部落からお金を稼ぎに各地を回っていた集団。
そんな折、立ち寄った福田村ではゴタゴタが起こっていた。
そしてそれは巨大地震を機に不安が狂気に変貌していく。
鑑賞日 2023年10月9日
映画館 キネマ館
良くも悪くも日本は地震によって社会が大きく変わります。
阪神淡路大震災では自衛隊の災害派遣のハードルが大きく下がり、東日本大震災では原子力政策の危険さを目のあたりにしました。
本作はそんな地震被害の中でも特に被害が大きかった関東大震災時の発生した朝鮮人虐殺に巻き込まれた部落民の話。
ドキュメンタリー作品を多く手掛けた森達也監督初となるフィクション映画として話題になりました。
(最も、本当は新聞記者を撮る予定だったけど、挫折したためドキュメンタリー映画「i」を撮ったとあったような)
一応フィクション扱いになっていますが、事件そのものは実際に起こったものとなっています。
ポイント
本作のポイントは狂気を駆り立てるモノ
勤務地の朝鮮から故郷である福田村に帰ってきた澤田。
しかし、本職である教師に復職せず畑を耕し始め、妻も渡し舟の船頭に不倫する始末だった。
一方、部落民の集団を引き連れ各地で薬を売っていた沼部らが福田村付近で商売を行っていた9月1日に地震が発生。
朝鮮に対する憎悪を煽っていたこともあり、直後に不安を煽る情報が流布し始める。
直後に政府が流布された情報が嘘であると通知するも、各地で朝鮮人を惨殺する事件が多発。
そして、それは沼部ら部落民に向かっていた。
狂気に追い詰められた人々の残虐性が爆発する。
前半はメロドラマテイストの展開なのですが、地震を期に村が狂気に染まっていく様は人間の恐ろしさが煮詰まっていくようになっており、当初は村人を嗜めていた村長も狂気に抗えなくなっていくのは集団心理の怖さがあります。
見どころ
見どころはやはり後半、狂気に染まる村人。
朝鮮扇を持っていたため朝鮮人に疑われた沼部達。
澤田達が村人を説得するもその狂気は暴走していいく。
気になった点
気になった点は前半の昼メロパートが冗長な事。
一般の人々という事を印象づける部分となっているのですが、もっと捻りがあっても良かったかと。
やるせないのが、福田村や朝鮮人を虐殺を行い罪に問われた罪人が新天皇即位に伴う恩赦を受け出所している事。
人の命が今より軽かったとはいえ、この扱いは流石にげんなりするかと。
非常に気が重くなる作品なのは間違いありませんが、人間はこのような狂気にかられるモノであることを認識しておきたいところです。