実は最も怖いのが、不満を表明せずに二度と買ってはくれなくなる、沈黙する不満客(サイレントクレーマー)です。
クレームを言うには時間も手間もかかるし、思いのほかエネルギーがいるものです。
そのうえ、適切な対応がなされなければますます不快な思いをすることになります。
読者の方も、納得がいかない状況に遭遇しても「あの時は何も言わなかった」という経験があるでしょう。
言ったことで嫌な思いをしたくない。不満を抱きつつも、にっこりほほ笑んで店を後にし、二度と行かないということもあるはずです。
ある調査によれば、不満を抱いた消費者の半数以上がクレームを表明しないといいます。こうしたお客様が増えると、原因は全くわからないのに売り上げが低下するという事態に陥ります。
それだけでも恐ろしいことだが、さらに不平不満を口コミで情報発信することになればもっと怖いです。
不満を持ったお客様の10人中9人が、他の人にその話をします。逆に好感をもったお客様の場合、10人中3人が他の人にその話をします。悪い話は、いい話の三倍伝わりやすいと思っておけば間違いはないです。
沈黙する不満客の「声なき声」を聞こうとする姿勢を持つことは重要です。
クレームを表明してくれたお客様には感謝したいです。
会社の外側からの視点というものは、内部にいては気づきにくいからです。
サイレントクレーマーの本音を引き出す方法は、インタビュー、アンケート、ミステリーショッパー調査などが一般的です。当社でも「ミステリーショッパー」という覆面調査でサイレントクレーマーの本音を探る手法を実施しています。
例えば、複数の店舗に対して、コンサルタントが一般のお客様に混じり店舗を利用し、サービスレベルをチェックします。
店舗を利用したコンサルタントが、問題点、改善点、評価などをお客様の視点で指摘し、サービスの向上に役立てています。クレームを言うお客様は、こうしたコンサルタントと同じ役割を、無料で果たしてくれると考えるべきです。
社内に「クレームは決して存在してはならないものだ」という意識が醸成されると、それはとても危険な兆候です。クレームがあってはならない、となれば「出てきたクレームは隠す」と考えるのが普通でしょう。
経営者はもちろん、上司が「クレームに関する報告を真摯(しんし)に聞く」よう努力することが大切です。
口では「よく報告してくれた」と言いつつも、不快そうな態度を上司がとれば、部下は萎縮してしまうでしょう。クレームを報告せず、隠ぺいしようと間違った考えに陥る人が出てきてもおかしくはないです。
