まだ私が大学生だった頃
餡蜜屋のバイトもないのにアメ横で買い物して
家に帰って異変に気付いた。
何かムズムズ痛痒いなぁ、
そう鏡を見てみると
そこには赤くなり蕁麻疹みたく
真っ赤になった顔と首と肩が見える。
日焼け……ってよりは
何かアレルギー症状みたいだが……
祖母も父も私の惨状に驚き
日負けじゃないかとにかく病院へっつー事で
とりあえず皮膚科に相談してみたら
「あぁ、こりゃ日光。紫外線アレルギーですね」
「そんなのがあるんですか」
「うんうん、ほら、隠れてるところは何ともないじゃない。顔も鼻の下や顎は余り炎症が出てない」
「確かにそうですね……そこまで重篤でないにせよ発症してしまった以上、私はこれからどう生きていけば良いんですか?」
「なるべく日光に長時間当たらないようにしてください。これから暑いから難しいでしょうけど長袖や日傘、今はラッシュガードみたいに紫外線カット出来る薄手の上着もありますので」
「えぇえ」
「対策するしかないんですね、お薬は塗薬を出しておきます」
夏と言えばタンクトップかホルターキャミ、
そんな年齢だった私は途方に暮れた。
元々の発汗量が物凄いので
なるべく露出して蒸散させるスタイル。
日傘なんて貴婦人かね、とも思った。
そう言えば子供の頃から
外に出ると目にゴミが入った訳でもないのに
涙が止まらなくなったり
夜に目がビー玉になったかのように
変なゴロゴロした感触に感じられたり
そんなのが日常的にあったが
皮膚にこんな広範囲に出たのは初めてだった。
それらは全てアレルギー反応だったのだ。
顔や体に何かを塗るのが苦手で
「男性の方がもっとやってる人いるよね」
くらいの事しかしなかった私だが
逆さ睫毛に悩まされて
仕方なくビューラーとマスカラはしていた。
お陰でただでさえ目線が強いと言われ
男子バスケ部の後輩達からは
メヂカラと言うあだ名で呼ばれていた面構えが
更に強い目付きに変わってしまい
街で目が合った人が「…?」と立ち止まり
まるで私が何かを求めていると勘違いし
話しかけてくる人すら日常的にいたのだが
手鏡と毛抜きで睫毛をブチブチやるのも憂鬱、
皮膚に何かを塗布するとか気持ち悪い、
そんな大学生に突きつけられたのが
全身の日焼け対策だったのだ。
うぇえ日焼け止め、気持ち悪……
ここで化粧下地なるものに手を出してみた。
すっかり忘れていたのだが
私は傷の治りは医者が引くほど早いのに
わりかしかなりの敏感肌だった事だ。
「これが良いらしいね……」
そうクチコミを調べ購入して顔に塗布するも
いざ塗ったらヒリヒリして焼けるような痛みに
慌てて何度も何度も洗い流して
恨み節を日焼け止めにぶつけ
その手のを貰ってくれる友人知人にあげる、
それを何十回繰り返した。
日本の薬事法はそこそこ厳しいと聞くが
たかが皮膚に合う日焼け止めを探すのに
相性の良い異性を探すくらい困難を極めた。
「ドラッグストアで探すより高い物で一発で決めた方が経済的なのではないか」
そう考えた時もあったが
3000円オーバーの物が合わなかった時は
価格に比例した落胆がある。
そこで辿り着いた答えが
「何が入ってるかより何が入ってないか」
私は昔から文字を読むのが好きなのが高じて
パッケージの文言も全て読んでいたのだが
そこに高らかに謳われている成分が
何が何だかサッパリ分からない。
「ねぇ、お母さん。モノキアルフォスフェイトって何」
と母に聞いてみたところ
「何なの、それは」
「お母さんが使ってる洗顔フォームに書いてある」
「何か良い成分なんじゃないの」
「何で出来てるどんな効果がある物なんだろ、そこまで書いてないんだよね」
「知らないわよ、悪い成分なら書かないでしょう?」
「まぁそうだけど……何なんだろ。メーカーに聞いたら教えてくれるかな」
「そこまでしなくていいでしょ!?」
そんな遣り取りが何度かあったが
他に何が入ってるかまでは
私が小学生の頃は表示がなかった。
表示指定成分:安息香酸 パラベン
くらいしか書かれてなかったと記憶している。
……モノキアルフォスフェイトどこ行った!?
売りにしてるのに実態が解らねぇぞ!?
