ふと気が向いて散歩に出た。
水筒にコーヒーを入れて、本を持って、帽子をかぶって。
運動不足を解消する目的もあるにはあるけれど
まあメインは気分転換なので
歩くのはそこそこにして
公園のベンチに腰をおろした。
本を読み始めたところで
3輪自転車に乗ったおばさんに声を掛けられた。
「いい時間を過ごしていらっしゃるところ
申し訳ないんですが
5分だけいいですか?」
たぶん宗教系の勧誘だろうなと思ったのだけれど
おばさんはなかなか本題に入らない。
「よく来るんですか?」
「どんな本を読んでいらっしゃるの?」
「私も本が好きなの」
「ハウツー本とかいろいろ」
いや、どうでもいいから早く終わらせてほしい。
こちらの表情を察したおばさんは
薄いリーフレットを差し出した。
「日本人は争いもしない素晴らしい国民だと思いませんか?」
「え、思いませんか?」
「いま世界では恐ろしいことがいろいろ起きているでしょう?」
「世界に恐ろしいことが溢れているのは、恐ろしい言葉が多いからなの」
「聖書にはこの世が滅びると、驚くようなことが書かれているの」
「ね、びっくりするでしょう?」
ああ、キリスト教系の新宗教だ。
輸血拒否で有名なところ。
ここで何かコメントすると
面倒なことになりそうなので、笑ってリーフレットを受取り
ノーリアクションで押し通した。
私が一番聞きたかったのは
あなたが信奉している教義ではなくて
何がそのあなたの情熱を支えているのか、なんだけれど
それを聞くと
なおさらにややこしいことになりそうだから
黙っていることにした。
再びあのおばさんに出会ったら
私は自分の好奇心に勝てるだろうか。
ちょっと心配だ。