悩んでいる。
マトちゃんの奇声が酷い。
朝から晩まで事あるごとに
キャーッキャーッ!
アッアーッ!
キイィーーーーッ!
と奇声を上げている。
空腹、眠い、抱っこ、と言った具体的な欲求がある時はすぐに対応できて収まるのだが、困るのはそれ以外の時だ。
うるさいよ、静かに、と言っても理解のできないマトちゃん。
耳をすませば外でも聞こえるような甲高い奇声は、ここ二週間ほどでひどく頻繁になった。
生後8ヶ月で病気をしてから現在まで、奇声を上げる時期というのか、ブームというのか、「ここのところ騒いでいるなあ」と思う時期が来ては去り、
今回は五回目のブーム到来だ。
しかし今回は本当に酷い。
二歳を過ぎて、体の発達とともに声も大きくなってきたようだ。
自宅ではまだ良い。
耳を澄ませば外でも聞こえるかもしれないが、隣家まで聞こえようはないからだ。
家族だけ耐えれば済む。
しかし最近では外出先で突然に「キャアーーーッ」と甲高い奇声を上げて周囲から不審な目を向けられることが多くなり、
わたしはそのたびに「すみません」と小さく謝りながらそそくさとその場を離れる。
食料品を買い出しに出かけてもゆっくり見ることができず、生協の宅配の利用が多くなった。
シオちゃんの行事などに参加するときも、彼が騒いで周りにご迷惑をお掛けしないかということばかりが気になり、気もそぞろ。
図書館に行きたがるシオちゃんを仕方がなく連れて行っても、突如騒ぎ出すマトちゃんを抱きながら「もう、マトちゃんが騒いだから帰ろう」と、本を読んで読んでと泣くシオちゃんを宥めながらやっと帰る。
役場や保健センターに用事を済ませに行っても、電話をしていても、時折上がる「キャーッ」の声に相手の声がかき消され会話が途切れる、集中できない。
周りから、どう思われているだろう。
迷惑がられているだろうか。
障害児が騒いでいる、と思われているだろうか。
躾のなっていない、と思われているだろうか。
黙らせろ、場所を弁えろ、出歩くな…。
周りからそう思われていると思うと本当に辛く、外の世界に出ないでずっとずっと家の中とネットの世界で過ごしていたくなる。
ニコニコして「気にしないよ、大丈夫よ」と言っている人たちだって、心の中では「煩いな、迷惑だな」と思っているのじゃないの?
「近寄らないで、こちらに来ないで」と思っているのじゃないの?
そう思えて。
これが、いつまで続くのかと考えることが、一番辛い。
まだ二歳だから世間様に許される部分があるのだと思う。
でも、三歳、四歳、五歳、…十歳になってもこうやって奇声を上げ続けていたら?
世の中の人たちは奇異の目で見るでしょう。
迷惑だ、と露骨な態度を取るでしょう。
マトちゃんのことを、迷惑だなんてどこの誰にも思われたくない。
でも、誰かに迷惑やご不便をかけてしまうのかもしれない…。
そう考えるとわたしは、たいへんに心苦しく、時には誰の手も届かないところへ彼と二人きりで逃げ出してしまいたくなる。
ただ、誰にも迷惑を掛けずに過ごせるどこかへ…。
ロディと戯れる。