発達障がい支援 | 松岡隼人オフィシャルブログ「てらブロ」Powered by Ameba

 昨日に引き続き、一般質問の原稿を記します。


発達障がい支援について


Q1

 発達障がい支援については、これまで、豊永議員が、平成20年3月、平成21年3月、平成22年12月に質問を行っておられますが、今回、私は、早期発見、早期療育に焦点をしぼり、支援体制を充実するべきだという立場から質問を行います。

 まず、発達障害の歴史を簡単に見てみますと、1943年にアメリカの精神科医レオ・カナーが、現在、自閉症と呼ばれる障害を「早期乳幼児自閉症」という論文で、世界に初めて報告ました。

 翌年、オーストリアの医師、ハンス・アスペルガーが「自閉的精神病質」と題した論文で、アスペルガー症候群を報告しました。この概念は、第二次大戦中にドイツ語で発表されたこともあってか、国際的にはほとんど注目されませんでした。

 国際的に注目されるようになったのは、1981年に、イギリスのローナ・ウイングが、アスペルガーの論文を紹介し、再評価を行ったことでした。それ以降に、発達障害が社会に認知されるようになりました。

 我が国では、2004年に「発達障害者支援法」が出来ました。これは、自閉症 アスペルガー症候群 その他の広汎性発達障害 学習障害 (LD)や注意欠陥・多動性障害 (ADHD)などの発達障害 を持つ者の援助等について定めた法律 で、全25条からなる、発達障害児(者)の早期発見と教育、就労の支援を目的とした法律です。また、この法律は、都道府県市町村の義務と位置づけた法律ですが、施行されてからの年限がまだ短く、多くの都道府県市町村では、その実行に必要な予算や専門的な人員の確保に苦労しているのが実情です。発達障害という概念の社会的認知も、近年急速に進んできていますが、まだ不十分です。本市においても、まさに、そのような状況です。

発達障害とは、一言で表現すると「知的障害ではなくて、支援が必要な人」をいいます。これらは、先天的な脳の障害であり、親のせいではありません。

発生率については、文部科学省が2002年に実施した、日本初の全国的な実態調査によると、知的発達に遅れはないものの学習面や行動面で著しい困難を示すと担任教師が回答した、学習面か行動面で著しい困難を示す児童生徒の割合は、6.3%でした。これにより、これまで親や教育の現場から訴えられていた困難さが、初めて公式な調査による数字で把握されたと共に、「発達障害に対する総合施策の必要性」が説得力を持ち、発達障害者支援法策定へと繋がっていきました

現在、欧米では、人口の2割を占めていると言われています。本国においても、正確な数字は出ていませんが、1割~2割を占めると言っても過言ではありません。また、発達障害全体の8割以上は、高機能です。実際、先進的な取り組みを行っておられる、佐賀県などは、2割想定で計画を策定されているようです。

いずれにしろ簡単な解決も、完全な治癒もありません。適切な教育と支援が必要であり、それによって、成人期の最大限の自立が可能になります。そこで、最も大事なことが、豊永議員もおっしゃっており、執行部も十分認識しておられますが、早期発見、早期療育です。まずは、早期発見がより適切な教育の入り口になります。発達障害とは、脳の情報処理の障害ですので、脳が発達する時が一番大事です。この時期の教育的刺激により、脳内の発達が変わる可能性が高くなります。それは、症状の軽減に繋がり、人生が変わります。開始時期が早ければ早いほど、教育的効果が高くなるといえます。

発見の時期ですが、ASD(自閉症スペクトラム障害)は、1歳台での診断が可能ですが、ADHDは、5歳過ぎ、LDは、読み書きをするようになってからと言われています。

本市においても、就学までに、乳幼児健診、1歳8カ月健診、3歳児健診、5歳児健康相談、就学時健診を実施されており、その内容については、豊永議員の質問に対して答弁があっていますので、そちらをご覧いただくといたしまして、健診の結果から見える本市の現状を、おたずね致します。

Q2

全ての乳幼児に対して、スクリーニングを実施し、発見、経過フォロー、相談、専門医療機関への紹介を行っており、平成22年度で約7割の方をフォロー。総合療育センター受診状況も、人吉圏域は、熊本県内の他市町村と比較すると、受診者数が飛びぬけて多い状況。明確な理由は、不明とのことです。

人吉市は、保健師さんがとてもまじめで、熱心に健診をされると、県下でも評判です。ざるの目が他市町村より、細かいというのはあるのかもしれませんが、療育センターの受診状況も飛びぬけて多いということですので、他市町村と比較した場合、やはり全体的な数も多いのではないかと考えています。早期発見という点では、少ない保健師さんで、大変お忙しい中、しっかりと役目を果たしていただいていると思います。

