Blue Stardust ( I-novel SF )・・・6 | mcode

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   2007~8年 まり子(マリアコ)の冬 





   星の下の必然


 あたしは一度も痛いと言ったことがない。いつもポーカーフ
ェイス。時々は笑顔をつくろう。
そう・・・・・・スタートレックのスポックがお気に入り。
最後の痛み止めは大脳を麻痺させるから、冷蔵庫の小箱には、
古い日付のまま、そのまま手つかず保存。内緒よ!
 最後の痛み止めは、青色の液体、死と無限刹那の快感が同時
に得られる青い媚薬・・・・・・。
 
 新しく発見したり、斬新な創造したりしたものは、あたしだ
けのものじゃないのよ。
だって、あたしだけじゃ生きられない。人は独りじゃ存在でき
ないのよ。
素敵なものが創られる裏側には、美しいものが存在できる裏側
には、その分だけ悲しいこと、目を背けたくなるものがあるの
よ。
それって・・・・・・自然の法則なの。光と影は紙の裏と表。
夜空が美しく感じられるのは、明るい青空があるからでしょう。

 自然の摂理って美しい。でも、自然の摂理って酷い。
不平等だから物事が存在できるの。みんな幸せなら熱平衡状態
だものね。
だから、あたしは不平なんて言わない。
あたしの仕事が良いか悪いか、歴史が決めてくれるわ。
でも、その時はもういない。
あたしはもういない・・・・・・。
束の間の栄光なんて虚しいだけ・・・・・・生きている間だけよ。
生きている時だけの自己満足なのよ。
死んだら永遠じゃないの!

 今夜もワインで睡眠薬を飲み込んだ。
何錠か数えもしない。
あなたは、死んだらどうするんだ!と言う。
あたしは生きたいから、生きているんじゃない。
生きなければいけないから、生きているのよ!
あたしは生きてるのよ!
恋は空間、愛は距離。あたしのライフワークと死は・・・・・。
星の下の必然なのよ。
まだ・・・・・・。
あたしは生きてる!あたしは生きてる。
あたしは生きてるのよ・・・・・・。
あたしは・・・・・・あたしは・・・・・・。





