今日の絵ハガキ
雪とスズメ。
食べ物を得るのは大変だった、
ヘビやカエル、ネズミ、コウモリ何でも食べたが、獲物がとれずに二三日食べられない時もあり、疲れから山を下りる事を考え始めた頃、シロがウサギをくわえてきた。
ウサギの肉は美味しかった。
それからはシロと近くの山々をまわり、兎狩りを続けた。
ある時、うさぎを探していたら、イノシシに襲われた。
イノシシの獣道に入り込んだらしかった、
凄い勢いで向かってくるので、その場は逃げた。
獣道に穴を掘り、穴の底に竹を削った竹槍を斜めに刺した。
イノシシを怒らせて、落とし穴まで逃げて、落とし穴を飛び越えると、イノシシは穴に落ちて竹槍に刺されて死ぬ。
しかし、イノシシは重くて穴から引き上げられない。
その場で解体して、肉は学生カバンに入れて洞窟まで運ぶ。
イノシシの肉はたくさんあり、1人と1匹はすぐに満腹になる。
食べきれない肉は干し肉にして保存する。
イノシシ狩りは命がけだったが、飢えに苦しむことはなくなった。
経験を積んで、山菜やキノコ、魚や獣の捕り方、解体、料理の仕方が巧みになった。
何年、足尾の洞窟に暮らしたか、加村さんにもハッキリしない。
その間、加村少年の風体は異様なものになっていた、
着たきりだった学生服は擦り切れ穴があき、ズックも同じだ。
それを獣の皮で繕い、ズックの底は獣の皮をあて、それをツタなどで縛っている。
どう見ても原始人である。
その異様な姿は、時折、山にはいったハンターに目撃され、追いかけられた事もある。
加村さんが山を下りる決心をしたのはシロの死だった、
何度目かの冬を越して、そろそろ雪が溶け始めた頃だた。
前の日から、シロはクーンクーンと甘えた声をだして、洞窟に入ると、加村さんの膝に乗って動こうとしない。
腹が減ったのかとイノシシの肉を与えたが食べようとしない。
翌朝、シロは冷たくなっていた。
今までの数年は、シロがいたから寂しくはなかった。
シロがいなくなって、唯一の友達をなくして、本当の1人ぼっちになった。
加村さんは其の日に足尾の洞窟を出て,以後30年にわたり、関東各地を山伝いに放浪することになる。
長くなるので、続きは明日。