10月26日
朝、2晩続いた雨はやみ、ようやく出発できそうな天気。コンビニに行って朝飯を買い、荷物をまとめていると、自分と同じカブに乗った旅人に出会う。彼はこれから九州沖縄だそうだ。僕が行ってよかった名所などの話をし、ふと連絡先を交換しましょうということになった。ポケットから携帯を取り出そうとする。
携帯がない(泣
オチケツオチケツ。こういう時は落ち着くんだ。上着のポケットにあるはずだ。
やはり、ない。
その後体中のポケットを弄るも、一向に携帯は出てこない。そういえば今日は一度も見ていない。早々に話を切り上げ、テントの中を探すも、やはり、ない。カブのボックス内にも、ない。どこをさがしてもないのだ。どこにあるのか皆目見当がつかない。この時点でかなり焦る。21世紀を生きている僕にとって、携帯とはそれほどまでに重大なアイテムになっていた。これがなくてはほぼ完全に社会の外に放り出されることになる。いっそのことそうなってしまってもいいんじゃないか、そんなアホなことも考えたけど、携帯がなくては地図も開けない(荷物を減らすため紙の地図は道の駅等で入手し、使い終わったら捨てていた)し、写真も撮ることができない。家族に安否も伝えられない。携帯に生かされている、そんな自分を呪った。
しかしジタバタしてもしょうがないので、朝行ったコンビニに向かった。道路に落ちているか、店内に置いてきたかだと思ったのだ。だが道中探してなし、店員さんに聞いてもなし、ゴミ箱まで漁ったがなかった(泣 これはどうしたものか、とりあえずコーラを買い、テントに戻ってもう一度探そう。それでなかったら交番に行って見よう。
キャンプ場に戻り、もう一度テント内を探したが、やっぱりなかった。
これは相当めんどくさい事になったぞ、今までなんとかなってきたが、今回ばかりはどうしようもないかもしれない。得意の自暴自棄&現実逃避に走り、外のベンチに寝っ転がった。
その時、ふと背中に違和感を感じた。
何か硬いモノが当たっている
手で触ってそのモノを確認してみる、どうやら防寒着の内側に入り込んでいるようだ。
その物体は角のとれた長方形であり、薄く、表面は研磨されたように滑らかであり、重量はそれほどでもない。
紛れもなく携帯であった。
つまりこうだ!↓
防寒着は外がカッパのような生地、内側が綿で暖かい層になっている。当然この間に隙間があるのだが、ポケットの縫い目が破けて内側から侵入したようであった。
つまり、ずっと携帯を身に着けたまま、携帯をなくしたと思い込みパニックになっていたのだ笑
たまらなくおかしくなって、3分ほどその場に転がり込んで大笑い。
というわけでケータイ紛失事件はこれにて解決。テントを畳み、バイクにまたがる。3日間もお世話になったキャンプ場に別れを告げ、旅を再開。
しかし予想外の出来事で時間を食ってしまったため、昼からの出発となってしまった。長く停滞した分、今日は最低でも県をまたいでおきたい。しかし鳥取でどうしても寄りたかった場所があったのでそこだけ足を延ばしてみた。
湖山池(こやまいけ)。日本一大きな池である。いやそれ湖じゃんという声が聞こえてきそうだが、これは紛れもなく池なのである。詳しくは調べてほしい。
なぜここに来たかったかというと、以前読んだ本がこの池が舞台だったからだ。鳥取大学?のある教授がこの池に浮かぶ島に住む一頭の鹿を研究する内容だった。この人の研究の本は面白くて全シリーズ読んだ。詳しい内容は忘れてしまったけど、我が心の図書館にはしっかりと蔵書されている。
その後池をあとにし、兵庫県へ入った。この旅では瀬戸内側も走ってるので新しい県の更新とはならないものの、旅が進んでいることを実感させてくれた。
この日は川の適当なスペースで就寝。
10月27日
朝から頭が痛く、熱っぽい。とりあえず天気もあまりよくないので、テントの中で今日もこもる。幸い歩いて行ける範囲にちょっとしたドラッグストア的な店(山間の村の、貴重な店である)があり、食品その他の調達には困らなかった。
12時過ぎ、体調は幾分よくなり、晴れてきてテントも乾いたところで出発を決断した。時間的に昨日と同じで距離は稼げないだろうが、それでも京都府を目指すには十分な時間でもあった。
16時、国道からなにかに導かれたように農道へと入り、キャンプできそうな川を見つける。すでに京都府には入っていたし、この先は一気に都市部になるだろうから、ここで今日はテントを張ることにした。
久々の焚火。
焼き芋、なにげに初めて焚火でやってみた。どれどれ、いただきます・・・・・
うん、大失敗(笑
どうやら火力が足りなかったようだ。皮の下1cmくらいだけ焼き芋になっている。その部分だけ食べ、残りは焚火に放り込んだ。しばらくしてまた1cm焼き芋が出来ていたのでまた齧り、残りは捨てた。すでに火は消えかかっていたので、水をかけて完全に消火し、テントの中で過ごすことにする。
この夜、昨日の携帯紛失事件など記憶の彼方に吹き飛ばす、日本一周中に最も記憶に残るエピソード、いや事件が起きる。だが、この時の僕はまだそんなことは知る由もなかった。
40/47都道府県到達