
Volnay 1994
国 フランス
生産者(社) ラ・プスドール
産地 ブルゴーニュ
地域 コート・ド・ボーヌ
地区 ヴォルネイ
品質等級 一級
葡萄品種 ピノノワール
種類 赤
1994年:ブルゴーニュ地方はまずまずの出来で、柔らかく果実味に富んでいます。
《テイスティング 参考》
◎色:明るい赤、エッジはピンク、足長め
香:赤いベリー、萎れたバラ、枯葉
味:辛口、酸がしっかり、タンニン丸くなっている
とても優しく上品で飲み頃
時間が経つとタンニンがやや強くなり、複雑さも増した
開栓したコルクはなんとプルミエクリュ カイユレ!(2011)
※プスドールは・品質に対して非常に高いこだわりがあるため、(ラベルには全く記載がないのですが)時々見かけられる格下げ品(デグラセ:中身は正真正銘の1級ワインなのに、ラベルとお値段は村名ワイン)があります。
ラベルこそ村名ですが、1級畑のぶどうだけをミックスして造った、正真正銘の1級ワインです。
ヴォルネイ随一のエレガントワインになる60ウーヴレと、しっかりした骨格を持つカイユレ、濃密で深い味わいのブス・ドールに、繊細なクロ・ドーディニャック。
こんなそうそうたる1級ワインをミックスさせて、ヴォルネイ1級それぞれの長所を引き立てあった結果、プス・ドールは素晴らしいワインを生み出しました。
こんなすごいワインがあると知れればリリース直後に一瞬で姿を消してしまうものですが、プス・ドールは「プロモーションにお金をかけるぐらいならワインに使う」と言うスタンスを貫くため、このワインの存在自体をご存知ない方がとても多い。
抜いたコルクにある「VOLNAY 1er Cru(ヴォルネイ1級)」の刻印がその証しです。
コルクを見ると畑名が刻印されています。大当たりはカイユレ60"クロド60ヴーヴレ"。
ブルゴーニュではこんな風に、「ボトルの中身がラベルの格付け以上のワイン」ということがたまにりあります。
《ヴォルネイのワインついて》
ヴォルネイは、ブルゴーニュ、コート・ド・ボーヌ地区の中心地、ボーヌ市から南西へ4km下ったところにある人口300人の小村です。
ヴォルネイは、コート・ド・ボーヌ地区において、繊細で女性的な赤ワインを産出する銘醸地として知られ、Grand Cru (特級畑)こそないものの、30区画(クリマ)もの1er Cru (1級畑)を擁する評価の高い秀逸なアペラシオンです。
ヴォルネイの数ある1er Cru (1級畑) のなかでも、「クロ・デ・デュック」、「カイユレ」、「サントノ」のクリマはとりわけ評価が高く人気があります。
中世の時代より、ヴォルネイのワインは評価が高いことで知られています。
歴史上の人物では、フランス王国によるフランス統一と中央集権を進めたルイ11世、歴代のブルゴーニュ公、フランス絶対王政の絶頂期を築いたルイ14世などが愛したワインとして知られています。
とりわけルイ11世は、ヴォルネイのワインを好み、1477年にフランスを統一し、ブルゴーニュ公国からヴォルネイの畑を継承すると、全収穫量を接収して宮廷のワインとして用いるほどでした。
しばしばヴォルネイの地に足を運び、ヴォルネイの村には、今でもルイ11世ゆかりの建物などが残っています。
ヴォルネイの土壌は、ムルソーからサシャーニュ・モンラッシェにいたるブルゴーニュで最も偉大な白ワインを生み出す土壌と同じ基盤層の上にあります。
ジュラ紀に生成された石灰岩と粘土質の基盤層は、シャルドネの白ワインとピノノワールの赤ワインの生産に適していて、ワインはフィネス溢れるものとなることで知られています。
女性的なワインを産出するヴォルネイ(Volney)は、ワインのフィネス溢れるスタイルから、コート・ド・ボーヌ地区で、最も男性的な赤ワインを産出するポマールとよく対比されます。
鮮やかなルビー色、明るく澄んだガーネット色、スミレ、チェリーのような繊細なアロマの芳香、溌剌とした穏やかな味わいが特徴、ヴォルネイのワインはフィネス溢れ、高貴さを感じる秀逸なワインとして知られています。
ヴォルネイのワインは、率直な味わいで、かなり早い時期から味わいが開花するスタイルといわれています。
長期熟成を待たずとも、比較的早いうちからエレガントでフィネス溢れる味わいを楽しむことができることもヴォルネイの魅力となっています。
