今日は、一日中出かけていましたが、朝読んだ新聞の記事が一日中頭を離れませんでした。
それは、公正証書遺言の替え玉事件の高松高裁判決。
公正証書遺言の実務的作成手順はおおまかに次の通り。
遺言者または、作成支援をする専門家(行政書士など)が遺言書の原案を公証役場に持っていき、公証人がそれに基づいて、遺言書を作成。
後日、公証役場において、完成した遺言書を公証人が遺言者と証人(2人以上)の前で読み聞かせ、遺言者、証人が、署名し、印を押す。最後に公証人も署名と印を押す。
ここで問題なのは遺言者の本人確認です。
遺言に押す印は実印で行われているようですが、実印が本人のものか証明するのが印鑑証明。そして、印鑑証明は、印鑑登録証というカードで取得できてしまいます。
そうすると、印鑑証明取得時も、遺言書に印を押す時も、ほんとうに本人か、顔写真や指紋などで確認しているわけではないので、第三者が勝手にやってしまうことも可能です。
今回の裁判例でも、実印を管理していためいが勝手に本人と名乗って作ってしまったようです。しかも、証人として司法書士が立ち会っているので、その司法書士さんがおそらく原案作成にも関わっているのに気付かなかったのでしょう。
これは、丁度今私が受けている相続研修で先生が危惧されていたところでありました。
気付かないのがやむを得ない面もあったのかもしれませんが、私が遺言書作成にかかわる場合は、絶対に阻止したいところであります。
そもそも、公正証書遺言は原本が公証役場に保管されるので、自筆証書遺言に比べ偽造や紛失のおそれがないのがメリットとされているのに、こういう替え玉が横行したら、完全にメリットが失われてしまいます。
また、遺言書は、遺言者の最終意思の尊重が趣旨ですが、これでは残された遺族らの都合のいいように悪用されることが増えてしまうかもしれません。
では、我々専門家が今回のような替え玉を防ぐにはどうすればいいでしょうか。
もちろん、制度として指紋や写真の照合などの対策を講じることも必要かもしれません。
しかし、制度に頼るだけでなく、専門家として遺言書作成に携わるのなら、出来る限り、ほんとに本人か。本人だとしても無理やり書かされたりしてないかを最大限チェックするべきだと思います。
その一つの方法として、遺言者の家への訪問。訪問すると、家の雰囲気とか、家族構成もわかります。
今回の事例も、遺言者として書かれていた人は認知症だったようで、もし在宅であればわかったかもしれません。
また、相続人調査や遺言者と名乗る人への聞き取りなどを綿密にやれば何かが変だと気付いたかもしれません。
さらに、この事例は替え玉をしたのがめいで、他の親族が争ったのですから兄弟姉妹の子供であるめい以外に相続人がいたことになります。
そしておそらくめい以外の相続人には遺留分(最低限の相続分の保障)があったと思われますが、遺言書の内容が「全部をめいに相続させる」なので、他の相続人への配慮が全くない遺言書が作成されたことになります。
もちろん、そういう配慮をしなくていいのが遺言です。
だけど、のちのトラブルを防止し、円満な相続をするのが行政書士の役目。
そのような場合でも一定の配慮をすべきと考えます。
そういうことを、そのめいに提案していたら、おそらくめいの様子がおかしくなったに違いありませんから(何しろ自分が全部もらいたいんですから)、そこで本人ではないと気付いたかもしれません。
ほとんど、相続の研修で先生がおっしゃっていたことの受け売りですが、私も先生の
考えに賛同ですし、それを土台にして私が遺言作成にかかわる限りこういう事件は
ないように努めたいと思いました。
応援よろしくお願いします。
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