がリリースしたのは2000年でその翌年に台湾でカヴァーされているようだ。
 
18年前という設定の起点がどこなのかは明確にはされていないけれど、映画はリバイバル上映、カラオケはスタンダードとして歌い継がれているということだろう。
 
エンディングのミスチルの曲もいい。
ちゃんと歌詞もクレジットされるので映画のイメージと重ねて余韻に浸ることができるだろう。
 
 

 ユナイテッド・シネマ前橋 スクリーン3