髭剃りの跡 | mirokuのブログ

出棺の朝

彼女はひとり黙って棺の前で泣いていた

そっと傍によって棺の蓋を開けてさしあげた


結婚を目前に彼は彼女を遺し突然亡くなった


私が肩を抱くと小さな声で彼女が話し出した


ここのところ毎日のように会社の帰りに寄ってくれたんです。

すごく優しくしてくれていたんです。

もっともっと私は彼に優しくしてあげたかった…と…


これは苦しんだ跡ですか?

顎から首にかけてひっかき傷があった・・・


私は咄嗟にこれは髭剃りの跡です。と、嘘をついた

治してあげましょうか?と、彼女と一緒に死化粧をした


彼は人生の最後に

貴女に出逢えて幸せだったと思います


少しだけほんの少しだけ

彼女がほほ笑んでくれた