「先生と呼ばれる職業に就くには古典必須」 ということは、逆にそういった職業を目指さない場合には、古典の学習は不要、ということでもあります。

教養は一部のエリートだけが学べば良い、というヨーロッパの階級主義が根底にあるように思います。

 

ジュネーブ州の公立中学では、中学1年生では全員、ラテン語が必修ではありますが、中学2年生からは、定められた以上の成績が取れていない場合はそもそも「ラテン語」が選択できません。

また、ラテン語を選択可能な成績であっても中学2年生への進級時にラテン語を選ばず、現代言語または自然科学コースを選んだ場合は高校(Collge)でもラテン語は選択できないので次にラテン語を学習するチャンスが与えられるのは大学入学後になります。

 

ジュネーブ州の公立中学のシステムでは、中学2年生(義務教育10年生)への進級時、「生徒個々人が選択するよりも前に」成績によって CT(コミュニケーションと技術)、LC(現代言語とコミュニケーション)、LS(文学科学)という3グループに分けられてしまいます。場合によっては中1への留年もあります。

将来大学に進学するためには中学卒業後にCollegeに進学しなければなりませんが、Collegeに進学できるのはLSに進級した生徒だけです。

そしてラテン語を選択できるのも、LSグループのみで、CTグループやLCグループには最初からラテン語という選択肢が与えられてません。

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資料の出典はこちら

ジュネーブ州の義務教育を管轄する部署からの、義務教育10年生、11年生のコース別教育概要についてのお知らせ文書

https://edu.ge.ch/enseignement/system/files/2021-06/descriptions_profils_10-11co.pdf

 

 

各グループは、公立小学校の最終学年にあたる8年目の終わりに実施される学力テストの結果、中学1年生(義務教育9年生)入学時に振り分けられたR1、R2、R3のグループと対応しています。

CTはR1,LCはR2、LSはR3と対応します。

 

フランス語(ジュネーブ州公用語)、ドイツ語(スイスの第一公用語)、数学、の3科目、学力テストの得点は6点満点の評価点に換算されるのすが

 

R1 科目ごとの最低点は3.0 3科目の最小合計点は9.0

R2 科目ごとの最低点は3.5 3科目の最小合計点は11.5

R3 科目ごとの最低点は4.0 3科目の最小合計点は14.0

となります。

R1の基準を満たさない場合は小学校と中学校とでの話し合いとなるそうです。

 

要するに、小学6年生の時点で「エリート」と「非エリート」との振り分けがすでに始まっているということです。

そして、その振り分けは中学入学後も絶え間なく続きます。

 

最初にR3に振り分けられていても成績が悪ければ現在のクラスを維持できなくなり、下のクラスに落とされます。

逆に、中学1年生の早い段階であれば、良い成績を取ればR2→R3の移動も可能で、長女ガルの学年でも実例があったそうです。

ただし、同じ学年の同じ科目でもR1,R2,R3で授業内容のレベルがすでに違うので、移動が遅くなると授業についていけなくなる可能性が高くなります。

 

小学6年生の振り分けでR3に入れなかった子供たちは原則として職業訓練コースに進むことになり、中2以降、ラテン語を学び、教師や法曹、医師などになる道は閉ざされます。

大学進学コースのR3の子供たちでも、中2進級時にラテン語以外を選択するということは、事実上そういった「先生と呼ばれる職種」とは「別の道」を選ぶことになります。

 

ですから、ジュネーブの子供たちは中1にもなれば「将来の進路」を強く意識せざるを得ないのです。