1989年 冬のNY 難民の子 | mcode

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 80年代の最後の秋は、ただただ、寒かったことを想い出し
ます。
当時、18才のわたしは、手負いの獣のように彷徨する生き方
だった。
11月26日、快晴・・・
朝からTVは、感謝祭のパレードの賑わいを伝えている。
感謝祭が終わると、すぐに寒い冬がやってくる。
地球の裏側まで来て、お前には、どれ程の幸せがある?
貧富の壁? 歴史の壁?・・・
お前の生き方が悪いのでは?
難民の幼いわたしが、冬のNYをさまようには寒過ぎる。
どんなに寒くても、雨の降る日のNYは、好きだったことを想
い出します。

 冬の晴れた日に、ウエストブロードウェイや、ダウンタウン
をぶらぶら歩いていた頃のこと。
ダウンタウンのメインストリートにもかかわらず、道の中程に
あるマンフォールの蓋の上を車(当時、滅多にキズの無い車は
見かけなかった)が通るたびにバッコーンと音がしたり、街並
などは20年代~30年代の古いビルも多くあり、それらは部
分的には荒廃していて、綺麗だとは感じられなかった。
自分の生活も荒んでいたのだけれども・・・
ところがある日、雨が降ってきて、ふっと空を見上げ、遠景の
摩天楼や、空を切り裂くように立ち並ぶビルを見たら、NYの
街並が今までとは違って見えた。
現存するアールデコ様式の高い建物が、無言で、わたしに傘を
差し掛けてきたような気がして、その時、初めてNYの造形美
に気が付いた。
自分の生活が荒んでいる時は、足元ばかり見ていた。
NYは近くで見ていると、悪い所ばかり見えてくるのだけれど
も、遠くから見ると良い所が見えてくる。
暖かい夏がきたら、夏休みには貧しくても陽気なラテンアメリ
カに行こう・・・
アルゼンチンタンゴの音楽があれば生きられる。
生きる勇気がもらえる。
18才の 青春、お金もなく無謀な放浪の旅・・・
ついに、大学は留年・・・