そして、昨今の環境ホルモン事情は… | 私のおべんきょうノート(ma-windのブログ)

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何でも自分で調べて、自分で考えよう。
本でもブログ記事でも、丁寧に読み込むことで新たに見えてくることがある。そういうものを少しずつメモしていこう。
分野は多岐にわたります。

 それで、シーア・コルボーン他著奪われし未来」の環境ホルモン事情を書き始めたはいいが、この本の発刊は、もう20年近く前のこと。その後、どうなっているのだろう…と気になっていた。これだけ、アレルギーが蔓延し、発達障害が一般化している以上、まさか、「環境ホルモンは、全然問題ありませんでした!」ってことは無いだろうとは思ったけれど…。

 

 それで、木村ー黒田純子著「地球を脅かす化学物質 -発達障害やアレルギー急増の原因ー」を図書館で借りてきた。2018年発刊の本である。著者の黒田純子氏は、この20年あまり公的研究機関において、PCBや農薬など有害な環境化学物質が脳発達に及ぼす影響について研究を続けている。ご主人の黒田洋一郎氏と共著の「発達障害の原因と発症のメカニズム」は2014年に発刊されている。

 

 

 この木村ー黒田純子著「地球を脅かす化学物質 -発達障害やアレルギー急増の原因ー」には、日本人の化学物質曝露の現状から実際に環境中にある化学物質、その影響、法規制までコンパクトにまとめられていて、一家に一冊あってもいいくらいだと私は思う。私も買おう。今日はこの本から昨今の環境ホルモン事情をメモしてみよう。まずは序文から抜粋。

 

--------------- ここから


  この20年余り、筆者は公的研究機関において、PCBや農薬など有害な環境化学物質が脳発達に及ぼす影響について研究を続け、その結果を連れ合いの共著の本「発達障害の原因と発症メカニズム」に記載して2014年に出しました、さらに子どもの脳だけでなく様々な健康障害は、有害な環境化学物質の曝露と深くかかわっていることも、分かってきました。

 それは私の独りよがりや、思い込みと思う方がいるかもしれません。しかし、有害な環境化学物質について膨大な研究が積み重ねられた結果、世界の多くの研究者や様々な機関が、その危険性について公式に警告しているのです。

 

 米国内分泌学会(世界122ヵ国の研究者が参加している国際学会)

は2009年、2015年に「内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)が子どもの発達において重要な内分泌系、脳神経系、免疫系を攪乱して健康障害を起こす」と公的な勧告を出しました。

 

 WHO(世界保健機関)2012年、内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)が子どもや生態系に及ぼす有害影響を重大視して、「内分泌攪乱k学物質の科学の現状2012年」、「内分泌攪乱化学物質と子供の健康」を取りまとめて発表しました。

 

 米国小児科学会は2012年に「農薬曝露は子どもにがんのリスクを上げ、脳の発達に悪影響を及ぼす」と公式に声明を発表。

 

 国際産婦人科連合は2015年に「農薬、大気汚染、環境ホルモンなど有害な環境化学物質の曝露が流産、死産、胎児の発達異常、がんや自閉症などの発達障害を増加させている」と公式見解を出しています。

 

 一方、今の日本では、この環境化学物質の問題は一般にはあまり知られていません。筆者は農薬や環境化学物質汚染が地球環境の悪化を招き、それが子どもたちにも影響を及ぼしているのではないか、ということにもっと目を向けてほしいと願ってこの本を書きました。

 

--------------- いったん、ここまで

 

 WHOの報告は厚労省のこのページから読めるようだ。

http://www.nihs.go.jp/edc/houkoku/kanren.htm


日本語訳もある。これは、一度目を通しておくべきだなぁ。日本では、あまり騒がれなくなったと思ったけれど、世界ではちゃんとその後も公的な報告がなされているのだ。そして、さらに気になるところをメモしてみよう。

 

--------------- ここから

 

 環境ホルモンは、日本では空騒ぎだったというキャンペーンが流布してしまい、現在は忘れられがちです。しかし、環境ホルモンが人体や動物にホルモン攪乱作用を起こすことは、科学的に証拠が積み重なっています

 

中略

 

 さらに近年、国内外で自閉症やADHDなど脳に何等かの発達障害をもつ子どもが増え、脳の成長期に発達神経毒性をもつ人工化学物質が注目されてきました。自閉症など発達障害は、当初遺伝性が強い

と言われていました。しかし膨大な研究が行われた結果、遺伝要因も関係しますが、環境要因がより大きいことが明らかになり、有害な環境化学物質に関心が集まったのです

 2010年頃から有機リン酸系農薬が脳の発達に悪影響を及ぼすという研究報告があいついで発表され、 米国小児科学会は2010年に「農薬曝露は子どもの脳の発達に悪影響を及ぼす」ことを公的に警告しました。米国内分泌学会の2015年の公的勧告では、脳発達に悪影響を及ぼす環境化学物質として、環境ホルモンや有機リン系殺虫剤など農薬についても言及しています。

 

--------------- ここまで

 

 おお、やっぱりそうだったか…と思った。そういうキャンペーンがあったのだ。だから、いつの間にか環境ホルモンという言葉は日本では忘れ去られた。ケミカル業界でしょうか。命より、健康より、経済なのでしょう。

 自分が湿疹で悩んだから、いろんな療法やら薬の害やら、そんなことから書き始めたけれど、できれば、病気にならない方がいい。障害にもならない方がいい。直ちに影響がないから軽視されがちだけれど、これは実はとても深刻なことだ。森千里著「胎児の複合汚染」には「奪われし未来」についてこう記されている。

 

--------------- ここから

 

 「奪われし未来」の3人の著者の1人で、中心的役割を果たしたシーア・コルボーン博士は、ここ数十年間に世界各地で報告されていた野生生物やヒトへの化学物質の影響を扱った数千にものぼる論文を集め、そこから1つの仮説を導き出した。それは「環境中に存在する微量の化学物質(「内分泌攪乱物質」いわゆる環境ホルモン)が、野生生物やヒトのホルモンの正常な作用を乱し、生殖あるいは子孫の健康に取り返しのつかない影響を与えている」ということだ。化学物質による健康影響といえば、水俣病、サリドマイドやカネミ油症事件などの激甚公害か、そうでなければ発ガン性などしか重要視されていなかった時代に、コルボーンは「微量ならば安全」という考えが実は神話に過ぎないことを暴露して見せたのだった。

 

--------------- ここまで

 

 今、日常の生活で、本当に様々な化学物質にお世話になっているけれど、それらを一度見直す必要はありそうだ。微量でも、決して安全ではないという。取り返しのつかない事態は既にある。長い時間をかけても、少しずつ見て行こう。