今日のスケッチ。
江戸川。
野菊の墓の小径。
絵はがき。
カリヨセウツギ。
川崎 長太郎、小田原市出身。
神奈川県立小田原中学校中退。初めアナーキストの周辺で詩作をしていたが、その後、徳田秋声、宇野浩二に出会い、その系譜を継承する私小説作家となる
。1935年に「余熱」で一度芥川賞候補になるも、長く不遇の時代が続き、実家の物置小屋を住処にして貧しい生活を続けた。
1950年代に「抹香町」「鳳仙花」などの作品で、物置小屋で暮らしながら私娼街に通う初老の男と娼婦との触れ合いを哀感をもって描いて好評を博し、一時のブームとなる。
物置小屋から、抹香町の魔窟をうろつき、自分の子供のようなウエートレスがいる喫茶店(アルコールのでるカフエではない)に通っては、物欲しそうな顔で娘たちに話しかける。
そういう小説は、興味深くも、また惨めなところに、同感するところもあった。
ところが川崎さんには、小田原の花街、宮小路を舞台とする一連の作品もある。
川崎さんは、1人の芸者君栄に夢中になり、稼いだ金をつぎ込む。
もとろん、川崎さんは下心がある。
君栄は芸事のできない芸者だ。
そういう芸者は、金で転ぶ不見実(みずてん)芸者で、娼婦と変わらないところもある。
しかし、君栄は、芸者のプライドがあり、純情な川崎さん、まともに口説けない。
その君栄に純情に惚れていて、清い関係である。
結婚も考えたが、川崎さん、当時三文作家である。
自分一人が食えないのに、君栄には養親などの扶養家族があるのだ。
そして君栄には愛人がいる。
新進気鋭の映画監督、小津安二郎である。
すこし酔ったところで、川崎さん。「今の季節、松樹園はいいだろうね」と女に水を向ける。
「いいでしょうね」の返事があって、それ以後話が続かない。
松樹園は町はずれにある高級旅館である。
もちろん、彼女は川崎さんがそこに誘っているのがわかる。
しかし、はっきりと誘う言葉が出ない。
時間がきて、君栄は、憐れむような眼を残して座敷から消えた。
金もない、相手にされないのが分かっているから口説けない。
それでも金が続く限り、彼女を呼ぶ。
川崎さん、惨めすぎる。
女に憐れまれたら、絶対に好いてくれない。
その彼女の恋人は、スター的映画監督の小津安二郎である。
長くなるから続きは明日。