「枯れ葉」 | MCNP-media cross network premium/RENSA

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「枯れ葉」
 “KUOLLEET LEHDET”
  (2023/フィンランド=ドイツ/ユーロスペース)
 
 監督:アキ・カウリスマキ
 脚本:アキ・カウリスマキ
 
 アルマ・ポウスティ ユッシ・ヴァタネン ヌップ・コイヴ
 ヤンネ・フーティアイネン マッティ・オンニスマー
 
 おすすめ度…★★★☆☆ 満足度…★★★★★
 

 
 
映画鑑賞アキ・カウリスマキの名前はもちろん知っている。
一本くらい過去に観ているかと思ったら、どうやら今回の「枯れ葉」が初アキ・カウリスマキだったらしい。
 
今のようなシネコンシステムが定着してから、巨大なスクリーンでエンターテインメント性の高いハリウッド映画を楽しむことがレジャーとして確立し、その一方でアート系やドキュメンタリー映画などに一般客が触れる機会がなくなった。
 
当時は定期的な映画鑑賞が自分の生活の一部となっていたので、特に意識することなくミニシアター系の作品もエンタメ系の作品も観ていたけれど、次第にシネコンのタイムテーブルがハリウッド映画やディズニーや人気コミックのアニメ化作品に埋め尽くされるようになった。
 
今では一部のシネコンでラインナップに従来のミニシアター系作品が並ぶことはあっても、上映回数は最初から少なくて、しかも数週でモーニングショーの時間帯のみになってしまい、結局そのまま見逃すパターンが多いのも事実。
 
80年代から90年代にかけてのいわゆるミニシアターブームの中で、たくさんのヨーロッパ映画が上映される機会が増え、中にはロングラン上映やミニシアターから全国展開というようなヒット作品も生まれた。
 
そもそも自分が映画に目覚めた頃は、外国映画といえばハリウッドだけでなく、フランス映画やイタリア映画も当たり前のように公開されていたし、アラン・ドロンやジュリアーノ・ジェンマなどのヨーロッパの俳優が映画雑誌のグラビアを彩っていた。
 
現在前橋シネマハウスとしてそうしたミニシアター系作品の受け皿になっている映画館も、当時は前橋テアトル西友という大手系列のミニシアターだった。
 
レオス・カラックス「ポンヌフの恋人」、ヴィム・ヴェンダース「ベルリン・天使の詩」、テオ・アンゲロプロス「シテール島への船出」、ジャック・リヴェット「美しき諍い女」、ジョエル・コーエン「バートン・フィンク」…監督の名前を思い出すだけでもワクワクしてくる。
 
ミニシアター系作品の特徴として、映像作家それぞれの映像スタイルが確立していて、観客はストーリーや話題性だけではなく、自分の好きな映画監督の醸し出す世界観を求めて足を運ぶ。
 
今回初めてのアキ・カウリスマキ監督作品を観て、あーあの頃に出会っていたかったなと一連の作品をリアルタイムで観てきた人をうらやましく思った。
 
ここ数年の傾向として映画監督で映画を選ぶというシチュエーションが少なくなった。
むしろジャンルであったりディズニーであるとかブランド力が優先しているのが現実で、あのスピルバーグでさえ名前だけで観客を呼べる存在ではなくなった気がする。
 
アキ・カウリスマキの世界観を熟知していない自分ですら、この「枯れ葉」を観て過去の監督作品を改めて観てみたくなった。
そういう喜びというか自分の好きな作風だったり、色調だったり、カット割りだったりを楽しむことを今のシネコン全盛の時代に求めること自体がタブーなのはわかっている。
 
音楽が個々に持ち歩くものになって、ヒット曲や流行歌の概念が変わったように、映画は逆にシネコンの大きなスクリーンでみんなで一緒に楽しむものになって、その話題性を各メディアで共有することでさらに集客につながっていく。
 
それぞれのアプローチでスクリーンと向き合う時間はサブスク時代では後回しにされ、今また別の形でミニシアターの存在が大切になってきている気がする。

「枯れ葉」は男女のすれ違いの物語。
二人の自宅にはテレビやネットすらない。
彼女は帰宅するとラジオをつけるが、流れてくるのは甘美なメロディではなく、ロシアのウクライナ侵攻を伝えるリアルなニュース。
 
カラオケバーで偶然出会った名も知らぬ二人は映画館でデートを楽しみ、彼女アンサは彼ホラッパに電話番号のメモを手渡す。
そのメモがポケットからこぼれ風に舞ったのを知らずに家路につく彼。
 
ホラッパからの連絡を待つアンサ。
映画館の前でのすれ違いからの再会までの時間がちょうどいい。
 
ようやく再会した二人だが、その後仲違いがあって、ホラッパが事故に遭って…またすれ違い。
 
フィンランド映画は初めてかな?
心地よい大人が楽しむ短編映画のような味わい。
 
実はこのあとハシゴして「市子」を観てしまったので、そのインパクトが強すぎて、この「枯れ葉」のラストシーンが思い出せなくて…でも好きな映画には間違いない。
 
自分の見間違いか勘違いか、前半で劇中の事務所内に掲げられたカレンダーの年が2024じゃなかったかな?
 
そのあとにロシアのウクライナ侵攻のニュースがラジオから聴こえてきて…その現実を受け止めていいものか混乱した。
 
また機会があれば観なおしたい映画だけど難しいかな。
 
 前橋シネマハウスシアター0