「サクラダリセット 後篇」(2017/ショウゲート)
監督:深川栄洋
原作:河野裕
脚本:深川栄洋
野村周平 黒島結菜 平祐奈 健太郎 玉城ティナ
恒松祐里 岡本玲 岩井拳士朗 矢野優花 奥仲麻琴
吉沢悠 丸山智己 中島亜梨紗 八木亜希子 及川光博
前篇が面白かったので後篇も楽しみにしていた作品。
超能力者たちが暮らす咲良田市を舞台にしたSF青春ミステリ。
一応作品の冒頭で前篇のあらすじを簡単にフォローしているけれど、残念ながら後篇だけではなかなか理解づらいかもしれない。
前篇のときも感じたことだけれど、相変わらず深川監督の目線が優しくて、登場人物たちの誰一人として突き放さないのがいい。
前篇を観た感じだと後篇もそれなりのボリュームがありそうだと思ったけれど、いやいや前・後篇でも足りないくらいの圧倒的な情報量で、ある程度前篇を理解したつもりの自分でも途中で咀嚼しきれなくなりかけた。
そもそも前篇を受けての伏線も細かく張られていて、これは無駄なシーンでは?と思うような映像や回想シーンなども全部意味を持ってくるので、観ている方も気が抜けない。
それでもけして肩に力が入るような作風ではないので、前述の深川監督の優しい目線に寄り添っていられれば、自然と登場人物たちの思いに身をゆだねることもできそう。
前半は前篇でケイと美空たちによって2年前の死から復活した薫が中心に展開する。
彼女がなぜ甦ることになったのか、そこには超能力者たちを監視する管理局の浦地によるすべての能力をリセットするという陰謀があった。
その浦地の策略から再び元の咲良田市を取り戻そうとするケイと仲間たちの戦いが後半の中心となり、仲間たちの能力を総動員してのケイの最後の作戦が最大のヤマとなる。
とにかく情報量が多いだけに、細かく見ると破たんもあるのだけれど…2年間の記憶を消去されただけの美空の髪がなぜ伸びたのか?…それでもSF的な映像でごまかすことなく、きちんと対話で結論を出そうとする演出は好感が持てます。
登場人物すべての能力がきっちりストーリーとリンクしていくので、そういう部分でも見どころは多い作品で、三部作にしてもいいのではと思うくらいの濃密な時間が過ごせました。
設定は学園ドラマ風でありながら前・後篇を通して青春のキラキラした映像が皆無で、青春ミステリを期待すると空振りを喰らいますが、最後に黒島結菜のキュートな表情を見られたので良しとします。
そういえば前篇ではいまいち存在感が薄かった岡本玲の見せ場もしっかりありました。
あと平祐奈のキャラがあの独特な声質とかもあってダメな人にはダメだろうなと改めて実感。
でもこういうキャラの演技を求められての起用でしょうし、胸キュン系女優とは一線を画す意味でも、これからも観る人にとっていい意味で不協和音的な女優になっていってほしいと思います。
プレビ劇場 ISESAKI シネマ3