Blue Stardust ( I-novel SF )・・・12 | mcode

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人文のジャンル:アート・科学・哲学・文学・音楽

  

   スペース・トラベラー 星の旅人
   

(デジャヴは時間の輪、タイムループ)
(そして未来に跳躍はタイムトラベル)
(でも科学的には、タイムループはSFや既視感、時間旅行も
不可能だわ)
(タイム・ウエーブのひずみがあるのみね)
(時間は直線上に前進あるのみ)
(わたしの理論どおりに、宇宙の時間がインフレーション加速
しているんだわ)
(しかも、らせん状で、ひとつの方向に前進している)
(らせん状の変化が、デジャヴと錯覚したんだわ)
(わたしだけが、わたしの時間と身体だけが、現実の宇宙、加
速する宇宙から、はみ出てしまっているのね)
(今は、わたしの1日が約100年に相当する)
(わたしが、老化も肉体の衰えもないのは、見えない力で護ら
れているんだわ)
(わたしの故郷の白ロシア、ベラルーシの南の、チェルノブイ
リ原発事故が1986年)
(わたしの少女時代の空白の時間も関係してる)

 1986年 チェルノブイリ原発事故。
 1996年 倫子の海難事故。
 2007年 ブルーに出会った年。
 2045年 わたしが最初に目覚めた年。 
 ・・・・年 2度目は乱雑なゆらぎと波動現象の中の目覚め。
 2116年 そして3度目の目覚め。

(時間の波動は、空間の波動、乱雑なゆらぎや波動の系は、イ
ンフレーション的に質量が減少するのと同時に、時間は反比例
して加速する)
(絶対零度系、超伝導空間系の方向に、わたし以外の外界が加
速して進行しているんだわ)
(わたしが加速して遠い宇宙に行くのではなく、わたし自身が
変化しないで、加速する時空にいるだけでいいんだわ)
(相対性の時間のひずみに、わたしがいるんだわ)
(ブルー・スターダストがわたしを護ってくれているんだわ)
まり子は病院のバスルームで朝シャンをしながら考えていた。
いつも、インスピレーションと・・・・・・はバスタイムだった。
(ん・・・・・・は独り泣きよ、あたしは人前で泣くの嫌い」
 
 マ・リ・コー

「キャー」

「うふふっ ごめんねえ、プライバシー侵害だったあ」
ブルーであった。
「もうう、とつぜん。出てこないでっ」

「ん・・・・・・あれ、れれ」
「ロッカーのハナコさんじゃーないのよねっ、あたし」

「まり子さんの考え、ちょっと違うかなあ」
「あなたはもう肉体がないのよ、意識だけ」
「だから壊れないの、女性の大敵、老化もねっ」
「セクシーなボディーだったのにねえ」
「もう、できなくなっちゃうわねっ」

「なな、なによー、それ、失礼ねっ」

「わたしたちは、あと数ヶ月もすれば、360億光年の彼方、
わたしの次元に到達できるわよう、うふっ」
ブルーは小首をかしげてにっこり。


  夏の夜 
  天空の川に 
  十字綺羅星の光翼が
  飛翔する夜
 
  月は 
  白鳥座と青い星の
  狭間に光り輝く
 
  月が
  星の光を凌駕する夜
 
  宇宙の彼方で 
  流星が光り輝き
  流星は
  月の光を凌駕する




   ブルー・スターダストの旅立ち
  

 バスルームのシァワーが光のシァワーになり、まり子に降り
注がれた。
光の粒子はらせん状に渦をまき、まり子の全裸の身体を包みこ
むように光のコクーン(まゆ)になった。
コクーンは球体になり、パッと膨脹して消えた。
後には、オーロラの光のカーテンが波うち徐々に消えていった。
バスルームにはシャワーの水滴だけが降り注いでいた。
地上の涙のように降り注いでいた。

