敬愛する、信田さよ子先生の新刊を読了!



家族の悩みにおこたえしましょう (単行本・ムック) / 信田さよ子/著
¥1,365
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Q&A方式で大変読みやすいのですが
じつはQも、信田氏によるものであるところが
この本の奥行を増しています。

長年のカウンセリング経験から、ある種の典型を、
個人のものとして描くということは
これまでの著作(これとかこれとか)でもありました。
ドキュメンタリー的フィクションが
リアリティの重みをもってて、かつ凝縮されてて面白いんですよね。
今度は相談者と回答者を両方信田氏が書くという趣向で
これがまた面白いです。

相談者の視点。
回答するカウンセラーの視点。
また、カウンセラーは、相談者が語らない部分も推測して
「家族からみた物語」までスクリーンに映してみせる。

この複数の視点と、さらに全体の俯瞰が見事で
読んでいてなんというか
「全部をみてしまった」というずっしりとした読後感。

とくに圧巻だったのはp98の
「上手にお酒をつきあっていきたいのです」
家族の中で孤立する女性の、アルコールに関する相談。
回答者は、相談者に共感しながらも
家族からみたこの問題をざっくりと斬り、その断面を相談者に見せるのだ。

「夫への恨みだけは、子どもたちに言うまい」と頑張ってきたという
相談者の自己像。
でももしかすると、子どもたちの視点から母を語れば
「酔って酩酊しては、夫の愚痴をまき散らす母」であったかもしれない
その鮮やかな『どんでん返し』は

相談者の立場にある読者には晴天の霹靂かもしれない。
相談者の家族の立場にある読者には、ある種爽快な場面であろう。

しかも回答は、相談者に向けられているので、
なんと読みやすいことか!自分ごとでないからだ。
傍観者の気楽さ。
そして私は、その両方の視点がよくわかる。

酒と記憶障害は子どもの頃から親しい不条理だから。
この母は私であり、子どもも私だ。
(注・私の子ども時代の酩酊者の記憶は母でなく父ですが)
大人になってからは、身近な人たちのあいだで
酒だけでなく
精神不安やうつ症状が、普段のその人とは大きく違う言動をすることを体験して
父のアルコール問題に感じていた不条理体験をよく思い出した。
無力感も感じていた。
引き留めようがなく変わって行く友人たちに、
何をすることもできず、
かつ「私のことなんてもうどうでもいいんだ」というさびしく哀しい気持ちにもなった。
そのあたりの経験は、いまの私のカウンセラーという仕事に大きく影響している。


また、
共感ということについて
深い洞察が書かれていて
話を聴かせていただく者としても、
聴くを伝える立場としても
深く染みいりました。

人の痛みを「わかる」ということは本当の意味ではできないけれど
精いっぱいの想像力で、自分の中で再構築と類推をするという
その表現に強く同意します!

それは経験したことのある話題だけを聴けるわけではない、
ということにもつながります。

もちろん、「母がしんどい」読者トーク会をやったように
同様の体験をした当事者しかいない場の安心感はある。
でも、そこにも「程度の差」での断裂が起こる可能性はある。

そこでこそ、

私とあなたの経験は別物だけれど
推して知ることができるかもしれない

という謙虚な類推の姿勢で聴けるとよいのでしょう。

「大変だね~」
「うちは全然違うからよくわからない」
「でもそんなのいい方じゃない」

そんな言葉で、岸にたどりつきそうだったいかだを
また沖へ押し返すようなリアクションを
どれだけされてきただろう。

してきただろう。。。

セッションでなくとも、
目の前の人のお話を
精いっぱいの再構築と類推で、それでも不足であるということを忘れずに
お話を聴きたいです。


タンジェリン交流会こぶたラボがそういう場でありますように。


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連載コラム【ココロを育てる聴き方・伝え方】
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