 夜更けの独りワイン

 
 慎重だけれどもせっかち

 のんびりだけれども憂鬱

 独り好きでさびしがりや

 清純好きと刹那の耽美派

 してはいけないこと好き

 傷つくのも厭わない愚者

 頑張りやで惰眠の埋没者

 愛情不足に過剰自堕落者

 まり子と堕天使の混合体

 複雑な心模様と冬のそら

 眠れない夜更けのワイン

 そんな冬の夜に何を想う

 命と夢どちらを選択する

 美人薄命と才色兼備好き

 痛みをワインでごまかす

 それとも睡眠薬で逃げる

 堕天使の夜更けの呟き事

 誘惑の刹那の海原に惑う

 それとも聖水に焼かれる

 神さま嫌いで大天使嫌い

 でも辛苦の夜には口ぐせ

 弱虫の独り言のかなしさ

 孤独と君の誘惑の責め苦

 選ぶのは君の優しさと愛

 無垢の優しさが欲しい夜

 選択肢は夜更けのワイン

 酔える星の竪琴が欲しい

 溺れるぬくもりが欲しい・・・・・・





 青い媚薬ポワゾン 


 ポワゾンは媚薬
 堕天使の誘惑香

 ポワゾンは毒薬
 君の甘い誘惑香


 言葉は要らない
 君の香りの余韻

 香りは要らない
 欲しいのは無垢


 無垢の君の匂い
 心を麻痺させる

 匂いは要らない
 息づく君の体温


 無垢のぬくもり
 息づきは切なさ

 君は青い息づき
 ポワゾンの香り


 現実と幻想の間
 理想の美の瞬間

 夜更けの媚薬香
 ポワゾンの誘惑





 薄 灯 夜
 
 
 もう夜明けの時間帯

 頭の中はマシュマロ

 身体はセミの抜け殻

 セミの命は数日の命

 儚い命と雨の夜明け

 夜更けの雨音が好き

 このままの夜が良い

 朝が来なければ良い

 眠れる夜に出会える

 美容が気になる歳頃

 選択肢は大脳の美容

 肌には自信過剰ぎみ

 コンプレックスの塊

 自信過剰な精神状態

 二つの要素が絡まる

 ワインと睡眠薬過剰

 生卵が床でつぶれた

 キッチンは滅茶苦茶

 床にコーヒーが散乱

 香しき大気の舞踏会

 天道虫が目覚める会

 天道虫は太陽の使者

 数日前に部屋に来訪

 冬眠中は何を感じる

 成虫で眠る太陽の子

 黒い背中に赤い太陽

 赤い口元は月の使者

 つややかな唇は願望

 赤い媚薬は耽美主義

 象徴詩の言霊の香り

 欲望と願望のちがい

 あなたの線引きは何

 心と身体と頭の中身

 どれが欲しいと思う

 今は何も欲しくない

 ただ夢を見て寝たい

 眠れない夜が切ない

 ワインと自堕落な心

 堕天使の両翼は何色

 白い翼より透明の羽

 透明な夜の雨しずく

 街の明かりがにじむ

 窓ガラスに星々の雫

 人の命も儚い星の雫

 君の好きな流星の夜

 眠れない夜の君の星

 満月の夜に嫉妬する

 ボヘミアンの月の夜

 360億光年の夜空

 眠れない夜の愛と恋

 愛撫するのはどちら

 甘い香りの君の身体

 それとも心の温もり

 もう夜が終わる時間・・・・・・






 夜の息づき

 
 東京の夜更けの音

 27時と29時の

 真ん中の夜の時間

 独りの部屋に届く

 夜の息づきは3つ

 風の音と時計の音

 そして微かに届く

 車の無機質な響き

 星も見えない夜空

 眠れぬ部屋の静寂

 眠らぬ人の営みも

 自然の営みのよう

 星なき夜空に滲む

 ガラス色の青い星

 透明なガラス細工

 夜の闇は何色の光

 あなたは何色の命

 あなたの好きな色

 夜色に何色を捧ぐ

 隠微な心の息づき

 静寂と孤独の時間

 銀河系の小さな星

 不思議な命の営み

 自然の営みの抱擁

 独りの息づく夜空

 夜の星に何を願う

 一日の夜はふたつ

 今日と明日の夜空

 青空は夜のすき間

 青空は孤独の時間

 夜空は離ればなれ

 あなたの好きな空

 どちらを愛したい

 今日の愛しい星空

 明日の恋しい夜空

 それとも夜の狭間

 白い雲のうかぶ空

 愛撫したい空は何・・・・・・






 十字綺羅星

 
 夜毎 時を刻む音

 大理石の白いテーブルに 置き時計の秒針

 夜更けの音 眠れぬ夜の 刻む生命の音
  
 一秒ずつの鼓動 星空の潮騒

 孤独の息づきは 星の必然 数日の鼓動 星音

 もういいの 精一杯生きたからいいの 

 泣かないで 星の必然だから 

 運命は自分の仕業と違う 流星の必然

 自由の羽根の瞬き 忘れ得ぬ銀河に帰る鼓動 

 もういいの 星に帰るの

 白鳥の十字綺羅星 

 わたしの生きる星の瞬き わたしの星

 光翼の十字綺羅星
  
 夏の夜空の わたしの星座 星々の瞬き

 わたしの鼓動 星の鼓動 ・・・・・・





 まり子の心の記憶
 
 
 忘れ得ぬ人 

 アンナ・カレーニナ イワン・クラムスコイ 1883年作

 わたしの少女時代 白ロシアの唯一の記憶

 ずっと 忘れていた心の記憶 この肖像画しか思い出せない

 この絵を見る毎に 哀しくなる 胸が痛くなる

 理由はわからない ただただ 切なくなる

 黒いドレスの人 堕天使の黒 でも わたしの黒

 優しい光の中に気品 内に秘めた温もり 優しく冷徹な眼差し

 心の片隅に刻まれ 忘れ得ぬ人 知らない母の面影

