病理検査のための入院は3日(正確には3泊4日)で終わりましたが、その間に様々なことがありました。

病室は個室だったのでトイレもついていたのですが、場所を忘れて病棟内のトイレに行こうとします。
それだけなら良いのですが、自分の病室がわからなくなり間違って別の病室(女性の部屋も…)に入っていくことも。

でも一番大変だったのは、病理検査の日でした。
手術後、数時間は安静にしなければならないのに起き上がろうとしたり、管と尿をためる袋がついているのに何度もトイレに行こうとしたり、点滴の針を抜こうとしたり等々あり、そのたびに理由を話し説明するのですが、理解できない父は困惑し、あげくに怒りだします。

就寝後も何度もトイレに行こうとするので、そのたびにトイレに行かなくてもいいように管と袋がついているのだと話すのですが、やはり状況を飲み込めない父はますます怒り、母と私に暴言を吐き、「俺なんてどうなったっていんだ」などと自暴自棄なことを言い出しました。
そんな状態では、父はもちろん母も寝つくことができません。

夜勤の看護師さんに訴え、睡眠薬を処方するようお願いしたのですが「本人が眠れないと言わなければ薬を出せない」と言われてしまいました。

何度も訴えて、ようやく薬を出してもらいました。
薬を飲んだ父は朝まで熟睡できたようです。

それにしても、いくら認知症の人の意思や気持ちを尊重することが大切だとしても、判断力のない認知症の人に薬を飲むか飲まないかの決定を委ねるのは、本当に正しいことなのでしょうか。

その夜、私は別の病院を探し始めたのです。




病理検査で入院するため、再び父と母が私の家にやって来ました。

慣れない環境のため、前回の滞在時もそうでしたが父は何度もトイレの場所を間違います。
しかも、頻尿のため回数は半端のないものです。
母も私もほとんど寝られないということもありました。

そして入院前夜、一騒動が起こりました。
就寝後に変な音がするので起き上がってみると、父がトイレの前の廊下で尿をしてしまった後でした。
おまけに私は父の尿を裸足で踏んでしまい、気が動転してしまいました。
しかも、父はパンツやパジャマのズボンが濡れているのに、それすらわからない様子で「俺がやるわけない」、「俺はしていない」、「おかしい」と何度も言います。

しかし、そんな父を見て私は怒りと情けなさと悲しさと、色々な思いがつい爆発してしまい泣きながら父を怒鳴ってしまいました。
認知症の人に対して、そんなことをしてはいけないことは重々承知しています。
でも、その夜は感情を抑えきれなかったのです。

その後、私は眠りにつくことはできませんでした。
やり場のない思いをどこに持って行ったらいいのか。

福祉住環境の分野で活躍している人が言っていました。
頭ではわかっていても、疲れて帰ってきた後に「財布を盗んだのはお前だろう!」と認知症の母親に言われると怒鳴ってしまうこともある。
そして、怒鳴ってしまったことに後悔をする。

その気持ちがどんなものか、私もわかった気がしたのです。




いろいろ情報収集した結果、ある総合病院を受診することにしました。
大学病院やがん専門病院も検討しましたが、福祉事業にも力を入れているこの病院にしたのです。
また、この病院グループは職員の対応も良いとも聞いていました。

つまり、医療と福祉の連携がされているだろう、それであれば認知症の人に対する体制も整っているだろうと思ったからです。

しかし、それは甘い考えでした。
今思うと、まだまだ情報収集不足でした。

受診をしたところ、2週間後に病理検査のため3~4日入院するように言われたのですが、条件がありました。
「認知症の人は個室を用意するので、家族もその間は泊まりでずっと付き添いをすること」

母の体調や私も仕事があることを伝えましたが、付き添えないのであれば対応できないと医師からはっきり言われてしまいました。

この時点で、膀胱がんの疑いがあると診断されてから1ヶ月以上が過ぎていましたので、条件を受け入れ入院することを決めました。