それでは、早期発見後、フォロー者への対応はどのようになっていますか。おたずねします。

Q3

フォロー者への対応としては、就学前までは、経過を見ながら、状況を確認しており、就学後も学校訪問を行って必要な支援に結び付けているということです。本市といたしましては、最大限の努力をされていることが分かります。早期発見から、フォロー者への対応、そして、必要な支援と繋がっていくわけですが、現在の圏域の療育機関の現状をお尋ねします。

Q4

早期発見、フォロー者への対応はしっかりやっておられます。その後ですね、相談するまでに、3~4カ月かかると聞きおよんでいます。平成21年3月議会の尾方部長の答弁では、半年待ちでしたので、幾分かは解消されていますが、それでも、相当待たなくてはなりません。

また、それから、療育センターへ予約して受診できるまでに3~4カ月かかります。必要であれば、それから療育にかかるわけですが、ここでも、待たなければなりません。そして、実際に療育を受けたいと思っても、施設が少ないため、また、待たなければなりません。本市職員が早期発見をしても、療育に至るまでに相当な時間を要します。職員の方もだと思いますが、私もこの待ちの時間をどうにか解消出来ないかと、常日頃から考えています。

待ちの時間がかかる原因は、専門家と療育の場が少ないことは明白です。これは、人吉のみではなく、全国的に不足しています。まずは、ここを解消することが、喫緊の課題であると思います。とは、申しましても、他市、他県も同じ状況ですので、頼るわけにはまいりません。本市において専門家を育成することが唯一の解決策ではないでしょうか。それには、2年、3年とかかるかもしれません。しかし、支援体制の充実というのは、専門スタッフのスキルアップと関係者の増員という形でしか成し得ないと思います。

支援体制を充実させるためには、もちろん予算が伴うことも重々承知しています。そこで、私なりに、厚労省のホームページを見たり、関係者からの情報収集を行い、何かいい方法はないかと思っていましたところ、本年度の厚労省の事業で、巡回支援専門員整備事業がございます。これは、発達障害等に関する知識を有する専門員が、保育所等の子どもやその親が集まる施設・場への巡回支援を実施し、施設等の支援を担当する職員や親に対し、障害の早期発見・早期対応のための助言等の支援を行う事業です。これは、本年度からの新規事業であり、市町村が事業主体となることができます。事業内容を見てみますと、現在、本市が行っていることと一致します。この事業とは、別の事業で取り組んでおられるようですが、スタッフを増員されるのならば、2分の1補助ですが、こういう制度を活用されてもいいと思います。

 また、発達障害者等支援都市システム事業というものもございます。これは、発達障害者等の支援に対して、ライフステージを一貫してサポートするため、保健、医療、福祉、教育、労働等の様々な領域が連携して取り組むシステムを構築し、「まち」全体で発達障害をサポートする取り組みを行う事業です。こちらも本年度からの新規事業です。

 今回は、早期発見、早期療育というごく一部に絞って質問を行いましたが、目指すべき姿はそこにあると思います。私も以前、厚生委員会の視察研修で滋賀県の湖南市に行って参りましたが、まさに、このシステムが整っているまちでした。本当に圧倒されました。そのような理想の形になるまでには、20~30年はかかると思いますが、本市もそこを目指していくべきだと思います。

 話が膨らみすぎましたが、今回は、早期発見、早期療育体制に絞って質問を行っていますので、その取り組みと今後の展望についてお尋ねします。

Q5

執行部のみなさんと現状認識や思いは一緒だと思っています。私は、これまで以上に大胆な取り組みが必要だと考えます。部長がおっしゃったように、これまでの取り組みに加えまして、支援体制をさらに強力に推し進めていただきますようよろしくお願いします。

最後に、今期の市長マニフェストの「子育て世代の負担軽減の実施」という項目の中に、2年~4年以内に「子どもの成長課題解決のための健診に加え、1~5歳児の健康相談を実施する。」とあります。「健康相談の実施」は現在、実施中だとの認識が私にはございます。その中でもあえて、このような記載をされているということは、おそらく、私が今回質問を致しました内容のことを、一刻も早く解決をしたいという意気込みの表れではないかと想像をしているところでございますが、具体的にどういう意味なのでしょうか。市長の見解を求めます。

まとめ

困っている人が、たくさんいらっしゃいます。民間で対応することは、大変厳しく、やはり、行政が取り組むべき問題だと認識しています。とっかかりは、行政にしかできません。行政がやらないと進まないのです。

よって、行政が優先順位をどう考えるか。そこ1点だと思います。

市長、保育園に、学校に、保健センターに足を運んで、現場を見ていただきたいと思います。そこには、この地域の未来が、この国の未来があります。将来へつけを回すことなく、将来への投資をしっかり行ってください。観光、農業、企業誘致と同じように本市にとって大きな役割だと思います。

 今回の質問は、子育て、教育の一例ですが、引き続き全体的な将来への投資も続けて行っていただきたいということを申しまして、質問を終了します。

執行部答弁


 状況は、十分認識している。早期発見、早期療育の体制の充実に努める。


以上です。

最後まで、お読みいただきありがとうございました。