洞窟おじさん、その2 | かもさんの山歩き

かもさんの山歩き

毎週末、山を歩いてスケッチしてます。
漫画も描きます。

今日の絵ハガキ

雪とスズメ。

 

食べ物を得るのは大変だった、

 

ヘビやカエル、ネズミ、コウモリ何でも食べたが、獲物がとれずに二三日食べられない時もあり、疲れから山を下りる事を考え始めた頃、シロがウサギをくわえてきた。

 

ウサギの肉は美味しかった。

 

それからはシロと近くの山々をまわり、兎狩りを続けた。

 

ある時、うさぎを探していたら、イノシシに襲われた。

 

イノシシの獣道に入り込んだらしかった、

凄い勢いで向かってくるので、その場は逃げた。

 

獣道に穴を掘り、穴の底に竹を削った竹槍を斜めに刺した。

 

イノシシを怒らせて、落とし穴まで逃げて、落とし穴を飛び越えると、イノシシは穴に落ちて竹槍に刺されて死ぬ。

 

 

しかし、イノシシは重くて穴から引き上げられない。

その場で解体して、肉は学生カバンに入れて洞窟まで運ぶ。

イノシシの肉はたくさんあり、1人と1匹はすぐに満腹になる。

 

食べきれない肉は干し肉にして保存する。

 

イノシシ狩りは命がけだったが、飢えに苦しむことはなくなった。  

 

経験を積んで、山菜やキノコ、魚や獣の捕り方、解体、料理の仕方が巧みになった。

 

何年、足尾の洞窟に暮らしたか、加村さんにもハッキリしない。

 

その間、加村少年の風体は異様なものになっていた、

 

着たきりだった学生服は擦り切れ穴があき、ズックも同じだ。

 

それを獣の皮で繕い、ズックの底は獣の皮をあて、それをツタなどで縛っている。

 

どう見ても原始人である。

 

その異様な姿は、時折、山にはいったハンターに目撃され、追いかけられた事もある。

 

加村さんが山を下りる決心をしたのはシロの死だった、

 

何度目かの冬を越して、そろそろ雪が溶け始めた頃だた。

 

前の日から、シロはクーンクーンと甘えた声をだして、洞窟に入ると、加村さんの膝に乗って動こうとしない。

腹が減ったのかとイノシシの肉を与えたが食べようとしない。

翌朝、シロは冷たくなっていた。

 

 

今までの数年は、シロがいたから寂しくはなかった。

 

シロがいなくなって、唯一の友達をなくして、本当の1人ぼっちになった。

 

加村さんは其の日に足尾の洞窟を出て,以後30年にわたり、関東各地を山伝いに放浪することになる。

長くなるので、続きは明日。