しかし、だ。
私が大学生になったくらいから変わったんだ。
「うぉお!?」ってなるくらい
カタカナの多い成分が一気に書かれていて
表示指定成分表示から
全成分表示に変わったんだよね、確かこの頃。
どうも配合量の多い物から書かれてるっぽい。
合わなかった製品の全指定成分を比較し
何が入ってる奴が自分にはやべぇのか
消去法で導き出す事が可能になったのだ。
しかし比較的大丈夫なはずの物を使っても
「あぁあ痛い!!つーか熱い!!」
まるで希塩酸でもかけられたかの様な結果に。
んじゃ自然派を謳ってる奴ならどうよ!?
ぎゃあぁあ全然ダメじゃん!!
ここも落とし穴だった。
よくよく考えてみたら
トリカブトもウワウルシも自然の物だ。
酵素を作る要領で
何万年も置いたのが石油なんじゃねぇの、
自然の物をそのまま使ってるから
安心と言う訳でもなかったのは
「ぐっはぁー私も何となく騙されてたわ」
ちょっと悔しかった。
「長袖着て暑くないの?」
「日焼けとか気にするんだ」
そんな事を言われ始めたのもこの頃。
紫外線アレルギーの話をすると
「えっそんなのあるんだ」
「水アレルギーと同じくらい苦労しそう」
と言う流れに大抵なるのだが
「あ、あの、いきなりごめんなさい。さっき紫外線アレルギーの話してたから……私も子供の頃から酷くて」
そんな同志が話しかけてくれたりもした。
子供の頃から戦ってきたとあらば
新兵の私からすれば百戦錬磨の猛者だ。
「良ければオススメの対策を教えて欲しい」
「日傘が良いよ。私も肌が弱くて日焼け止めで余計荒れて困ってたけど、日傘使ってから炎症がかなり抑えられた。後はこう、ツバの広い帽子」
「確かに遮蔽率を考えると1番合理的かも」
でもツバの広い帽子を被り
日傘を差している自分を想像すると
「貴婦人かよ」
と言う気恥ずかしさが当時は消えなかった。
本当の意味で日陰者になってしまった訳だが
大気と日光は皆に平等に行き渡る。
少々の炎症なら気にしない、これだな。
そして紫外線アレルギーと同じく
私にはもう1つ、顕著なアレルギーがある。
銀とステンレスを除く金属アレルギーだ。
子供の頃から服の金具が触れる部分が
何か痒くなってたりはしてたのだが
特に金とプラチナと合金とピューターは
軽い火傷より酷い炎症が出る。
しかしながらプレゼントに
銀やステンレスを贈る人間はまずいない。
ペンダントやブレスレットはまだ良い、
1番貰って困るのは指輪。
内側にシリコン張ったり色々細工が要る。
でもサプラーイズって頂いた手前
なかなか言い出せんよね、
私、金属アレルギーなんだけど!?とか。
「お誕生日おめでとう」
「えぇっ」
薄いエメラルド色の箱のあのブランド……
この時点で嫌な予感しかしない。
「良いのかね、こんなにエラい高い物を」
「この為に密かにバイトもしてたから会えなくてごめん」
「いやいやいや何か申し訳ない、有難う」
「ゴツいシルバーが好きなのは知ってるけど、気に入ってくれると嬉しい」
金属アレルギーの事は前に伝えたはずだが……
開けるとんまぁ可愛らしい、
金色のオープンハート。
それを手に取ると甲斐甲斐しく立ち上がり
背後に回ってこられた後に
首の後ろで装着されたのが判った。
戦いの火蓋は切って落とされたのだ。
「ありがとう」
気持ちは嬉しいが……南無三。
さりげなく襟を上げたりして対策をするが
接しているところから
チリチリ始まっているのを感じる。
トイレで思い切り掻きむしりたい。
「ゴツいアクセも似合ってるけど、そういうのも可愛いよ」
「それは私も判る、一般的にカムホートとティファニーだったらティファニーの方が絶対可愛い」
「良かった」
でも私はゴツいアクセが好きなんだわー
元々可愛いで選んでないしー
そんな事を言う場ではないのも解ってる。
とりあえず困ったらアメ横。
いつも行くアクセ屋さんに向かい
「おや、猫ちゃん」
「こんにちは、これと同じくらいの925のチェーンありますか」
「うわ珍しい、何か可愛いの持ってるじゃーん。猫ちゃんアレルギーあるのに大丈夫なん?かぶれない?」
「かぶれてるから困ってる、チェーンさえ似てるのに替えれば何とかなるはず」
「路線変えるの?」
「いや……何か頑張って買ってくれた物らしいんで、アレルギーだからとか甘えずそれに応えないといけない気がして」
「意外に健気だねぇ、これとか細目だけどどうだろう」
「パッと見バレない奴で頼みます」
チェーンだけ付け替えるも
トップは金だ。
プラチナと金はホントにイカン。
それらを肌に付けて暫くすると
塩かけられたナメクジみたいに
皮膚組織をジワジワ破壊してくる。
でも衣服を脱いだ時にアクセサリーも外すのは
やはり何だか変な気がする。
ましてや貰った当人の前で。
なるべく皮膚に付かないように浮かすか……
「いつも触っててくれるんだね」
「……頑張って買ってくれたって聞いたから(会う時は)着けてるよ」
まぁそんな無理をしないといかん相手とは
当然、長続きしない。
その手の関係になる人間と言うのは
本来なら友達にすらなれないはずの相手だ。
事ある毎に高いところに登って
夜景を見ながら飯を食うなんて
私には無い発想だし
ましてや結婚してどうのなんて話は
異文化の異教徒のする事だろう?
