学校の先生である著者の日常の出来事を綴ったエッセイ、「ありがとう、さようなら」を読んだ。
女っけがなく、整理整頓が苦手、派手に遊ぶことにも興味がない、そんな京都北部の中学校の教師が、人間味あふれる生徒たちとふれあう。その叙述的な記録だ。
生徒とのふれあいの中で気づかされる大事なことが描かれている。
著者の素直で謙虚な姿勢があるからこそ、発見できるのだろう。
大人だからといって倫理的に正しい判断ができるわけでもないし、道徳的に優れた人間だというわけではない。
何かができないということも重要な個性だし、全部で満点をとる人間などいない。
困った時は周りが助けてくれる、そういう安心で肥沃な人間関係が、生きるということの味なのかもしれない。
1ページ程度のエッセイの最後には落ちがあるから、かっぱえびせんのように次から次へと読み進めてしまう。