 ロシアのモナリザ アンナ 

 アンナ・カレーニナ ・・・・・・





 ニガヨモギの星の子


 ひとりの夜が好き
 星のない夜が好き
 あたしに相応しい

 だって・・・・・・

 ニガヨモギ星の子
 ニガヨモギの川水
 遠い母国の星の子

 だもの・・・・・・

 東京の夜空は慈愛
 優しい静かな夜空
 冬の夜空は暖かい

 だけど・・・・・・

 ワインと眠れる薬
 酔いどれの堕天使
 眠れる森のセミ殻

 でもね・・・・・・

 そんなあたしが嫌
 涙の出ない瞳が嫌
 黒い森の静寂が嫌

 きっと・・・・・・

 心は束縛できない
 心はいつでも自由
 心はあたしのもの

 きっと・・・・・・

 命は星の下の必然
 運命は不平等でも
 希望は平等のはず

 いつか・・・・・・

 目覚めた朝には夢
 はかない時の旅人
 星の旅人になれる

 いつか・・・・・・

 優しい星になれる
 輝く星空になれる
 幸せになれるのよ

 だって・・・・・・





 よわむし堕天使

 
 今夜もワインと睡眠薬
 睡眠はたいせつだもの

 つよめの睡眠薬を処方
 主治医に心から感謝よ

 寝ないと生きられない
 生きるって辛いけどね

 でも生きなければだめ
 それが運命なのだから

 明るい世界と影の世界
 二つの世界は相互扶助

 自然の法則だから容認
 しかたがないと思うの

 でもきっと改善される
 ぜったいこんなの変よ

 罪のない人が傷付く事
 許せないと思うのよね

 あたしの子供のころは
 大自然が嫌いだったの

 むごい自然の法則がね
 むごい摂理が悲しくて

 でもそんな中でも慈愛
 そんな中でも生きてる

 それが生命の美しさと
 思える時が沢山あるの

 ワインと睡眠薬で堕文
 つまらない言葉の羅列

 無意味に時間が過ぎる
 夜時間が空回りしてる

 あたしは何故生まれた
 いつもそんな事を思う

 自然の世界は完璧だわ
 サイコロは振らないの

 必要だから存在するの
 不必要なものはないわ

 だから生きられる運命
 生きる必然性があるの

 不幸は自分が悪いのよ
 よわむし堕天使なのよ

 嫌いな自分が生きてる
 こんなあたしを嫌うの

 きっと明日は暖かい日
 きっと優しい日溜まり

 必要な存在で在りたい
 大切なものを残したい

 きっと生まれ変われる
 きっと白い翼になれる

 もうじき闘病生活なの
 もう戻れないのかもね・・・・・・





 なきむし堕天使 1

 
 あたしの
 主治医のいる病院は
 同じ敷地に
 教会があるのよ
 便利ねえ

 あたしは
 堕天使
 道ばたのセミの脱け殻
 入院しても
 誰も見舞いにこないわ
 こられたら
 疲れるだけよ

 あたしは
 神様なんか信じない
 大嫌いなの
 だって
 不平等だし
 ときどき意地悪だしね
 あたしなんか
 どうなってもいいのよ

 だって
 あたしは
 黒い羽根の
 堕天使だものね

 クリスマスイブの夜に
 シスターに
 文句いってやったわ

 そうしたらね
 シスターが涙ぐんで
 あたしのひたいに
 指をあてて
 小さな十字を
 かいてくれたの

 だからあたしは
 シスターに
 作り笑顔して上げたわ
 くしゃくしゃの顔で
 シスターが微笑んだ

 あたしは
 神様は信じないけど
 シスターの微笑みは
 信じようと思った
 でも
 営業スマイルかもね

 あたしは人前じゃ
 一度も
 泣いたことないのよ
 だって
 黒い羽根の
 堕天使だものね

 上から下まで黒ずくめ
 下着まで黒なのよ
 白や色ものの洋服は
 一枚もないわ

 あたしには
 黒が一番お似合い

 シスターのように
 堕ぬきの
 なきむし天使に
 なってもね・・・・・・





 なきむし堕天使とまり子 2


 あたしは
 まり子も大嫌い!
 才色兼備の女
 やさしい顔して
 理屈ばかり言う女
 自信過剰の女
 大嫌い!

 現代アートも嫌い
 科学も嫌い
 哲学も嫌い
 誰にでも
 愛されるタイプは大嫌い!

 まり子は
 あたしに
 黒ばかり着ていて
 陰気くさいわねえ
 だって

 大きなお世話よ!
 あたしはあたし
 自由でいたいのよ

 あたしは
 ダメなひとが好き
 自堕落でも
 なんでもいいの
 痛みが分かるひとが好き
 黒い羽根の痛み
 胸の痛みは
 理屈じゃ癒されない

 まり子は
 人間は独りじゃ
 生きられないのよって
 不平等だから
 明暗があるから
 物事が存在するのよって
 いつも言ってる

 それじゃ
 堕天使のあたしは
 誰が創ったのよ!

 あたしだけなら
 いつまでも
 白い翼でいられたのよ

 独りじゃないから
 堕天させられたんじゃない!





 まり子となきむし堕天使 3


 だから
 あなたは
 堕天させられたのよ

 独りで
 ぬくもりもなく
 光もない
 暗闇の中で

 あなたは
 あなた自身の翼が
 白色か黒色か
 見分けがつきますか

 傲慢は生命力の種子
 嫉妬は成長のための試練
 完全な自由は存在感が喪失
 不自由だから
 存在感が得られるのよ

 堕天して
 見捨てるのなら
 最初からあたしなんか
 創らなきゃよかったのよ

 誰も創ってくれなんて
 頼んでないわよ!
 かってに
 創ったんじゃない!

