トルストイの『アンナ・カレニーニン』を読みました。
主人公アンナ
アンナはペテルブルグの社交界の貴婦人で
物語のなかでは、夫がいながらも
若い男(ブロンスキー)と恋に走ってしまいます。
ブロンスキーがアンナに初めて会った時の印象はこう。
「相手(アンナ)がそばを通り過ぎたとき、その愛らしい表情の中に、一種独特ないつくしむような、優しいところがあった」。
「濃いまつげのために黒ずんで見える、そのキラキラした灰色のまなざし」
「相手(アンナ)の顔に踊っている控えめな、生きいきした表情に気がついたが、それは彼女のきらきらしたまなざしと、その赤い唇を心持ちゆがめている、かすかな微笑とのあいだにただよっているのだった。なにかしらありあまるものがその姿全体にあふれて、それがひとりでにひとみの輝きや微小の中に表れているかのようであった。」
アンナには離れて暮らす兄がいるが
その兄と久しぶりに再開したときのアンナのふるまいをブロンスキーは次のように、描写している。
「兄が近づくが早いか、ブロンスキーがびっくりするほど大胆な、しかも優雅な身のこなしで、兄のくびを左手で抱き、すばやく自分のほうへ引き寄せて、強く接吻した。」
アンナは兄弟を愛する優しい妹でもあった。
読んでて思うのだが、アンナは子供からお年寄り
男女とわず、すべてのものから愛され
その他に類をみない独特な魅力と尊い雰囲気がある。
アンナと列車の中で隣だった伯爵夫人が別れ際にアンナに言う言葉、
「あなたとなら世界を一周したって、退屈なんかいたしませんよ。だってあなたは、お話をしていても、黙っていても、ほんとうにこちらの気持が楽しくなる、かわいい女の方でいらっしゃいますもの。」「どうかその美しいお顔に接吻させてくださいな。あたしは年寄りですから、なんでもざっくばらんに申し上げますが、あなたが好きになってしまいましてね」
キチイという若く美しい女性もまた
アンナに会うと、次のような印象を、
「もう自分がアンナの影響の下にあるばかりでなく、彼女にほれこんでいるのを感じた。」
「そのみずみずしさからいっても、微笑やまなざしにあふれるいつも生きいきとして顔の表情からいっても、むしろ二十代の娘を思わせるものがあった。ただ、キチイをはっとさせると同時にその心を強くとらえた、きまじめな、時には沈みがちのひとみの表情だけは別であった」
「アンナの中にはなにかしら別の世界が、キチイなどには想像もつかない、複雑で詩的な興味に満ちた、崇高な世界があるように思われた。」
そして、子供たちもアンナを好いた、
「子供たちはままがこの叔母(アンナ)を好いているのを見てとったからか、それとも自分たちで叔母の持っている特別な魅力を感じたのか、いずれにしれも、・・・、上の二人と、それに続く下の弟や妹までもが、もう食事の前から新しい叔母(アンナ)にまつわりついて、そばを離れようとしなかった。」「できるだけ叔母さんの近くに座って、そのからだにさわったり、小さな手を握って接吻したり、その指輪をおもちゃにしたり、でなければ、せめてそのドレスのひだにでもふれたいというわけであった。」
また、アンナは周りの人の不幸に同情し慈しむほど
余裕があふれた心を持っていた。
親族間でなにか問題おきれば
アンナが当事者一人ひとりの言い分を親身に聞いて、同情し
その知性で人を誘導し、すべてまるくおさめてしまうのであった。
アンナの兄の浮気が発覚したあとで
その妻(ドリイ)が部屋に閉じこもって
くらい生活をしていたところに、アンナが現われ
その夫婦を救う救世主のように描かれているのだった。
アンナ「(妻のドリイに対して)ねえ、ドリイ、あなたの気持ちはわかるわ、でも、そんなに自分で自分を苦しめないで。あんまりひどい仕打ちを受けて、興奮していらっしゃるから、いろんなことがちゃんと見えないのよ」
「まだあなたの心の中には、どの程度あの人に対する愛情が残っているのかしら…でも自分にはそれがわかってるでしょう、許すことができるくらいまだ愛情がるかどうか。もしあったら許してあげて!」
「ねえ、ドリイ、」「あたしはあなたに夢中になっていたときのスチーヴァ(ドリイの夫であり、アンナの兄)を知っているわ。…あの人はあたしのとこへきて、あなたの話をしながら泣いたものよ。あなたはあの人にとって何か詩的な崇高なものだったのよ。兄はあなたといっしょに暮らしているうちに、あなたはますます兄にとって尊いものになっていったんですもの…ただ今度のことはちょっとした心の迷いのよ…」
アンナはその場の空気を一瞬にして変えてしまうような
独特のオーラや人間性があるんだ。
でも、
きっと彼女の過去には
隠れた誰にも想像しえないような暗い経験があるような気がするの。
まだ、上巻をよんだだけだから
これから読み進めて、
彼女のミステリーをのぞいてみることにします。