鈴木大介氏といえば「最貧困女子」「最貧困シングルマザー」など

社会の底辺、弱者を代弁する熱いルポライターとして認識していたのだけど

「あの人、脳梗塞になったんだって」と聞いた。

ええ~!じゃあもうあのルポは読めないのか?と思ったら

なんと自身を徹底取材して

病態を言語化したものすごいものが発表されていた。

私が惹かれてやまない「当事者研究・当事者発信」である。

 

「脳が壊れた」鈴木大介著 新潮新書

 

脳梗塞とその後の障害をわが身に受けて、

彼はその逐一を言語化しようと試みる。

彼を支える最愛の妻・千夏氏は

「私の気持ちがわかったか」と言い放つ。

そう、彼女は、夫である大介氏によれば

適切な療育を受けられなかったLD児の成れの果てであり

同居直後には自傷を繰り返すメンヘラ女子。

できないことは、がんばってもできない。注意散漫、片付けられない、

そんな彼女に毒づきながらすべての家事を抱え込み、

フリーライターとして仕事を増やし続け、

とにかくオンオフなくオン・オンリーで突っ走ってきた鈴木氏自身も、過活動の凸凹の持ち主である。

このカップル、まあ読み進むうちにどんどん他人事でなくなっていった。

 

私と夫I氏を足すと、大介氏と妻千夏氏を足した和と非常に似ているのだ。

2で割った時の配分が違うというか。

しかも、大介氏の、脳梗塞の後遺症で現れる症状が、

私は昔からもっているもの・・・・

私は自称・永遠の中二病、とつい最近まで言っていたその内容がなんだったのか

読んでいたらあきらかになった。

 

言葉が一気に大量にあふれてきて、話せない感じ。

話すと話し切るまで、相手が引いてようが止められない感じ。

 

言語野の過活動と、それを予測した過剰抑制による緘黙。

または抑制に失敗したしゃべりすぎ。

 

そーだったのか~。スッキリ。

中二病要素のうち、思春期的な感情の屈折は

この本読んでなんだかすーっと溶けていったのだけど

言語の過活動は相変わらずあったから、

相変わらず変人実感があったのでした。

なんかこう、適切にふるまえない感じ。

 

この本の素晴らしいところは、

そんな個性と障害を愛とユーモアで乗り切っていく夫婦のさまが

胸に希望をともしてくれる、のだ。

幸せって、正しくなることでも、人並になることでも、速くたくさん処理できることでもないよね、と。

 

できない妻のかわりに何もかも抱え込んでいたできる夫のはずの大介氏は

できないことをたくさん抱え込む。

それを日々楽しみながら、ひたすらにサポートするのが、愉快な妻・千夏さんなのだ。

 

その千夏さんも、その前に脳腫瘍で倒れている。

 

二人の病気を経て、夫婦は新たな調整をする。

 

病気もリハビリも、死んでしまいたいくらいつらいけれど

「黒字」であると大介氏は書いている。

 

この本は子育てやパートナーシップのヒントもたくさん散りばめられている。

(意図してではないだろうけど、活用できることがたくさんある、という意味で)

 

千夏さんを愛してるはずの実母も夫も

千夏さんを「できない子」にし続けてきた。

 

大介氏は、家事のスピードや方法にこだわり、

千夏さんからどんどん取り上げ、ひとりで抱え込んでいった。

 

このあたり、

心あたりがある親、夫婦、は多いのではないだろうか。

 

タイトル「脳が壊れた」だけでは手にとらない方たちにも

ぜひ読んでみてほしいと思った1冊です。

 

大きな個性・発達の凸凹を抱えてる人。

または抱えたパートナーがいる、子どもがいる、という人。

パートナーシップを見直したい人。

家事や仕事を抱え込んでいる人。

脳や血管系の健康が心配な人。(あ、こういう人はこのタイトルでいいのか)

 

いや~、でも、ほんとに助かってよかった、鈴木大介氏の作品をこれからも期待しています。

 

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