「駆込み女と駆出し男」 | MCNP-media cross network premium/RENSA

MCNP-media cross network premium/RENSA

音楽(Music)・映画(Cinema)・小説(Novel)・舞台(Play)…and...

出会いの連鎖-RENSA-を求めて。

メディアの旅人はあなたです。

「駆込み女と駆出し男」(2015/松竹)

 監督:原田眞人
 原作:井上ひさし
 脚本:原田眞人

 大泉洋 戸田恵梨香 満島ひかり 内山理名 陽月華 キムラ緑子
 木場勝己 武田真治 北村有起哉 樹木希林 堤真一 山崎努

 

2時間半近い長尺ゆえに鑑賞のタイミングを逃してここまできてしまった。
気づけば地元のシネコンでは上映最終日のアナウンスも始まってなんとか時間を調整して間に合わせた。

春先からの予告編上映でずいぶんすりこまれてしまったシーンもあるので、実際のストーリーの中で台詞とその場面がランダムに出てくる感じで少し落ち着かない前半。
中盤のやや中だるみも感じつつも終始テンポのいい会話が続くので最後まで飽きない。

特に大泉洋の台詞回しは神がかっていて、「青天の霹靂」の売れないマジシャン、「トワイライト ささらさや」の落語家、現在放送中の朝ドラ「まれ」では夢ばかり追いかけている調子いい父親、そして今回は戯作者に憧れる見習い医師、役柄は違えどきちんと自分のフィールドに落とし込んで演じながらもくどさがない。

どうしてもコミカルなキャラばかりが話題にされるけれど、あれだけの膨大な台詞を自分のテンポを変えることなくきちんと演じ切る力量はやはりただ者ではないと再確認。

縁切寺として名を馳せる北鎌倉の東慶寺には紫陽花の時期に何度か訪れている。
山門から続く境内もこじんまりとした印象が強く、そこに横たわる江戸の世の女性たちに思いめぐらす雰囲気はあまりない。

高徳院の大仏や長谷寺の観音立像のような観光目的となるような拝観仏もないので紫陽花の時期以外は訪れる人も少ないのかもしれない…個人的には水月観音坐像を観たいのだけれど、これは一般公開してはおらず事前の予約申し込みが必要。

さて、映画は東慶寺に駆け込む2人の女性がメインに描かれる。
日本橋の唐物問屋の妾のお吟、腕のいい鉄練りのじょご、二人は東慶寺への駆け込みの道中に知り合い、聞き取り調査のための御用宿で友情を深める。

その御用宿には江戸から逃げてきた見習い医師で戯作者の信次郎が居候していて、主人の源兵衛と番頭の利平その女房お勝とともに、彼女たちの離縁が成就するように協力するようになる。

初めて映画として本格的に描かれる2年間の東慶寺での暮らしは修行の場でもあり、時には大奥のような女同士のいがみ合いもあったりと面白い。

個人的にはこの物語に曲亭馬琴が絡んでくるところが興味深かった。
江戸の大河小説「南総里見八犬伝」を完成させるまでの晩年の馬琴の苦労は、長年の「八犬伝」ファンとしてよく知っているけれど、なかなか映像で描かれる機会も少ないので虚実が混沌とした中で想像力を膨らませて楽しませてもらった。

満島ひかりと戸田恵梨香に久しぶりの内山理名も共演というのもよかったし、武田真治や北村有起哉といったバイプレイヤーもいい味を出していた。

観ておいてよかった一本。


 2015.6.24 MOVIX伊勢崎 シアター7

 おすすめ度…★★★☆☆ 満足度…★★★★☆