娯楽となる正義 許された子どもたち | Mの国より愛を込めて

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ふとした弾みで遊び仲間を殺してしまった絆星(キラ)

当初は自白するも、弁護士の戦術により無罪となる

しかし、殺人者許すまじという圧力が絆星の家族に襲い掛かる

 

 

 

 

 

 

 

鑑賞日 2020年7月16日

映画館 キネマ館

 

PG12対象

 

 

未成年による飲酒、喫煙

 

ニュース番組やワイドショーで見かける悪い事をした人たち。

そりゃ人に迷惑をかける行為は叱られて当然なのですが、彼らを罰しないと気が済まない考えは正直厄介なモノ。

それこそ今のウィルス騒動で自粛期間中に営業していた店に対し営業妨害を仕掛けるのもその一つです。

 

本作はその事が凝縮された作品。

殺人を犯した少年が許された途端、母親ともども地獄を見る展開となっています。

 

本作のポイントは暴走する無関係の正義。

幼少期いじめにあっていた反動で中学生では逆にいじめっ子となっていた絆星(キラ)。

そんなある日、つるんでいた友人らと共にいじめられっ子が作った輪ゴム中で遊んでいたところ、誤っていじめられっ子の喉に刺さり、それがきっかけで死んでしまう。

警察の取り調べで自白したキラだったが、弁護士の説得で供述を撤回、状況証拠もなかったため無罪となる。

しかし、殺された側の親が民事裁判を起こしたため、マスコミの報道がヒートアップ、またSNSを中心にキラを断罪する風潮が強くなり嫌がらせを受けるようになる。

抵抗するキラ親子だったが、膨れ上がった言われようのない憎しみは根負けした親子は逃げ回る日々を送る事に。

それから半年後、父親に捨てられたキラと母親は名前を偽り小さな町でひっそりと暮らしていたが、キラが通う学校でいじめを目撃する。

 

不条理な正義に追われたキラ親子に安らぎの日は訪れるのか?

 

確かにキラがやってしまった行動は許されない事ですが、その事を許せない第三者が加入することの狂気を見せられる展開なっています。

家に張り紙、落書きはされるは見ず知らずの人に殴られるはとまさに地獄。

SNSの演出を効果的に使っているのも面白い点で、過激な発言が相次ぐ前半と他に話題が移ったのか終盤ではあまり盛り上がっていないのもやるせなさを感じさせます。

一方、中盤は逃亡の日々を送るキラに出来た友達との話。

微笑ましいシーンですが、そこでも色々刺さるものがあります。

 

見どころは後半、罪と向き合うキラ。

自分の中で決着をつけるべく殺した相手と向き合う事に。

事故現場、そして相手の家に向かうけど?

分かっているつもりだけど、心の奥底ではそれが出来ない苦しみがあります。

 

気になった点はキラの取り巻きのその後が不明な事。

キラと同じく罪に問われ無罪となったのですが、その後登場するのはじりめられっこの一人だけ。

いじめっ子だった他の二人のその後が気になるところですが、まあ、同じような地獄になっていそうです。

 

今日の自粛警察を始めとする同調圧力にも通ずる本作。

ニュースやワイドショーに煽られ犯人や容疑者を憎み、犯罪を犯した悪党は何をされてもしょうがないという考えは非常に危険です。

相手を憎む理由があるのは当事者と関係者のみ、第三者には相手を裁くことは勿論、排除する権利なんて無いに決まっています。

 

決して面白い作品ではありませんが、今の日本の闇を突き付けてくれます。

 

 

 

SNSが使われたという共通点でチョイス。

奇妙な殺人事件を追うライターと犯人と思われる女性の行動歴を追う展開。

ライターが第三者という点も本作の接点でもあります。