 こんな羽根じゃ
 空なんか飛べないわよ!

 だったら
 飛べるか飛べないか
 試してみてごらんなさいよ!
 もしも ダメなら
 上昇気流に乗れないのなら
 新しい自分好みの翼を
 あなた自身で
 創ればいいのよ!

 わたしは
 あなたに
 翼を創って上げることは
 できないけれども
 アドバイスはできるわよ

 シスターも
 あなたのこと
 応援しているのよ

 ん・・・・・・
 泣いているの

 なきむし天使ね・・・・・・





 なきむし堕天使の涙 4

 
 まり子は
 理解できないことがひとつあった

 どんなに
 脳医学や物理学や哲学を学んでも
 科学的に説明できない存在があった

 それは意識
 物理的な完全や絶対の裏側にあるもの

 意識には
 曖昧なものと
 完全で絶対なものがある

 大脳の自由な可塑性から育まれるもの
 意識の自由な可塑性

 自然の物理的な法則
 宇宙の物理的な法則を観測しても
 見つけることのできないもの

 五感でしか観測できないもの
 意識でしか得られないものがある

 あの日見た堕天使の涙
 あの涙は
 意識の外界にあふれ出た
 脳の神経伝達物質のようなもの
 涙の意味は
 意識の中でしか理解できないもの

 たぶん
 あの日見た堕天使の涙は
 物理的な宇宙に残された最後の
 パンドラの箱のような
 最後に残された希望なんだろうと

 まり子は
 そう考え初めていた

 現実の世界には
 自由にならない法則がある
 でも
 最後に残された自由な宇宙
 それが意識
 それが希望なんだろうと

 物理的な宇宙は
 完全で絶対の存在
 秩序と無秩序がゆらいでいる

 でも意識の中にも
 その現実世界とは次元を異にする
 完全で絶対の存在
 秩序と無秩序がゆらいでいる

 意識の自由な可塑性
 大脳の自由な可塑性
 その希望は
 絶望を超越できる存在
 進化して
 いつまでも存在したい願望
 宇宙のエネルギーの
 根元的な存在なんだろうと

 まり子は
 そう感じ初めていた

 アルベルトアインシュタインは
 「神はサイコロを振らない」
 と言った

 であるならば
 なきむし堕天使は
 神が創った反逆児になる

 なきむし堕天使
 白い翼を
 授けられなかった堕天の子
 可哀相な天使

 あなたは
 最後の希望の星なのよ

 わたしも神様は信じない
 でも
 なきむし堕天使の涙は
 信じたい・・・・・・

 



 星の雫

 あなたの瞳に 星の雫が輝く夜

 星の雫は 光の川になる

 あなたの夜空を 流れ星が埋め尽くす夜

 星の子は 光の海になる

 あなたの瞳に 光の雫が降り注ぐ夜

 光の子は 無限光年の彼方で光の輪を描く

 光の円螺旋になる

 あなたの手の中に 光の渦が開びゃくする夜

 光は 空間を溶かす熱の時間になる

 あなたの瞳に 灼熱の光の海が満ちる夜 

 あなたは 光り輝く星空になる





 なきむし堕天使のナイーブ 5


 あははは

 ご立派なご講義ありがとう!

 あたしのこと

 何も分かっていないくせして

 かってに あたしを決めつけないで!

 あたしはあたし!

 もう うんざりよ!

 それに あんたなんかに

 同情されるの嫌いなのよ

 惨めな気分だわ!

 そんなつまらない話を

 している暇があるのなら

 あたしの羽根の治療代を稼いでよ!

 それに あんたの詩って

 なんだかバカみたい!





 まり子のナイーブ 6


 ああ言えばこう言う!

 あなたの言葉って
 稚拙
 B級映画のせりふのよう
 つぎに何を言うか
 分かるわ

 それに
 講義とは
 人々に学説や書物あるいは
 物事の意味や内容を
 口頭で説明すること
 学問的な話をすること
 わたしは
 ただ文章にしただけ

 だから
 あなたに
 講義なんかしてないわよ

 それに
 あなたは堕天使じゃなく
 ただの天の邪鬼
 天ぬきの
 堕がもうひとつ付いた
 堕堕っ子ね!

 あなたは
 わたしに
 言ってはいけないことを言ったわ
 わたしの詩を
 バカみたいって
 侮辱されるのは許せるわ
 でも
 傷つけることは許せない!

