飯塚さんと刑務所にて面会しました。
面会をした理由
再発防止のために、彼の言葉を社会に伝える目的で面会をしました。
失敗をした人の言葉には、「未来の再発防止のためのヒント」が必ずあると信じているからです。
飯塚さんは面会を受け入れてくれました。
回答してくれた内容を記者会見で言うこと、彼の実名を出して発信することを許可してくれました。
飯塚さんの言葉(抜粋)
さまざまな会話をしました。
裁判当時と比べると、飯塚さんは言葉がうまく出てこない様子でした。
私「再発防止の視点から、世の高齢者やそのご家族に伝えたいことはありますか」
飯塚さん「早く免許を返すように伝えていただきたいです。」
ご自身の言葉で、はっきりと答えました。彼の率直な願いなのだと感じました。
ただ私は、免許返納を出来ない事情、社会環境が根本の原因だと普段から考えています。ですから、以下の質問をしました。
私「同じく、国や自治体には伝えたいことはありますか。」
飯塚さん「(うまく言葉が出てこない様子。)」
私「病院に行ける支援サービスが国や行政にあればよかったと思いますか」
飯塚さん「はい。」
私「返納後の高齢者の方々を支援してあげてほしいですか」
飯塚さん「はい。そう思います」
飯塚さんのこの考えは、重要な視点だと私は思う。
日本社会の多くの高齢者の方と、そのご家族が抱える悩みです。
免許返納した後の充実したサービスがない、もしくは、あるけど知らない。
「移動の足が無くなってしまった人々をどう国や自治体としてサポートするのか。」
免許返納を促すならば、そこもセットで考えなくてはいけないと思います。
他にも医療面などでの課題についても話し合いました。
以下の記事が詳細まで書いてくださっています。2ページ構成です。ご覧いただければ幸いです。
本当は車の技術面や免許制度、道路交通環境などの議論もしたかったのですが、彼の体力面、時間面から断念しました。
最後に
飯塚さんは、私の面会の申し出を断ることも出来ました。
しかし、私の再発防止への思いを感じ、面会を受け入れてくれました。心の底から感謝しています。
裁判の時は、彼に罪を償ってもらうために、心を鬼にして闘いました。
でも、そのフェーズはもう終わった。
妻と娘の命を奪われ、裁判でも苦しめられた。だから、私が彼を許せる日は来ないかもしれない。
でも、彼の言葉や存在を認めることは出来る。彼の経験や言葉を無駄にしたくない。
今回の報道で、飯塚さんに対し、「言い訳だ」「まだ反省していない」という声もあるようです。
しかし、彼を糾弾するだけでは、社会全体の再発防止には繋がりません。
真に大切なのは再発防止です。同じ過ちや犠牲を生まないことです。
彼の言葉をヒントにして、社会から被害者、加害者、それらの家族を無くしていくために、私を含め皆で考えていきたいです。
そして国や自治体も、高齢者自身の決断、ご家族の説得だけに頼るだけではなく、決断や説得しやすい支援の構築、返納後のサポート、そのサービスの周知に是非力を入れてください。
面会を受け入れてくれた彼の勇気を、無駄にしないであげて欲しいです。
今回の面会は、沖縄の妻のお父様も参加されました。
お父様は、「飯塚さん、あなたの謝罪の気持ちはよく分かりました。出所したら、家族と穏やかに過ごしてください」と伝えていました。
お義父さんが苦しむ姿を5年間ずっと見てきました。それでもこの言葉を伝えるお義父さんを見て、
「ああ、やっぱり真菜の優しさは、お父さん譲りなんだな。」と感じ、涙が出ました。
飯塚さんも、最後は絞り出すような声で、「ありがとうございました。」と言ってくれました。
出所後、飯塚さんが許可をくださるのなら、対談をしたいと思っています。もちろん再発防止のために。
家に帰ってから、仏壇の前に座り、真菜と莉子に報告しました。
「ずっとしたかった面会をしてきたよ。」
「やっぱり2人に会いたいよ。」
「でも叶わないから、お父さんは生きている限り、再発防止のために活動するよ。」
そう伝えました。
各社報道