3人でじゃれ合いながら
久しぶりに本当に楽しく過ごし・・・
気を使ってくれたのか
男たちはいつのまにかどこかへ・・・・・
多分、サトシくんが釣りにでも連れ出してるかもしれないな~・・・・。
釣りの話、朝食中してたし。
さっき出ていったカゲヤマもなかなか帰ってこないから、きっとあちらに摑まって
いろいろ用立てを頼まれてるのかも?
大騒ぎで海へ出かける準備中かな?
釣りが大好きなサトシくんは凝り性だから
細かい準備に時間がかかる。いろんな珍しい道具を持っていて器用に操るから、サトシくんが海に出るときは付き合うのがすごく楽しい。
なんにもしないでそばにいる。
そういう時間をよく二人で過ごした。
だけど人間の世界で暮らすようになってからはしばらくそういうことは自制していた。
故郷を見るのが辛かったから。それになにかの拍子にまぁと鉢合うのを恐れていたから。
あの頃はサトシくんまで遠慮して海に行きたがらなかった。
大好きな海に出ないなんてすごくすごく辛いはずなのに、そういう時は「絵が描きたい気分なんだ」と趣味で描いている絵を部屋にこもって描いていて・・・。いつも手の届く・・・触れ合える位置にいてくれた。
気を使ってくれているのはわかってた。
そんなの気にしなくていいのに、と言いたかったのにサトシくんはそういう時に限ってそいういことを言わせてくれない。いつもやさしくほほ笑む彼はその笑顔で包み込んで、それなのに何にも知らないよってとぼけたふりをしてる・・・・そんな人。
王の子であるサトシくんは外交がすごく上手で年間の大部分を諸外国周りしていたから「カズも行こう?」と、仕事でいろいろな国へ飛び回るのに必ず付き合わされて、その土地土地のいろいろな珍しいところを案内してくれた。だからホームシックにかかる暇なんかなくて・・・・。
しばらくバタバタしていたけれど、仕事が一段落したところでハネムーンへ行ってきなさいとサトシくんの両親に促され、どこへ行くと思ったらショウくんのところで・・・。
せっかくの長期休暇中なのにサトシくんは釣りのツの字も出さなかった。
サトシくんのそういうさりげないやさしさがすごく好きで
ある時「お願いだからたまには様子を見てきて教えて?」
とサトシくんに頼んだ。
サトシくんは一瞬答えに詰まったけれど
「なにを見てくるとカズは嬉しい?」
そう聴くから
「太陽の下・・・一番海が輝く時間にもしかしたらクジラやイルカたちがご機嫌に泳いでいるかもしれないから・・・・」
そこにきっとまぁもいるから・・・・。
「・・・・・釣りしながら見てくるね。挨拶しとくよ」
サトシくんが笑って
それからは時々海へ出かけるようになり・・・・。
すると
サトシくんが
「なんかさ、ここらへんの海っていつもご機嫌だね」
サトシくんが海に出かけるたびそんな風に「報告」してくれた。
サトシくんは不思議だ。
海が好きなのはもともとだけど本当に海に好かれていて、サトシくんが海に出るときは必ず雲1つない快晴で、まるで海が喜んでいるみたいに見えた。
それがショウくんのところでの滞在中
いままで以上に強化されて、いつのまにかサトシくんは海や魚たちと喋れるかのように海自体に溶け込んでいき・・・・。
あの日・・・。
いつもは誘っても出かけようとしないショウくんを無理やり連れ出した。
今考えるとあれがまぁとショウくんが出逢った日だった。
あとあとショウくんが実はまぁと出逢っていたんだと知り
それを導いたのがサトシくんとしか思えず、サトシくんを問い詰めたけど
「海と太陽がショウちゃんを呼んでたから」
サトシくんが笑いながら
そんなことを言った。
そしてその時思い出したんだ。
ショウくんのところへ滞在を始めたころ
ショウくんが元気がなくて
はっきりした理由はわからなかったけど
サトシくんはそれを知ってるみたいで
「ショウちゃんは責任感が強すぎるから・・・煮詰まっちゃうんだよ。
なのに絶対誰にも弱音なんか吐かないから・・・・」
心配そうにそう言うのに
普段はショウくんを怒らせるくらい
せっかく逢いに来たのに、ショウくんをほっぽらかしで
部屋にいる自分のそばを離れないでいてくれて
だけど
「大丈夫。宝石みたいな宝物を見つけるよ・・・」
海へ出かけるようになってから数日たって
部屋から見える海の水平線を眺めながらそんなことを言ったことがあった。
そしてその後まもなく
ショウくんが海から落ちて行方不明に数時間なり、ちょっと城内が大騒ぎになりかけた事件が起きたんだ・・・・。
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