今日の絵ハガキ。
大正時代の初荷風景。
私は根っからの怠け者らしい。
幼い時に憧れた職業。
馬車引き。
子どもは乗り物が好きだが、私の場合はそうではなさそうだ。
他の子どもはバスやトラック、機関車の運転手に憧れたが、私は馬車引きのおじさんがのんびり働いているようで、楽チンな職業にみえたのだ。
実際、近所に製材所があり、そこまで木を運んできた馬車引きのおじさんたちは、私の生家の大衆食堂で焼酎を飲んでゆっくり帰って行った。
小学4年生の時の国語の教科書にあった物語。
「天下一の馬」
甚兵衛という馬方がいた、
至いたってのんき者で、お金がある間はぶらぶら遊んで、お金がなくなると働く。
仕事というのは、山から出る材木を荷馬車に積み、黒馬にひかしていた。
冬のある晴れた日に、甚兵衛はいつもの通り、馬車をひいて、とある崖がけの下までやって来た時のこと、崖の裾のくさむらの中から、猫くらいの大きさのまっ黒なものが、いきなり飛び出して来た。
それは山小僧という悪魔だった。
ぴょこぴょこおじぎをして「お願いですから、助けて下さい」
この悪魔は、一週間ばかり前の暖かい日に、五六人の仲間と一緒に山から出て来て、田畑の中を駆け廻ったり土の下にもぐったりして、おもしろく遊んでいた。
ころが、遊びにまぎれてうっかりしてるうちに、一匹の猟犬からふいに尻尾へかみつかれた。
悪魔に一番大切な尻尾の先を、半分ばかりかみきられて、宙を飛んだり物に化ばけたりする術を失ってしまい、その上仲間の者とはぐれてしまって、仕方しかたなしにその崖下のくさむらに隠れていた。
そして一週間の間、飢えと寒さと痛みとに苦しめられている。
「あなたの馬は実に立派です。
それで、その馬の腹をしばらく貸して下さい。長い間ではありません。二月いっぱいまででいいんです。三月になればもうだいぶ暖かになりますし、それまでには尻尾の傷もなおりますから、私は自由に飛び廻れるようになります。
私が腹の中に住んでる間は、あなたの馬を十倍の力にしてあげます。どうぞお願いします」
甚兵衛が馬の口を開けてやると、いきなりぴょんと飛び込んで、腹の中にはいってしまった。
それからは、黒馬はたいそう力持ちになり多くの木材を積んだ車をひいて何度も町まで往復した。
甚兵衛が追いつけないほどの早さなので、甚兵衛は荷車に乗ったままだ。
怠け者の私は、うっとりとその物語を読んでいた。
以前、小学校2年の時の教科書にあった夜のバスを紙芝居にした。
今度はこの天下一の馬を紙芝居にしてみよう。