 宇宙は2度目のインフレーション膨脹を完了させ、最後のイ
ンフレーション膨脹に突入しようとしていた。

 まり子は、ブルー・スターダストの光の気泡に浮遊していた。

まり子は意識が覚醒するなかで、透きとおるような眼差しで、
しっかりと目の前の空間を見据えようとした。
光が満ちあふれ、全体のサイズは分からなかった。

「まり子さん、ごめんねえ、またまたとつぜんで」
ブルーが今度は、光の輪郭ではなく、可愛らしい女性の姿にな
って現れた。

「あらーらー、可愛らしいのらしいの曖昧な表現は何よ!」
ブルーが凛とした態度で、時間のひずみに存在するまり子の意
識に噛みついた。
(あっ、えっ・・・・・・)と、まり子。
 
「まり子さん、これから起こること、驚かないでねっ」
ブルーは小首をかしげて可愛らしく微笑んだ。

「のりこー」
またまた、とつぜんの出来事、倫子の彼が登場した。
縁日の待ち合わせをすっぽかした葉太だった。
「キャー」
「あたし、あたし全裸なのよっ、シャワータイムじゃないけど」
「ブルー、何とかしてっ!」
肉体とは不便なもの、それとも羞恥心が不便なのか・・・・・・。
見せたいけど、隠したい気持ちが勝っているまり子であった。
まり子は両手で胸だけは隠した。
(だって、同時にぜんぶ両手で隠せないでしょう・・・・・・)と、
まり子は真空の中で呟いた。
女の心理は、自信があるところは隠したくなるようだ。

(時々ね、ほんとうは、自信あるところは見せたいの・・・・・・)
セクシー過ぎるのだった。
嫌いなタイプと、同姓の軽視する視線が気にかかるらしい。
(ん・・・・・・ヒップラインも自信あるわよ)
(足も追加申告するわ、足が一番いいみたいよ)
(でも、ないしょよ、だって、同性に嫌われたくないの)
(言い訳じゃなくて、女のセクシーさって、ファッションで、
お洒落なのよね・・・・・・)
どうやら、まり子の深層意識のつぶやきのようである・・・・・・。
(もう、そこまであたしのプライバシーを公開しないで!)

まり子が気が付くと、ちゃんと洋服を着た葉太が手の届くと
ころに立っていた。
「倫子、髪の毛、染めたの・・・・・・」
「瞳の色も違うし、青色のコンタクトしてるの・・・・・・」
葉太は、まり子の顔をのぞき込むようにして尋ねた。
(なによ・・・・・・本物の元カノなら、久しぶりにご対面なのに
・・・・・・その態度・・・・・・ああ、会いたかったよう、とか、なん
とか、さっ・・・・・・)

「全裸の、この人だれよー」
まり子の背後から女の声がした。
まり子が振り向くと、赤毛で真紅の瞳の倫子が立っていた。
二人はハッと息をのんだ。
瞳孔を大きく見開き見つめ合った。
二人とも、髪と瞳以外は全く同じで、一卵性双生児のようであ
った。
「ああ、あなただれよ!」
ふたりの声がダブった。
「ダメッ!」ブルーが叫んだ。
「二人ともそれ以上に近づかないでっ!」
「あなたたちは、スピンとアイソスピンの関係にあるの」
「お互いに触れあったら、光の粒子になってしまうわ!」
「意識までも、消滅してしまうのよ・・・・・・」

「ところで、あたしたち、いま、どの辺にいるの」
まり子が冷静な眼差しでブルーに尋ねた。
「ごめんねえ 360億光年の宇宙・・・・・・超えちゃったの」
「うふふ」
「えっ、うっ、あーあ」
相変わらず葉太はアホっぽい。

「ブルー、あたしたちは、どこに向かっているの」
「宇宙の深淵よー、うふ」
またしても、小首をかしげ、笑って誤魔化すブルーであった。
 解説
 OUF(ウフ、仏語では、やれやれ、うざったいの意)