くらいに思っていた私には
異文化の異教徒が考える将来と
日頃の真っ当な厚意が重荷になったのだ。
そこはよく周囲から責められていたが
私はただ美人とチョメチョメしたいだけ、
そこに美人がやって来たから喜んで応じた、
それ以上でもそれ以下でもない。
恋心の全ては「あわよくば」、
ここに異を唱える人は断れるのか?
「え?マジで?そーなんだぁありがとー」
ってなっちゃう私がおかしいのか?
亦たシタゴコロで恋だぞ?
その後、その人物とは忘れた頃に
結婚の報告をされた。
私みたいなゴリ達磨とは真逆の
釣り合いの取れた見目麗しく優しそうな奥様と
幸せそうに写っている画像に心から祝福したね。
悪い夢だと思って忘れてくれ、
何か違う気がするけど餅は餅屋。
反してキューティはどうかと言えば
私と好きな物が余りに違いすぎて
25歳の私の誕生日に
お揃いで揃えた指輪にしても
選ぶのが超大変だった。
「えぇー俺、シルバーのゴツいのとかヤダ」
「いやいやいやゴツくなくてもいいんだよ、銀かステンレスの平打ちとかでさ」
「シルバーとかステンレスとか何か嫌だ。平打ちって何?俺はこーゆーのが良いなー」
「何だそりゃ、ほっそ!!モロに女物じゃんか」
「違うよーペアリングだよー」
「こんな小さいジルコニア、いる?指輪の幅が広い方が」
「キラキラしたの、あった方がいいでしょ?」
「分からん。私は無い方が良いけどキューティに任せる」
結局、ステンレス製の指輪で
2007年の12月2日の私の誕生日に
ノリで買ったその指輪は
その年の12月31日に入籍してから
今も付けてる、付けっぱなし。
私の誕生日には結婚の話なんか出てなかったし
後先考えるタイプではなさそうに見えたので
私も油断していたのだが
クリスマス前くらいに一転した。
キューティも実は異文化異教徒だったのだが
余りに顔が可愛いから逃げきれなかった。
「ねぇ、猫さん。入籍したは良いけど結婚指輪ってどうする?」
「結婚指輪も何もこないだこれ買ったばっかじゃんよ。また選び直しであの堂々巡りするとか正気じゃない」
「そういうものなの?安上がりに済んで良かったのかな、俺お金ないし」
「奥さんの金属アレルギーに感謝しとけ」
「ねぇ、結婚式ってしないの?」
「お友達や上司の貴重な休日奪ってカツアゲしたいの?どーしてもやりたきゃ独りでやっていいよ、私は降りる」
「えぇー?新婚旅行は?」
「夏に京都行ったからそれで良くない?」
「ホンッと猫さんって面倒臭がりだなぁ!!」
「キューティこそウエディングハイじゃん、我々が入籍したところで私の苗字以外何も変わらんだろうよ」
まぁとにかくそんな感じ。
結婚式をさせてあげなかったのは
ちょっと可哀想な気もするけど
学生時代の表彰にせよ何にせよ
私は人前で大きく晒されるのが大嫌いだ。
何か褒められてても公開処刑みたいに感じる。
その頃は私は塾講師で完全夜型の生活で
午後から終電までが主な勤務時間、
そこから明け方までオールしたり
家で本読んだりゲームしたりで遊んで
始発で帰ってまた昼過ぎまで寝てる生活で
紫外線アレルギーも割とナリを潜めていたが
子供が出来てから変わった。
太陽と共に生活をし
太陽の下で活動をしなくてはならない。
痛いし痒いけど言ってらんない。
特に熊本に来てからが顕著。
車の免許もない私が
高い建物も殆どない広い空の下
ラジオフライヤーをガラガラしながら
炎天下でも闊歩しなくてはならない。
しかしここは私の皮膚も地味に対策をした様で
所謂、ファンデーションなんかで言うと
01から03くらいまで
皮膚の色がマイナーチェンジしたのだ。
日焼けと言う日焼けもした事がなかったけど
夏場はG-SHOCK型の真っ白い跡が残るくらい
紫外線への耐性をつけてきたようだ。
焼ける事で日負けを回避してると言うか。
これはイケんじゃないか、
大好きな夏を楽しもうぜ!!
