Blue Stardust ( I-novel SF )・・・9 | mcode

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   コンタクト
 
 
 ブルー色の光が宙にうかんでいた。
 
 光の泡のように

 青い小さな星のように
 
 まり子の手の中で・・・・・・
 
 まり子は「はあ」と声を肺に吸い込みフリーズした。

 ・・・・・・


「うふふっ」
「いつまでフリーズしているの」
「息しないと死んじゃうわよ!」
「あなたの場合は、フリーズドライじゃなくて、才女だから、
フリーズウイットね!」
光の球体、ブルー・スターダストから、まり子の頭の中で反
響するようにきこえてきた。
まり子は今度は息を吐き出しながら声を肺から押し戻した。
目を大きく見開き身動きができないでいた。
「あら、らあ こんどはバービー人形・・・・・・」
「ああ・・・・・・あなたは何なの」まり子はフリーズ状態で息もせ
ず声だけ出した。

 しばらく沈黙が続いた。
まり子は、まるで銀河系のまっただ中にいるような感じだった。
少しずつ、まり子は冷静になりかけていた。

「まり子さんらしくないわよう」
「解凍されて、あなたの身体が溶けてきたようね!」
「ホットウイットになったかしらあ」
「あ、あなたは、なにっ、なんなのっ」
「どうしてわたしのところに来たの」
「どうしてわたしなの」
「なぜ来たの」
「あららあ、こんどは質問攻めねっ、うふふ」
「あなたらしいわね」
「どうして言葉が分かるの」
「あなたの意識、認知機能に直接コンタクトしているのよ」
「わたしは360億光年の彼方のブルー」
「わたしは個であり全体なの、悠久の時間と空間の全体、意識
パルスの慣性連鎖体なのよ」
「だからわたしは同時にわたしたちでもあるの」

「どうしてブルー・スターダストは浮くことができるの」
「推進力は何なの・・・・・・動力源は何をつかっているの」
「下でなく上が問題なの」
「人類は、物体を浮かせるために、下ばかり気にしているでし
ょう」
「すごく簡単な原理なの、簡単な気体の流体力学と同じよ」
「飛行機の翼といっしょなのよ」
「翼の上部の気体の圧力を低くして下の圧力を高くすれば、揚
力が生まれるでしょう」
「だからわたしたちは、物体を宙に浮かす場合は、下に正エネ
ルギーを増幅させるだけではなくて、上に負エネルギーをつく
っているの」
「球体の真上や推進方向の斥力を下や後方に排除して、推進方
向に超伝導空間、完全真空状態をつくっているだけ」
「約1000分の1ミリの特殊な空間を超光速でつくり続けて
いるのよ」
「するとね、上部の圧力が低くなるのと同時に、完全真空空間
と外側の正エネルギーの間に重力もうまれるのよ」
「この特殊な空間をつくる速さは光の速度ではだめ、ゆらぎが
ゼロの超光速回転運動と位置が重要なの、そうしないと、空間
の斥力や光や粒子の、乱雑波動の振動エネルギーが勝ってしま
うのね」
「簡潔に言うならば、下の重力を消すのではなく、上や推進方
向に重力空間、ミニブラックホールをつくり続けて推進力と浮
力をつくっているの」
「動力源はその特殊な空間をつくる前にあったもの、そこの質
量と斥力を動力源にしているのよ」
「完全な時空のリサイクルシステムね」
「月の光エネルギーは、システムの起動前のスターターエネル
ギーなのよ」

「それでねっ」
「ブルー・スターダストの@マークのような、二重の円の中心
にある透明な点は、月の光の波長の取り入れ口と、生体エネル
ギーの波動・意識パルスのキーワードチエックとスイッチなの」
「三つの機能を備えてるのよ」
「ブルー色の発光ボイドに包まれたガラスのようなブルーの球
体は、中央部の気泡のように見える部分を保護するためのボデ
ィーなのよ」
「その気泡のような空間には、悠久の時の彼方の、知性体の創
り出した知能が埋め込まれているの」
「消滅と創造を繰り返した宇宙の歴史と、生命の意識の情報が
記憶されているわ」

「どうしてわたしのところに来たの」
「あなたは、わたしたちのDNA、意識を引き継ぐ者なの」
「あなたの生体エネルギー波動、意識パルスがキーワード」
「あなたの意識パルスは、わたしたちと同じパルスなのよ」
「わたしたちは、わたしたちの意識パルスのDNAを宇宙中に
ばらまいたの」
「その内のひとつがあなた、まり子さんなのよ」
「それにあなたは苦しい時、いつも人でもなく神様でもなく、
星空を心に想い、助けて助けて助けてって、祈っていたでしょ
う」
「ちゃんと見護っていたのよ」