ブルゴーニュワインに対して純粋さや優しさ、繊細さというイメージを持つならば、ヴォルネイこそが最高のワインかもしれません。
「もし、ブルゴーニュワインのことを全く知らず、造り手も、畑のことも、各年のブドウの作柄についても見当がつかないのであれば、コート・ドールのどの村のものよりも『ヴォルネイ』のワインを選ぶのが最も手堅い選択である。」(マット・クレイマー)
この言葉は、ヴォルネイの特徴を端的に表現しています。
ヴォルネイの造り手たちの水準は高く、また、村の畑の半分以上が1級畑に指定されるなど土壌や日照などぶどう畑の自然条件も恵まれています。
生産者水準の高さ、自然条件の良さ、繊細で優しいワインのスタイル、すなわち、ヴォルネイのワインを選択すれば、飲む人の期待通りに、ブルゴーニュらしい優雅なワインを楽しむことができることを意味しています。
19世紀の本をみても、ヴォルネイに対して「繊細」「フィネス」「純粋」「優しい」といった言葉が並んでいるといわれ、これらの言葉こそブルゴーニュらしさだ、という価値観を有する者にとって、ヴォルネイは最高のブルゴーニュワインのひとつだと思われます。
《Domaine de la Pousse d'orについて》
ドメーヌ・ド・ラ・プス・ドール。その歴史は1505年、ブルゴーニュ公の時代までさかのぼり、かつては侯爵や貴族が所有、19世紀には当時のDRCのオーナーが所有していたことでも知られる名門ドメーヌ。
かつてロマネ・コンティのオーナーであったデュヴォー・ブロシェ家の所有地の一部だったために、所有する15ヘクタールの畑は、グラン・クリュとプルミエ・クリュのみという質の高さでは群を抜きます
1964年、投資家たちにより再構築され、その時に醸造長となったのがヴォルネイ「プス・ドール」の名を世に高からしめた偉大なる醸造家、ジェラール・ポテル。
やがて、ポテルが株式の半分を取得し、もう半分をオーストラリアの投資家たちが所有していたが、1997年にポテルが急死。
ドメーヌは売りに出され、これを購入したのが現オーナーのパトリック・ランダンジェである。
彼は医療機械、とくに整形外科のビジネスで成功した人物だがヴォーヌ・ロマネに別荘をもっており、いつかは畑を買い、この別荘をドメーヌにしたいと夢想していた。そんな折、プス・ドール売却の話を耳にしたという。
手に入れるや否や、200万~300万ユーロの資金を投じて、醸造施設や発酵用の木桶、他の設備も一新。1999年に完成した醸造施設は6層構造になっており、収穫から醸造、樽熟成、瓶詰めまで、ポンプを一切使わず重力でブドウ果汁やワインが流れる仕組みになっている。
ランダンジェが投資したのは設備だけに止まらず、ブドウ畑の拡張も盛んに行われている。
1998年にコルトン・クロ・デュ・ロワ(1.45ha)とコルトン・ブレッサンド(0.48ha)を手に入れ、2004年にピュリニー・モンラッシェ1級カイユレ(0.73ha)。
そして2008年にはシャンボール・ミュジニーのドメーヌ・モワンヌ・ユドロを買い取り、村名シャンボール・ミュジニー(1.41ha)、1級のグロゼイユ(0.52ha)、フースロット(0.42ha)、シャルム(0.19ha)、レ・ザムルーズ(0.20ha)、そして特級ボンヌ・マール(0.17ha)をラインナップに収めた。その代わり、2009年にサントネイ1級のグラヴィエールは売却。
ブドウ栽培はすべてビオロジック農法がとられている。
赤ワインの醸造では木桶とステンレスタンクを併用し、7日間の低温マセレーションの後、日に2回のピジャージュをしながら長いキュヴェゾンを施す。樽熟成は1級で1/3、特級で40%前後。トータルで15ヶ月間。
白ワインは圧搾後、24時間のデブルバージュを経て、樽発酵、樽熟成。ただしただの小樽ではなく350リットルの中樽を用いる。新樽比率は50%。
ドメーヌ・ド・ラ・プス・ドールのワインはピュアで洗練されている。
果実味、酸、そしてタンニン、それぞれの要素が高次元でバランスよくまとまり、若いうちから十分に楽しめ、熟成にも耐え得るタイプだ。
とくにブルゴーニュ大公家が所有し、その後フランス王家のものとなったとされる、このドメーヌのモノポール「クロ・ド・ラ・ブス・ドール」は、力強さとエレガンスのせめぎ合いが面白いワインである。
さまざまなアペラシオンが増えたとはいえ、ヴォルネイを語る上で欠くべからざるドメーヌのひとつ。