 そもそも
 あなたには侮辱の意味すら
 知らないでしょう
 あなどると言う意味もあるのよ
 つまり軽視することよ
 あなたは
 わたしを軽く見ているわね

 あなたは
 わたしが創った
 影のようなものよ
 わたしの分身なのよ
 わたしがいなければ
 存在できないのよ

 これが
 人の脳の自由な可塑性なのよ
 あなたは
 わたし次第で
 わたしの一存で
 どうにでもできる存在なのよ

 わたしの詩をバカにするのなら
 あなたには
 どれほどの詩が書けるのかしら?

 やっぱりね
 優しい顔して
 優しい言葉をかけていたけど
 あんたって
 それって
 自分のただのプライドの誇示
 自分を良く見せたいだけじゃないのよ!

 あたしだって
 詩ぐらい書けるわよ





 真夏のソフトクリーム

 溶ける ぐちゃぐちゃ 溶ける
                    
 乱れ 崩れるように溶ける
                    
 ため息が漏れるように溶ける

 芯まで溶ける

 熱く感じるほどに溶ける

 動けなくなるまで溶ける

 柔らかい ぬめぬめ 柔らかい

 包まれ 絡まり付くように柔らかい

 波打つように柔らかい

 奥まで柔らかい

 切なくなるほどに柔らかい

 そっとしておいても柔らかい

 冬のソフトクリームが

 夏のアスファルトの道に恋をした

 通り雨のあと 月の光の波間に

 甘い匂いだけが かすかに残った

 月の光の底に沈む 真紅の薔薇の匂いだ

 壁の隙間から 月の光に揺れながら流されてくる

 壁の向こうには かぐわしき梵天の月


 分かったわ
 あなたの詩って
 あなたらしいデカダンスね
 退廃的!

 あんたの詩はどうなのよ!
 少女趣味よね
 うんざり!





 まり子の反撃 7


 少女趣味
 叙情詩の何がいけないの
 あなたは
 世界中の若い女性を
 敵にまわしたわよ!

 あなたは
 どうしょうもない堕堕っ子ね
 堕天されて当然よ!
 自分中心に
 世界が回っているとでも
 十七世紀の
 コペルニクスの地道説を
 無視しているようなものよ
 二世紀の遺物の性格ね
 天動説時代に帰りなさいよ!

 だって
 あたしは
 創世記に生まれた
 堕天使だもん!
 天国を中心に世界があると
 天使長に教わって育ったのよ
 あんたなんて
 宇宙の塵から生まれたのよ
 あたしたちが要らなくなって
 捨てたゴミから
 生まれたんじゃない!

 はああ
 あなたって
 なんて子なの・・・・・・

 少女は
 少女らしい時代がなければ
 大人の女性になっても
 大人らしい女性に育たないのよ
 光と影
 対称的で相対的なものがあって
 両方とも
 美しい存在になるのよ

 女性でも男性でも
 女性ホルモンと男性ホルモンの
 両方を持ち備えているでしょう
 環境に合わせて
 バランスが大切なのよ

 わたしは孤児だったのよ
 両親の顔も知らないの
 日本人の血と
 白ロシアの血が混ざってる
 ソビエト連邦が崩壊する前に
 日本に渡って来たことしか
 知らないの

 孤児院と
 里親の間をたらい回し
 傲慢で嫉妬ぶかくて
 束縛されるのが嫌いだった
 そんな少女時代だった
 学校でも
 髪の毛と目の色が違うので
 いじめられたわ

 そんな中で
 強く生きるのには
 反抗するしかなかった
 誰にでも反抗した
 でもそんなんじゃ孤立して
 淋しくてたまらなかった
 自殺未遂も何度もした

 でもね
 病院に収容されたとき
 ナースに優しくされた
 わたしは
 ナースに愛されたかった
 だからわたしは
 大人になろうとしたの
 綺麗なナース
 天使のように見えた
 ナースに憧れた

 少女でなく
 大人の女性になれば
 愛されると思った
 わたしは
 わたしの少女の心を
 心の奥にしまい込んだ
 そうして大人の女性として
 ふるまわったのよ
 少女の心を
 おしころして生きようと
 きめたのよ

 でも
 そのころ
 幸せそうな親子を見ると
 嫉妬した
 親にねだって子供が泣いて
 我が侭を言っている姿をみると
 羨ましかった
 わたしを産んだ親を憎んだ

 涙で出てきて
 しかたがなかった

 わたしが清純な詩を書くのは
 そのトラウマが原因なのよ
 空白の少女の心を
 取り戻したいのよ

 だから
 わたしは今でも
 大人の女性に
 なりきれないでいるのよ

 あなたに
 そんな気持ちが理解できるの
 刹那的で退廃的な
 堕天使のあなたに
 何がわかるっていうの!