「あなたが寝ている時間帯に、わたしたちの知識をあなたにイ
ンプット」
「あなた、朝のシャワーしている時に毎回バスルームから全裸
で書斎にかけてゆき、インスピレーションをメモしていたでし
ょう」
「うっ」
まり子は顔を真っ赤にした。
時々まり子はバスルームで身体の火照りをさましていた。
「ああ いけなあいっ」
「ごめんねっ その時は目をつぶっていたわよっ、うふふ」
「でもその後で、ドーパミンがたくさん出るのよねえ」
「誤解しないでっ!」
「冷たいお水の朝シャンなのよ!」
「インスピレーションの後にはドーパミンがでるのよ!」
まり子は青くなったり赤くなったり、せわしい生理現象に落ち
込んだ。
「あら、らあ 今度はヒートウイットねっ」
まり子はむすっと、口をへの字にしてだんまりに突入した。
「でもう、あなたは、わたしの一部でもあるのよ」
「わたしのプライバシー侵害だわ!」
「失礼よ!」
「自然の法則はいけない事といい事が一対になっているのって」
「あなたの口癖でしょう」
「ああん、もうきらいっ」
「ああ言えばこういう」
「あれれえそれもあなたの口癖ねっ」
まり子はこの場は話題をそらす戦術に出た。
「ところで、流星群の夜に飛来したのはなぜなの」

「ブルー・スターダストのカモフラージュだったの」
「あなたは、流れ星を見つける毎に、毎回、願い事していたで
しょう」

「そして、あなたは、もうひとつ・・・・・・」
「願ってはいけない願い事をした」





   360億光年の彼方のブルー


 光の気泡は徐々に膨脹をはじめた。まり子をのみこむように。
 
 光の気泡は部屋全体に膨脹しきると、まり子を中心に光の柱
がレーザー光のように夜空に放射された。
光速を超える速度で一瞬の出来事だった。光速を超える出来事
は人の網膜には映らない。一瞬、まり子は光の衝撃で、全身が
感電するような衝撃を受け、まり子の意識はまったく影の無い
光の空間に閉ざされた。
 
 まり子の肉体は透明な光の輪郭だけを残し、光り輝くブルー
ボイドに包まれたブルー・スターダストの中央部、光の気泡の
中に浮いていた。
胎児が母の羊水に浮かぶように、360億光年の彼方の意識の
次元に浮遊していた。
「まり子さん・・・・・・まり子さん・・・・・・」
まり子は頭の中でこだまするような声に意識を取り戻した。
まり子をとりまく空間は、全天の星々の光を凌駕するほどの明
るい光だけが存在していた。
まり子は、まばゆい光の空間に目がなれてくると、自分のまわ
りに、たくさんの小さな光の粒子が浮遊して飛び交っているの
が見えた。
目蛍のように白い光の粒子は光の空間を浮遊していた。
「ブルー」
まり子は無意識にその名を呼んだ。
ブルー・スターダストには名前などどうでもよかった。
個であり全体の存在には、個の名称は小さな時間と空間を独占し、
自由を束縛する存在でもあった。
人は束縛と自由のゆらぎの中に生きる存在。
外界のいっさいに束縛されない自由は自己否定になる。
人は意識的にも物質的にも束縛の中でしか生きられない存在だっ
た。
「まり子さん、ごめんね!」
「ちょっと刺激的だったかしらあ」
「ブルー・・・・・・」まり子はもう一度呼んでみた。
「そうよ!」
声と同時に光の輪郭だけの人の像がかたどられはじめた。
「あなたって本当はどんな姿なの」
まり子はブルーに尋ねた。
「自由自在よ、何にでもなれるのよ、だから自分が無いのと同
じ」
「自分を束縛できるルールーブックが必要になるわね」
「あたしは、あなたが羨ましいわ」
 と、ブルーは言って、にこっと微笑んだ。
「ところでブルーが言っていた、願ってはいけない願い事って
何なの」
「あなたは、立ち入ってはいけない領域に踏み入ろうとしてい
る」
「物理的世界と意識だけの世界とは別次元の存在なの」
「あなたは、わたしたちのいる領域に来てはだめ!まだ早いの」
「あなたもわたしを見捨てるの」まり子は泣き出したくなる顔
をこらえてブルーに訴えた。
 沈黙の時間がしばらく続いた。
しばらくしてもう一度、ブルーの声が、遠のく音の響きが微か
にきこえてきた。
 
 それから・・・・・・
 
 青い媚薬は 堕天使の誘惑

 赤い媚薬はいい
  
 でも 

 青いポワゾンには 手を出さないで
 
 最後の警告よ・・・・・・
 
 わすれ・ない・で・・・・・・

 ブルーの声が光の波間をゆれるように遠のいていった。
 
「わたしは自然の摂理が嫌いなの」
「自然の摂理は美しい、でも自然の摂理は酷い」
「なぜ、罪のない人を傷つけるの」
「ブルー、ブルー・・・・・・」
 
 やがて、まり子を取り巻く浮遊する光の粒子は徐々に明るさ
を増し、空間全体がまばゆい光の大気に満ち溢れはじめた。
まり子はあまりのまばゆさに目を開けていられなくなった。
  
 時間がどれほど経っただろうか、まり子はやさしい光の中で、
ゆっくりと、まぶたを開いた。
意識が目覚めるように・・・・・・。
目覚めると、まり子はベッドの朝の陽差しの中にいた。
まり子の握りしめた左手の中には、ブルー色の透明色のガラス
玉があった。
球面の傷は消えていた。