引っ越しからと言うもの、大掛かりな掃除ができなかったので、
一つ大きな決心をし、大掃除をした。
目的は、部屋をよりシンプルなものにすること。
必要なものは取っておき、必要でないものは、思い切って捨てる。
今回は、本当に必要なものだけを選び、
そうでないものはすべて捨てることにした。
いつもなら、「いつか必要になるときがくるかも」と思うものは、
とりあえず保留にして、取っておくのだけれど、今回は、
心を鬼にして、ゴミ袋などに突っ込んだ。
しかし、懐かしいものや思い出深いものを目にすると、
時計の針がゆっくりと進みだし、作業が進まなくなってしまう。
真上にあった太陽は、いつの間にかその日の任務を終了させていた。
そんな中、おれはダンボールの中で静かに眠っていた
大学時代の一つのファイルを発見した。
それは、授業用のものではなく、自分の趣味などを集めた、
あくまで私用のファイル。
それは、自分の好きなインテリアやファッションの切抜きを集め、
いつでも見れるようにしていたファイル。
その中に、一通の手紙があった。
それは、大好きな友人からの言葉であった。
どういうわけなのだろう。
手紙には、メールにはない言葉の美しさが見える。
何気ない言葉の中にも、その人の気持ちが詰まっている。
本当に自分の気持ちを誰かに知ってほしい、そんな時は、
誰が書いても同じ字体になるメールよりも、
自分の手で、一つ一つの言葉に気持ちを込められる手紙の方が、
はるかに伝わるのだと、おれは思う。
手紙と言うのは、メールでは伝わらない心の奥深くまで、
自分の思いを届かせることができるのだ。
言葉と言うのは、時にあまりに優しすぎることもあれば、
あまりに切なく寂しいものになるときもある。
言葉一つあったために、誰かは救われたかもしれないし、
言葉一つ足りないために、誰かはどうしようもない悲しみに
襲われているかもしれない。
人間にとって、この最高の武器、あるいは凶器と呼ぶべきものを、
おれたちはもっと、繊細に扱うべきなのだと思う。
足のつまづきは、やがて癒えるかもしれないが、
舌のつまづきは、時を経て、償えるというものではない。
「現代社会において、本当に大切な多くの物事は、
ディズニーアニメのチーズのように、
ところどころ穴が開き始めている。
何だか今の人たちは、誰かと繋がろう、繋がろうって、
必死になっているように見える。
一人でも多くの人と繋がれば、それだけ得点が、
増えていくゲームみたいに。
まるで奥行きのない単純なゲームのよう。」
実を言えば、ここ最近、「言葉」というものを非常に恐れていた。
それはまた、「言葉」の持つ大きな力を感じていたからでもある。
いつぐらいからか分からないが、自分の言葉が、
間違って解釈されることが多々あった。
会社の中で、嘘の自分がドンドン大きくなっていることに気付いた。
自分の意図と全く違うように伝わりだすことがとても苦しかった。
次第に口数は減り、言葉も失っていった。
誰かが悪いのではなく、まして誰かのせいにしてるわけでもなく、
詰めて考えれば、責任は最終的には自分のところに来ることは、
分かっていた。
それでも、一瞬の感情で言葉を発することは、
その時の自分にとって、あまりにリスクが高いことだと思った。
言いたいから、聞いてほしいから言えないのだ。
どうでもいいことなら、いくらでも言葉になる。
一つ一つの言葉を、慎重に選ぶ自分がいた。
元気がない、無口だと思われたとしても、覚悟の上。
絞り出した声は、自分でも情けないほど、掠れていた。
けれど、いま思えば、冷静に考えれば、
おれは少々、言葉と言うものに対し、
恐れすぎたのかもしれないとも感じるが。
そういった感情になっていたものだから、
掃除中に見つけた、友人からの一通の手紙は、
非常にあたたかく、優しいものであった。
しわしわになった気持ちが、アイロンがけされたよう、
きれいに広がり、伸びていく。
霞んで見えにくくなっていたものが、
どんどん浮き彫りになっていく感覚。
自分の上に乗っかっていた暗い雲を吹き払ってくれ、
忘れかけていた微笑み方を思い出させてくれ、
自分に与えられている数多くの恵みに気付かせてくれた。
この手紙は、自分の心の中でいつまでも、
特別な場所を占めるに違いない。
-With all my might, wish in the end is right,
I made up my mind to find my way of life.-
(ただ力の限り、最後には正しいと信じて
自分の道を見つけるって決めたんだから。)
Revive / Dragon Ash