「宇宙の深淵はね、宇宙の終わりであり、初まりなのよ」
まり子が自信たっぷりに解説をはじめた。
「そこは、負のエネルギーホールなのね」
「その外側は、正エネルギーボイドの、電子素子ボイドと、
そのボイドを包みこむように、外側に陽電子素子ボイドの次元」
「物質的次元はスピン、意識的次元はアイソスピン」
「光子的なエネルギーは中間の次元なのね」
「ピンポーン 正解!さすが、まり子さんね」
「才色兼備、美人薄命」にこっとブルー。
「ちょっ、ちょって待ってよ、最後の美人薄命はやめて!」
「それにブルーのピンポーンって、死語よ」とまり子。
「だって、わたしたち、死後の存在みたいよー」とブルー。
「ブルーって、ロッカーのハナコさんみたいねえ」と、まり子。
「もう、それ言ったら許さないんだから!」
口を尖らせるブルー。
「あたしは物理的な宇宙を超越した存在、知的生命体よ」 
「生きてるの、あたし、生きているのよ」
「あれれえ、このせりふ、まり子の口癖よねえ」
「もう、ブルーたら」


  


 スペース・ファンタジー♪
    オペラ・トゥーランドットの曲に乗って♪♪


 ブルーが全員に伝えた。
「もうじき膨脹宇宙ボイドの外側に出るわ」
「3回目の、インフレーション膨脹が起きる前に、この宇宙ボ
イドから脱出よ」
「膨脹する細胞膜のような、この宇宙ボイドから脱出よー」
「外側の絶対真空の外宇宙に出るわ」
「出たら、斥力波の第3波がやって来るわよー」
「さあーみんな覚悟していてねえ」
「絶対真空の外宇宙だから、振動がゼロ、抵抗がゼロ」
「光の速さを超え、無限速度に到達するのよーーー」

「ヒャッ ホーーーーーー」全員が歓喜の声をあげた。

  トゥ ララー ♪ 
          ル ラ ラー ♪♪
 
  ツゥーウ ラ ラー ♪  
            ルウ ラ ラー  ♪♪

「こらがドップラー効果ねえ」まり子は目を輝かして言った。
「宇宙の中心が、まるで真紅のバラのようね」
「やがて光の波長は、直線になるんだわ」
「そして、光のない暗黒の視界が広がる」
「過去は、暗黒の空間に覆われるのね」
星と星の空間が大きくなればなるほど、遠ざかれば遠ざかるほ
ど、ブルー・スターダストは外宇宙にむかって速度を上げてい
った。
「深淵の宇宙は光速をはるかに超えるわよ」とブルーが言った。
前進する方向からは、さまざまな色彩の波動が襲来して、幾重
もの層になり、網膜に飛び込んでは通りぬけ、消えていった。
バイオレットからパープルに、そしてブルー系の色に変わりは
じめた。
全員の身体も透明の光に変わりはじめていた。
ブルー・スターダストは、限りなくゼロに近い微粒子、光の点
に変わろうとしていた。
やがて、前方の色彩の光が消え、透明な光になり、ブルー・ス
ターダストは暗黒の闇に閉ざされた。
つぎの瞬間、インフレーション膨脹の第3波の衝撃波に襲われ
た。
全員の意識は、苦痛よりも、窒息するような恍惚感、エクスタ
シーの時間に漂った。
時空に浮かぶ小舟のような空白のひずみに漂った。
 
 永遠とも感じられる時間がおわり、前進する方向に光のピン
ホールが出現した。
そして、いっきに光の点は透明な光の球面に変わり、光球の中
側にはリングがふわふわと浮遊し、そしてまた、小さな光の気
泡のようなものが、さまざまな形や大きさに変化しては、オー
ロラのように波うっては消えていった。
そしてまた、虹のような光のリングは三重の光の球体になって
は、リングに散乱していた。
無限の空間の光球と永遠の時間の狭間で、なんども、なんども、
あれゆる空間で同じことが繰り返されていた。
意識がイメージするだけで、目の前に地球の光景が全天を覆い
尽くすように立体映像が出現した。
ブルーが説明した。
「本物よ!」
まり子の潜在意識の中に眠る記憶、白ロシアの故郷の風景であ
った。
ベラルーシの受難、白ロシアの悲劇の光景であった。