ラーメンが好きだ。
ラーメンならなんでも良いわけではない。私が好きなのは、魚介だしの利いた醤油ラーメン。コクは欲しいが脂っこさはNG。細麺でちぢれ麺、固めで。緑の野菜が載っていて、メンマはほどよく醤油系の味付き、チャーシューは獣臭くなく柔らかいこと。
途中で足すと飽きないような薬味があったりするとより嬉しい。
仕事で初めて降りる駅があるときには、必ず「駅名 ラーメン」で検索をする。
ランキングの中から魚介だし、和風、無化調などのキーワードで、行けそうな距離の店があるかチェックしておき、その仕事の前後に食べられるよう、前後の予定(食事・用事の量と時間)を調節する。
美味しい店に出会うと、次にその駅での仕事があった時には、ラーメンタイムをしっかり予定に組み込んで、楽しみに出掛ける。それほど遠くに行くわけではない、ただ「梅が丘」とか「大倉山」とか、「八丁堀」とか。都内近郊の、たまたま降りることになった駅でのことだ。
こんな個人的な楽しみを、先日人に話してみた。インタビュー形式で、好きなものについて語る、というワークショップでのことだった。
「ラーメンのどんなところが好きなんですか?」
「う~ん、そうですねえ、美味しい要素が、凝縮して詰まってるところかなぁ」
「美味しい要素が詰まってるんですね?」
「そうそう、どこどこの鶏ガラ、とか、なになに昆布、とか厳選された食材から旨味を抽出している、その感じが好きですね」
なんだかあらためてインタビューされるとくすぐったいようなアホらしいような、でももっと詳しく語りたいような妙な感じがしてくる。普段の会話だと遠慮して語りやめるところを、ワークなのでもうちょっと語らせてもらおう。
「お友達と行ったりするんですか?」
「友達とはあんまり行かないですね。友達と行くときは、おしゃべりを楽しみたいから、席がゆったりしていて、食後にコーヒーがついてゆっくりできるようなところを選びますね。ラーメン屋には、……そうか、味の探究が目的だから、ほぼ一人で行くんですね」
訊かれて答えてみて、あらためて自分で気づくことがある。
「味の探究をしてるんですか」
「そうですね……私が探究してるというより、店主の、味の探究の成果を、味わいに行ってますね」
「店主の探究の成果」
「そうだ、店主に美味しさを極めて欲しいんですね、私。ラーメン屋って、メニューが少なくて、『これがうちの味』っていうのをバーンと打ち出してますよね。『店主のきまぐれラーメン』とかじゃなくて、『醤油が一押し』とか『塩専門』とか、メニューのトップにあるものが、もう探究を重ねて、食材にこだわり、旨味のバランスを図り、これだ! というのを出してきてる」
「なるほど」
「その、渾身の『どや!』っていう1杯に向き合うと、私にとって『出会った!!!』という回があるわけです」
「ほう、『出会った!!!』と」
アホらしさと興が乗ってくる感覚とが同時にきて、私は複雑ながらも聴き手に感謝してこのまま波に乗ることに腹を決める。
「そう! 出会いですね。私は、出会いを求めているんです。旅先での出会い。だからね、ラーメンを食べるためだけには出かけたことがないの。出かける先にあるラーメン屋を探して、暖簾をくぐる。そして、店主の探究の成果に向き合う。運命の出会いを求めて」
「旅先での、運命の出会い」
だんだん自分の中に感動のようなものがじわじわと広がってきている。ほぼ演説みたいになってきた。
「そうか、私は、食レポとか美味しい店の紹介をしたいわけじゃないのでレビューは書かないんだ。でも、この素敵な旅の出会いを分かち合いたい、という気持ちがある」
「あ、分かち合いたいんですね」
「そうそう、こんな出会いがありました!っていうのを分かち合いたい。だけど、その店を宣伝してみんなに行ってほしいというのとはちょっと違う。ご縁があった町で、こんな素敵な出会いがありました。その人の仕事は素晴らしかったんです。いい時間でした。いい体験でした。それを、分かち合いたいんだ」
……ただのラーメン談義ではなく、私は私がこれまで地味に行ってきたラーメン屋巡りで何をしてきて何がしたかったのかが明らかになってきた。自分の内側に納得が満ちていく。
「ラーメン屋を巡るのは、旅なんです。それは、人生が旅であるのと同じように。だから、その人その人のそれぞれの旅があって、それを大事にしたい、してほしい。
これは旅なんだよ! 日々そこに出会いがあるんだよ! 意図して出会っていく。出会いの感動を表現する。ほかの人の出会いも聴きたい。あなたはどんな旅をしているの? と。それが濃厚とんこつでもいいし、全然違う私の普段興味のない何か、盆栽とか、速い車とか、神社仏閣とかでもいい。ファン同士の交流とは違う、異種旅の話を聴きたい」
そうか、そうだったのか。私よ。
ラーメン屋巡りは、私の人生における価値観の縮図のようなものだったのだ。ご縁のある土地で、想いのこもったものに出会っていく。その感動を分かち合い、人生と出会いを楽しむ仲間を増やしたい。
そう思うと、美味しい1杯に出会った時の発信も変わってくるぞ。これまでは美味しかった! 伝えたい! けど、なんか食レポ書いてもこれってなんなんだろう? これやりたいのか? 私。みたいな迷いがあって、ブログに書いたり書かなかったりだったのだけど、これからは「出会い」「探究」「旅」そんなことを自分が大事に思っているというベースから発信できそう。
対話に付き合ってくださったワークの相方さんに感謝。これも出会い。
そして画像は、最近出会った美味しい1杯。思わず帰りに、店主の顔をまっすぐ見て
「美味しかったです。ごちそうさま」
とハッキリ伝えたのだった。何者だ、私、というくらいに堂々と。その行動が自分でも、奇妙でもあり、しっくりくるようでもあったのだった。そうだ、それでいいんだ。これからは店主との一期一会も大事にしよう。旅だものね。
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