新作の楽器製作にとりかかる時、まっさらな木材を目の前にすると、
厳かな気持ちになります。
樹齢数百年の木です。伐採してから20年ほど経年した自然乾燥した
スプルースとメイプルを使わせて戴きます。
刀匠の「斎戒沐浴」とまではいかないまでも、やはり立派な木を眼前にすると
自然に「作らせて戴きます。」と手を合わせる気持ちになります。
「昔の仏師の生活はどんなものだったろうか・・・」という文があり、
たいへん得心しました。
曰く、 「むかしの仏師は、心身極楽の中でくらして、重ねる衣もなく、
最も高貴な食物のみを摂っていた。
高貴な食物とは、水の如く、粥の如く、松の葉の如く、春の若芽
秋の茸、海や川の水藻のごときものである。
最も高貴なしかも巨大な彫刻絵画をつくった代々の人々は
この清浄なくらしと、高貴な食物で生きていたのである。」