初めての九州旅行(25)『ありがとう合宿』バーベキューの後半「いのちをいただく」の部分をどう書くべきかを考えていて、ふと思い出したのが2年前に書いたこちらの記事。

 

 


16世紀末~17世紀初頭、フランス国王だったアンリ4世は「フランス国民は毎週日曜にpoule au pot(廃鶏おでん)を食べるべきだ」と言ったそうです。

 

↓ これがPoule(ひね鶏、卵を産ませていた雌鶏、廃鶏)です。

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家族全員が風邪気味なので、昨日、フランス領のスーパーで買ってきて、スープたっぷりのおでんを作りました。日曜日は、ジュネーブはもちろん、ヨーロッパのほとんどのスーパーマーケットはお休みです。けれども、フランス領ディボンヌの町は日曜朝市が立つためか、午前中だけはスーパーも開いています。もちろん大混雑でしたが、開いていてくれて助かりました。

 

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首やモミジを切り落とし、内臓を抜いて形を整え、パック詰めされたものを買ってきました。

1kgあたり2.90ユーロ≒375円 この鶏は1kgを切っているので371円くらいです。

この鶏がこんなに安い値段で売られているのはおそらく、「既に1年~2年、卵を採って元は取れている」のとパック詰めするまでの作業に「安い移民労働力」を使っているからでしょう。

 

 

400年前、アンリ4世は「国民は贅沢をすべきではない」という意味で「フランス国民は日曜日には廃鶏おでんを食べるべきだ」と言ったのでしょうか?

 

とんでもない。

 

アンリ4世は、ヴァロワ朝の男子継承者が絶えた時は国王となると定められていた、ブルボン朝の最初の王でした。しかし当時のヨーロッパは宗教戦争の真っただ中の時代。フランスも国を割る宗教戦争で疲弊し、国土は荒廃し、国民は困窮していました。

アンリ4世は、国内の宗教戦争を終わらせ、新旧キリスト教徒を融和させて、フランスを立て直そうと知恵と力を尽くしました。

 

「フランス国民は日曜日には廃鶏おでんを食べるべきだ」の意味は「もっとも貧しい階層の人たちであっても、せめて一週間に一度、日曜日に廃鶏の肉料理を食べることができるくらいに、フランスを豊かにしなければならない。それが、国王である自分の責務である。」という決意表明だったのだそうです。
 

現在は21世紀になりました。

先進国では毎日のように肉を、いいえ、毎日食べ物をお腹いっぱいに食べられる社会が実現しています。

が、それは本来、自然状態ではありえず、人間社会が出来てからも、ごくごく歴史が浅く、狭い地域でしか実現されていない、とても贅沢なことなのです。


その贅沢は、何によって支えられているのか?

そして、自分が直接には手を下していなくても、「食べる=いのちをいただく」ことに変わりは無いことも、忘れてはいけないことだと思います。