そもそもブラジル生まれなんだし
紫外線アレルギーなんて嘘だったんじゃない?
そう生きてきたはずなのだが
子供がある程度育って気が抜けたか
まぁ加齢って奴なんだろうな、
ここ数年、本当に酷い。
もう貴婦人かよとか言ってられない、
大きさも見た目も雨傘に近い
男性も使えるようなデカい日傘が
夏場は本当に手放せなくなっている。
くたびれたポロシャツにスウェットに
KEENのヨギとか履いてるのに日傘なんて
非常にチグハグな結果ではあるが
目からは涙がドバドバ流れるし
クッソ暑いのに長袖生活だし
冬以外はかなり苦戦を強いられている。
飲む日焼け止めで内側の防御を固め
赤ちゃんにも使える日焼け止めで
皮膚表面にバリケードを作る。
覆う事の出来ない顔面と首は
今のところこれで守るしかない。
下手に強いの使ったりしたら
私の皮膚の弱さも去ることながら
幼い我が子にスリスリ出来ないもんな。
日焼け止め効果のある物として
ラズベリーシードオイルとか
ストロベリーシードオイルも試した。
確かに肌にも凄く良いし
アレルギー症状も起きないので
効果はかなりあるのだと思うが
(※個人の感想です)
私が知ってから十数年、
未だに商品化されないのが凄く気になる。
自然派で無添加でケミカルフリーなのに何故。
アルガンオイルとかはスキンケア成分として
割と市民権を得て久しいのに
何故、日焼け止め効果の高いはずの
上記2つは名前を聞く事がないのだろう。
いや、本当に何でなんだろ。
でも私は今日も使う。
ラズベリーと言う割には
ラズベリーとは程遠い匂いの
ラズベリーシードオイルか
イチゴに鼻を近付けた時まんまの匂いの
ストロベリーシードオイルに
紫外線吸収剤の入っていない
キシキシしない子供用日焼け止めを
混ぜ込んで塗り込んで
ペタペタするのが気持ち悪いから
更に固形ベビーパウダーを叩き込めば
これだけで薄化粧と思われるくらいにはなる。
ベースメイクはしてるよねに対して
安価なベビー日焼け止めとオイルと
ベビーパウダーに
後は逆さ睫毛対策と答えると
驚かれたり絶対嘘とか疑われたりするが
やっぱ自眉を整えてるかどうか
……なんじゃないかね、
俗に言うスッピンで驚かれる人の多くは
瞼のヒダ1本とか眉毛の差だと思うんだよ。
切れ長の一重瞼がフェチレベルで好きな私には
アイプチや埋没法は個人的朝敵なんだけど
それは自分が丸目で二重だからだ。
デブがスレンダーに憧れるのと一緒。
そこで太りたくても太れない人に
ムチムチ野郎が何言っても嫌味になったり
人の外見を褒めるのは非常に難しいが
結局は無いものねだり、
今や絶滅危惧種の切れ長一重はどこへ……
「切れ長一重 メイク」もしくは
「細目 メイク」とかで画像検索すると
延々と私好みの目に近い目を
眺められる事が最近解った。
フェチ大歓喜、やや吊り目なら尚素晴らしい。
柳の葉みたいに涼しげで美しい目の形の人は
誠に勝手ながらその有形文化財を
大切にして欲しいと願ってしまう。
その遺伝子をバラまいて欲しいとさえ思う。
気を抜くとフェチズムに走る、
そこの変態性は自覚してる、ごめんね。
とにかくまぁ紫外線アレルギーの季節なんだ。
花粉症ほど大変でも無い代わりに
ほぼ1年中対策に追われる面倒臭い症状。
冬場は軽いだけで無くなる訳じゃない。
スギとは違うのだよ、スギとは。
同じようなお悩みをお持ちで
「こんなバッチグリコな対策あるよ」
「これ食べたら改善したよ」
「これさえあれば太陽も怖くない」
ってのを御存知の方がいらっしゃいましたら
教えていただけると幸いです……