今日のスケッチ。
フランス、タルヌ県サール村。
黒澤明の初監督作品は、昭和18年の「姿三四郎」で、この作品が大ヒットして、今につながるスポ根物の原型でもある。
この作品で主役を務めたのが、藤田進だ。
昭和期において、黒澤明監督作品の主演を多数務めるなど、日本映画界の大スターの一人であった。戦時中は戦意高揚映画に、戦後も戦争映画に多く出演した。
九州の久留米出身で、セリフのアクセントにはどうしても北九州のなまりが抜けない。
そのシャベリと武骨な演技が、男らしい印象を出したのだと思う。
そういうところが黒澤さん好みだっただろう。
当初は大部屋俳優だったが、昭和18年には黒澤明の『姿三四郎』に主演。
その武骨な動作は映画とマッチし、その名は黒澤と共に広く知れ渡ることとなる。
「用心棒」の 本間先生役も印象に残る。
本間は、清兵衛一家に1両2分で用心棒として雇われている。
しかし、三船の三十郎が清兵衛と対立する丑寅一家のヤクザを三人斬って腕前を見せると、清兵衛はすぐに50両で三十郎を雇う。
1両2分で雇われた本間は、50両で雇われた三十郎の前では少しいじけたような姿を見せる。
そのいじけ方、すね方がカワイくて、観客の笑いを誘う。
清兵衛は、三十郎と本間がいる今のうちに、丑寅との決着をつけようと喧嘩支度をする。
三十郎が二階で、さあこれからどういう行動をした方が、双方を戦わして互いに自滅に追い込むことができるか思案している、
その時、本間は裏庭を横切って塀を乗り超えようとしていた。
塀の上の本間と二階の三十郎が目が合う。
本間はニコリと笑って手を振る。
三十郎も釣りこまれて手を振る。
本間は、手荷物をぶら下げた刀を担いで、桑畑の間の道を逃げていく。
逃げる途中で振り返って、三十郎に笑みをみせて、スタコラ逃げていく。
三十郎は面白がっている。
黒澤映画には、滑稽な場面は少ないが、用心棒と椿三十郎では笑う場面がいくつもあり、私はこの場面が一番面白かった。
しかし、この時の藤田進の画像が、ネットを探したがなかった。
誰もあの時の藤田進の演技に注目しなかったのかな。
ところで、この武骨な藤田が、戦後、恋愛映画に出ていたはずだ。
ところがウイキペディアで藤田進の主演映画にそれらしいのがない。
調べて見たら
「誰か夢なき」
富田常雄原作の小説およびそれを元にした映画とその主題歌である。
D級映画とされているので、載らなかったのだろうか。
映像がある。
この時代、女優が肩を見せる程度でも、『脱いだ』と騒いだのだ。
恋愛に縁がない私は、恋愛映画はきらいであるが、藤田進の恋愛映画はみてみたい。